ぶどう狩り翌日のお昼過ぎ。下書きも終わり、こんな私でも一人だけどアシスタントさんを雇っているので、背景の指示を送って小休止。
「ねこきっく」の方針として、作者は女性で統一するというのがあり、それは女性的な作風や絵柄が求められているということ。モブを描いてもらうときもそれは通さなければならず、私のアシさんもしたがって女性。
それはさておき、現在アメリとうちに遊びに来たクロちゃん、ミケちゃんと一緒に遊んでいます。
大人の私が幼女に混じってどんな遊びをしてるかといえば、ズバリ「お絵かき」。
スケッチブックに、クレヨンで気ままにお絵描きしてる三人を見守っているわけです。お絵かき大会の発案者はクロちゃんで、クレヨンは彼女が持って来てくれました。さすがにうちにはクレヨンなかったからね。
「できた!」
最初に描き上げたのはアメリ。しかしこれが……なんといっていいのか、謎の物体。
ここは、子供の心を傷つけてはいけない。何だろうな、この魚と木が合体したような感じ、どこかで見たことが……あっ!
「さかなのおうち!」
そーだそーだ、アメリが以前ブロックで作っていた謎のオブジェだ。
「おお~! 上手でしょ?」
「うん、上手上手!」
謎度の高い絵ではあるけれど、ゲージュツ品「さかなのおうち」の特徴はよく捉えてると思う。「えへへ」と嬉しそうに笑う彼女。あーもう、可愛すぎるよマイエンジェル。
「……ボクもできた」
次の選手はクロちゃん。これは……一発で分かるけど、題材のチョイスが渋い。渋すぎる!
描かれていたものは、ズバリおせんべいと湯呑。幼女が描く題材としてどうなのか。
とはいえ、シンプルな題材だけにきちんと絵としてまとまってる。
「うん、クロちゃんも上手!」
褒められて、スケッチブックを抱きしめ静かにはにかむ。彼女も可愛すぎでしょう。
「できた!」
自信満々の表情で、スケッチブックを見せてくるミケちゃん。
そこに描かれていたのは、マイクや衣装の感じからアイドルとわかる。彼女、将来の夢がアイドルだしね。
画力は最年長だけあって、わずかに三人の中では一番上手だと思う。まあ、クロちゃんは題材が題材だから、上手か下手か判断しにくいけど。
「すごーい! アイドルだね! 上手、上手!」
「でしょー?」
褒められると、胸を反らしてドヤ顔。ミケちゃんも実に可愛いこと。褒め言葉に対する反応が三者三様で、実に興味深い。そして可愛い。可愛いは正義だね!
「おねーちゃんもなにか描いてよ!」
アメリからリクエスト。ふーむ。
「何描いてほしい?」
「なんでもいーよ!」
ほかの二人も、こくこくと頷く。その何でもいいって、密かに一番困るお題なのよね。
あんまり「プロでーす!」みたいな絵を披露するのも空気読めてない感じがするし……。
よし! 私が一番描くのが得意なものを描きましょう!
クレヨンを借り受け、すらすらのすら~っと。中学の頃にはすでにデジタル画の道に入っていたので、アナログの一発勝負は緊張しないでもないけど、子供たちに見せる落書きということで肩の力を抜いて描きました。遊ぶってそういうことだもんね。
「はーい、どうかな?」
スケッチブックには、デフォルメされたアメショ、黒猫、三毛猫が三匹。アメショの模様は複雑だから、ちょっと手抜きしてるけどね。
「前のアメリたちだ!」
アメリが意図に気付き声を上げると、ほかの二人も「おお~!」と声を上げる。いやあ、照れくさいな。後頭部を掻いてしまう。
彼女らが第二ラウンドに入ったので、私も仕事のチェック。アシさんから細かい質問が来てるな。
「ちょっと待っててね」
三人に告げて、アシさんに回答を送り返す。すると、背後から「できた!」というアメリの声。あや、結構返事に時間食っちゃったかな。
「どれどれー?」
椅子から降り、正座して再度拝見。
うーん? 女性の絵? 白いTシャツと青いズボン……。うん?
「これ、私かな?」
「そうだよー! アメリが一番好きなもの描いた!」
あらあらあらあら! 嬉しいこと言ってくれちゃって! ぎゅーっと抱きしめて頭を撫でると、「うにゅう」という気の抜けた声を上げる。
すると、ほか二人も描き途中のだったものを放棄し、ページをめくって新たな絵を描き始める。
「あー。クロちゃんはまりあさん、ミケちゃんは角照さんを描くのかな?」
「なんでわかったの?」
と二人が不思議そうに問うので、「まあね」とミケちゃんじゃないけど、得意げに胸を反らす。
ややあって、三人がそれぞれの絵を仕上げる。
クロちゃんとミケちゃんは、まりあさんと角照さんの絵。
「うんうん、よく描けてるよ!」
そしてアメリは……我が家の海産物ぬいぐるみファミリー大集合の絵。ぬいぐるみ以外にも、青い魚のおもちゃのふぐたくんもちゃんといる。イカの足が五本しかないけど、ツッコまないであげるのが優しさよね。あと、子供の絵によくある、後のほうになると描くスペースがなくなって、どんどん絵が小さくなるところも。
「うん、上手上手!」
褒めると、またも「えへへ」と笑顔になる。ほんと可愛いなー。あ、そうだ!
「ねえ、みんな。私とまりあさんと角照さんの絵を、こう胸の前に持ってにっこり微笑んでくれるかな?」
三人が言われた通りにしてくれたので、スマホでパシャリ。うん、きっとこれが今日一番いい絵かな!
あとで、みんなにも送ってあげようっと。
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