今日も今日とて筆を進めるワタシ。しかし、漫画家の仕事というのはどこまでいっても自分との戦いというか、変化のない仕事だから、アメリがいなかったら、そして生き返ってくれなかったら、一人寂しく執筆作業を続けていたんだろうなと思う。ありがとう、アメリ。
横でベッドに腰掛け読書している猫耳のお姫様を見ると、生活の潤いというものの大切さを思い知る。
アメリの背が温かな陽光に照らされ、そのぬくもりを感じさせてあげられるのが嬉しい。カーテンを締め切っていた頃は、家の中もちょっと雰囲気暗かったからね。
「アメリちゃんは何を読んでいるのかなー?」
ふと、手にしている本が気になって、尋ねてみる。
「こみっくさいえんす! あのね、雲が雨をいっぱい溜められるのって、温度が大事なんだって!」
「へー。そりゃ私も知らなかったなあ。後で休憩するときに少し借りていい?」
「いいよー」
あー、ほのぼの。ほのぼのの極みですねえ。平和って素晴らしい!
ここで、コーヒー牛乳をぐびっと。はー、美味しい。愛と平和ほど尊いものはないとしみじみ思う、お昼下がりなのでした。
すると、ピンポンとインタホンの呼び鈴が鳴るじゃないですか。どなたでしょ?
「はーい、どちら様ですか?」
「こんにちは、白部です。ノーラちゃんが明日まで待てないと聞かないものでして、ご迷惑でなければアメリちゃんと遊ばせてあげてほしいのですが、いかがでしょうか?」
「こんにちは。ちょっと、本人に訊いてみますね」
寝室へUターン。
「アメリー。ノーラちゃんが遊びに来たけどどうする?」
「遊ぶー!」
ぱあっと顔を輝かせるお嬢様。
「じゃ、一緒に門までお迎えに行こうか」
「はーい!」
本をしまい、門へGO!
「白部せんせー! ノーラー! こんにちはー!」
「こんにちは」
「おーっす!」
しゅびっと挙手して挨拶する二人娘。ノーラちゃん、なんだか久美さんに似てきた気がするな。
と、反対側の手を見ると、ノーラちゃんサッカーボールを小脇に抱えていいる。
「ノーラちゃん、こんにちは。そのサッカーボールどうしたの?」
「カン姉、こんにちは! これ、ルリ姉に買ってもらった!」
キラキラした瞳を向けてくる。
「この格好が解禁になりましたから、買ってあげたんです」
ふふと微笑む白部さん。
「それで、差支えなければ、お庭を借りてサッカーの練習でも……と思ったのですけど、何か倒すとまずいものとかありますか?」
「うちは、今のところそういったものはないですね。構いませんよ。アメリはどう?」
我が子を見ると、「やってみたい!」とこちらも瞳キラキラ。
「ありがとうございます。二人のことは私が見ていますので、猫崎さんはお仕事を続けていて大丈夫ですよ」
「わかりました。庭に案内しますね」
あまり広くはないけれど、自転車の練習ぐらいはできる我が庭。シュートとかしなければ大丈夫でしょう。
というわけで、シュート練習はなしの方向でお願いして、私は一礼して自室へ。
窓を開け網戸にし、庭を眺めると、アメリとノーラちゃんが交互にドリブルの練習をしています。
「おお~、難しい……」
アメリの声が風に乗って届く。この子も運動神経は悪くないけれど、やはりこういうのはノーラちゃんのほうが上手いようだ。
ドリブルを練習し終わると、今度はパス練習。ノーラちゃんは運動大好きっ子だし、アメリも反復練習を苦にしないタイプだから、いつまでも続けてそうな勢い。
途中、白部さんが「はーい、ちょっと休憩しましょう」と、持参したスポドリのボトルを手渡す。
窓際の石段に腰掛け、美味しそうに飲む二人。
「サッカー楽しい?」
会話できる距離になったので、声をかけてみる。
「「うん!」」
見事にハモる。良き哉良き哉。
「白部さん、二人の練習をところどころ見てましたけど、素人目にもノーラちゃん運動センスいいですねえ」
「ありがとうございます。そうですね。実際私が報告を受けているデータでも、上位に入ってますから」
そういや、もうすぐT総で検査ですなあ。明日は、みんなが来る前に松戸医院で予防接種だし。
しかし、こうして思いっきり運動しているアメリを見るのは、ちょっと感無量なものがある。人目を忍んで、運動らしい運動ってストレッチとかダンスゲームとかしかさせてあげられなかったもんね。
そうだ。
「ちょっと失礼しますね」
離席し、キッチンへ。例のカップケーキを手早く作り、トレイ片手に寝室へ戻って網戸を開ける。
「おやつだよー。白部さんもどうぞ」
「あら、ありがとうございます。ノーラちゃんもお礼言いましょう」
「カン姉、ありがとー!」
美味しそうにケーキを食べる三人。私も仕事机でいただく。
ああ、平和だ。ほんとに、平和って素晴らしい。
食べ終わったカップを受け取って片すと、再び二人の練習をBGMに作業に打ち込む。今度はボールの取り合いの練習を始めた模様。
しばらくすると、二人ともさすがに疲れ切ったようで、白部さんが「今日は本当にありがとうございました。ノーラちゃんも大変満足したようです。また明日、お願いしますね」と、お声がけくださいました。
三人で門に回り、互いに別れを告げる。アメリがだいぶ汗をかいたので、二人を見送った後、お風呂にGO。ふぐた夫妻で遊びながら、汗と汚れを流しさっぱり。
その後も、疲れてお昼寝するアメリちゃんを横に見守りながら、原稿を進めるのでした。
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