「ん……。お昼近いねえ」
作画作業中、ふとPCの時計を見るともうすぐ十一時。
「よーし、アメリちゃん。お料理しましょー」
背後でお勉強していたアメリに話しかける。
「おお~! お芋食べるの!?」
「そだよー。お芋さん祭り開催でーす」
「さつま芋初めて! 楽しみ!」
二人でるんたったとキッチンへ向かいました。
◆ ◆ ◆
キッチンに置いてあった袋からお芋を二本取り出し、お風呂場で泥を洗い流す。……よし!
さーて、何作りましょうかね。シンプルに焼き芋、ふかし芋なんかでもいいけれど……。うん、私の好きなアレを作るか!
「アメリちゃん。お芋のレモン煮を作りますよー。じゃあ、お芋さんを切ってもらおうかな!」
「おおー! 任せて!」
というわけで、三分でクッキングする例の脳内BGMを鳴らしながら、アメリのお芋切りを監督。
「このぐらいの太さの輪切りにしてね」
余分な両端を切り落とし、まずはお手本となる幅二センチほどの輪切りを切り出す。
「頑張る!」
すとん、すとんと、やや良いテンポで切っていく。おお~、上達してるねえ。
「できた!」
「上手、上手! じゃあ、もう一本いってみよう」
ぱちぱちと拍手。二本目も無事切り終わり、輪切りがたくさん完成!
「お疲れー。じゃあ、ここからは私の出番だね」
お芋をボウルに入れ、そっとかき混ぜながら水に三分間晒す。アクが出たら水を捨てて水気を拭き取り、大きなフライパンに重ならないように並べまーす。
あとは、お芋が浸る程度に水を張り、砂糖大さじ四杯と、レモンエキス小さじ四杯を入れ、煮立たせるっと。
煮立ったらごく弱火にして、落し蓋をして二十分コトコト煮まーす。ふう、あとは待つだけ~。
「アメリー、しばらく待つ必要があるから、ちょっと動画でも見てようか。
「おお~」
というわけで、動画鑑賞。グッピーやネオンテトラを見て、大興奮のアメリ。良き哉良き哉。
ほかには、ケイティちゃんがなぜかロボットアニメとコラボしてる動画を発見して、二人で「おお?」と首を傾げたり。ケイティちゃんって、なにげにへんてこなコラボ多いのよね。カニになってたりとか……。
そんなこんなで、キッチンタイマーが二十分経過を知らせてくれたので、火を止めて落し蓋をしたまま放置して粗熱取り。
またも動画視聴タイムに戻り、アメショの可愛いほほえま動画を見て、二人で大盛り上がり。
そろそろいいかな? というわけで、お皿によそう。
「できたよー。じゃあ、お昼ごはんいただきましょう~!」
お茶と一緒に配膳し、エプロンを外して対面に着席。
「「いただきます!」」
二人で合唱し、ぱくっ。うん、美味しい~。
「おねーちゃん、さつま芋って美味しいね!」
「うんうん。二人で頑張って掘ったから、なおさら美味しいよね。まだまだお芋さんあるから、次は別の料理にしてみよう」
食後は、多分食べきれないぶんのさつま芋を持って、アメリと一緒にご近所さん巡りをしておすそわけ。もちろん、白部さんのぶんも取っておきます。彼女にもLIZEでお知らせしときましょ。
三時のおやつにスイートポテトを作成! これも美味しくいただきました。
夕方は、一日中さつま芋では栄養が偏ってしまうので、夕方スーパーに行き、イワシと小松菜を購入。イワシの塩焼きと、小松菜のおひたしとお味噌汁、そしてさつま芋の炊き込みご飯を堪能。
「お芋さん美味しい~」
キラキラ瞳を輝かせるアメリ。
「そうねー。もっと色々作れるけど、さすがに一日半が飽きない丁度いい頃合いかな」
炊き込みご飯の残りは、冷えてから冷蔵庫にイン。お味噌汁とおひたしの残りともども、明日の朝食にします。
あとは、明日のお昼に定番のホイル焼き芋を作ったらお芋さん祭りもフィニッシュかな。
◆ ◆ ◆
夜八時、お仕事をしていると白部さんからLIZEのメッセージが届き、ご帰宅されたとのことなので、おすそ分けに向かいましょう。
「アメリも一緒に行く?」
「うん!」
まあ、いくら夜でもこの至近距離なら出歩いて平気でしょう。チャイムを鳴らしましょー。
「はーい。あ、こんばんは~猫崎さん、アメリちゃん」
お仕事の疲れが伺えるけど、アメリを見たら元気が出たのか、笑顔で出迎えてくれる。
「こんばんは。こちら、昨日掘ったお芋です。よろしければ」
「ありがとうございます~」
丁寧にお辞儀する白部さん。
「白部せんせーこんばんは! ノーラちゃんに会える?」
「こら。白部さん仕事でお疲れなんだから、厚かましいこと言わないの」
「少しなら構いませんよ」
白部さんが快諾してくださったので、「おお~!」と意気上がるアメリ。
「すみません。では、少しだけお邪魔させていただきますね」
室内に上がると白部さんが引き戸を開けてくださり、「また来たの?」と言いたげなノーラちゃんが佇んでいました。
ちゃぶ台の上には、飲みかけのペットボトルのお茶と食べかけのコンビニ弁当。
「あ、これはお見苦しいものを。すみません」
「いえいえ、私たちの間が悪かっただけですから。どうぞ、そのまま召し上がってて下さい」
「では、失礼して。座布団、お出ししますね」
座布団を敷いて勧め、食事を再開する彼女。私たちは、ノーラちゃんを刺激しない程度に眺めるのでした。
すると、ノーラちゃんが私たちに「にゃーん」と呼びかけてくれたではないですか!
「おお、ノーラちゃんが喋った!」
「アメリ、言葉がわかるの?」
「わかんない!」
あらま。猫耳人間だからって、猫語がわかるわけじゃないのか。でもまあ、猫流のおしゃべりよね、これ。私たちも信頼を得つつあるようで何より。
「ごちそうさまでした。すみません、ろくにおもてなしもできずに」
「いえいえ。私たちも、まずお伺いを立てるべきでしたね。あ、アメリ。そろそろおねむの時間だよー」
「おお~? もうちょっと、ノーラちゃんと一緒にいたい……」
「わがまま言っちゃだーめ。白部さん、これからごゆっくりされるんだから」
「う~……」と不承不承従うアメリ。どうもこの子、ノーラちゃんに関してだけはちょっとわがままになっちゃうのね。まあ、子供らしくて可愛いけれど。
「すみません、また遊びにいらしてくださいね。あ、最後に」
「はい。アメリをぎゅーっとですね?」
「ばれましたか」
口に手を当て、微笑む白部さん。アメリはぎゅーっとハグされた後、私とともに引き上げました。
おやすみなさい、白部さん、ノーラちゃん。良い夢を。さて、私はお仕事もうひと頑張りしますか!
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