本日、九日。お盆休みに向けて、冷蔵庫の残り食材の調整を始めています。
お父さんの会社も、編集部も、七日から十六日までお盆休み。このため、デスマーチして、ネームまで一気に提出したわけです。
で、私もそれに合わせて帰省しても良かったんだけど、コミットにぜひ行っておきたかったのと、在宅ワークのフリーランスにとって、今日から十二日までの四日間を仕事に充てるのが、案外馬鹿にならなかったりします。
芦田さんは実家住まいなため、とくに帰省の予定はなく、私の帰省が始まる一日前の十二日に、下書きを渡したいところ。
そんなわけで、今日はお仕事。昨日のお土産を読む時間がないね、こりゃ。
ちなみに、私以外の皆さんは、今日から帰省だそうで。寂しくなりますねえ。
我が娘は、『スポンジ・トム』の録画を視聴中。押江先生もお盆休みを取っているので、十七日まで授業がないのです。
◆ ◆ ◆
よし、できたー! 芦田さん、受け取ってくださーい!
あっという間に十二日の夜。冷蔵庫も片付いたし、仕事も一段落。さーて、明日から帰省ですよー。準備しーましょ。
「アメリちゃんも、持っていく物あったら、リュックに入れといてね」
「おお~。図鑑持っていこうかな……」
こっちは、コップや歯ブラシ、着替えなんかはキャリーバッグに入れるとして……。せっかくだから、同人誌も何冊か持っていこう。
よし、こんなもんですかね。
あ、芦田さんから質問が来てますね。指示出し~。ヨシ! これで今日はもう、寝るだけです!
◆ ◆ ◆
「ぐっど・あふたぬーん! お母さん、福井に着いたよー。迎えに来てー」
帰省当日。福井駅に着いたので、さっそくお母さんにコール。あとは、お迎えを待つだけです。
「鯵な押し寿司」、相変わらず美味しかったなあ。
しばらく、アメリと雑談しながら待っていると、やって来ました、赤い乗用車!
「おひさー」
「お帰りなさい、神奈、アメリちゃん。乗って、乗って」
「はーい」
お母さんに促され、アメリと一緒に後部座席にIN!
「神奈、おかえりー」
運転席のお父さんが、続いて迎えの挨拶。
「ただいまー。四日間、お世話になります」
なんて、しおらしく頭を下げる。
「なんだい、他人行儀に。とりあえず、出すよ」
というわけで、一家の会話を楽しみながら、懐かしの実家へ!
◆ ◆ ◆
「たっだいまー!」
「おおー。ただいまー!」
玄関で手を広げ、実家の広さをさっそく満喫。
「あー、疲れた。客間でごろ寝してていい?」
「もーう、この子は帰ってくる早々……。まあ、いいけれど」
苦言を呈するお母さんだけど、私の扱いは慣れたもので、好きにさせてくれます。
「神奈。明日にでも、本整理してくれるかな? 大型連休のときは、お友達の観光案内で、やってる暇なかったようだからね」
「あー、そうでした」
お父さんに言われて、いつもの行事を思い出す。
「おお? 何やるの?」
「んー? 私、向こうに置けなくなった本を、こっちに送っているでしょう? でも、この広い家でも限界あるからね。いらない本を選別するの」
「へー」
とりあえず、手洗いうがいして、着替えてくつろぎましょっと。
◆ ◆ ◆
「おー。アメリちゃんのこと、よく把握してますねえ。さすが」
コミットで買った、あめりにっき本をこっちに持ってきてるので、現在読書中。
あはは。私のねぼすけぶりも、良くわかってらっしゃる。
アメリはアメリで、鳥類図鑑を鑑賞。
こうして、五冊持ってきた様々な同人誌を読みながら、だらだらとお布団の中で、時を過ごします。
ふう。なかなか面白かった! アマチュア作品だからって、甘く見ちゃいけないですねえ。なんでも、優輝さん情報によると、プロ作家も出品するらしいし。
少し、仮眠しようかな。長旅で疲れてる……し……。
◆ ◆ ◆
「神奈、神奈、起きなさい! 夜寝れなくなるわよ!」
んー……? ああそっか、仮眠を取ったんだった。
「おはよー」
寝ぼけ眼をこすりながら、身を起こし、隣を見る。
アメリちゃんも、すやすや寝てますねえ。
「アメリ、どうしよっか」
「神奈に任せるわ」
このまま寝かせておいてあげたいけど、お母さんの言うように、夜、眠れなくなっちゃうかな。
「アメリちゃーん。起きてくださーい」
ゆさゆさ。
「おお……? おはよー、おねーちゃん……」
私とは逆に、仮眠からの寝起きが悪いアメリ。大あくびして、船漕いでます。
「おはよーさん。お母さん、どうせ夜こっち使うし、布団敷きっぱでいい?」
「もう、この子はほんとに横着なんだから……。まあ、いいけど」
やだなあ、お母さん。私、向こうでは立派に生活してますよ? 実家に帰ると、甘えモードになるだけで。
とりあえず読み終わった本をしまい、髪を整え、アメリと一緒にリビングへ。
「やあ、神奈。よく寝てたみたいだね」
テレビを見ていたお父さんが、話しかけてくる。
「うん。旅の疲れが出ちゃったみたい。お父さん、今日はDIYしないの?」
「さすがに、暑すぎてね。今朝のうちに、少しやっておいたけど」
さて、今何時ですかね~?
壁掛け時計を見ると、だいたい四時か。なんか、中途半端な時間だな。
「お母さんは?」
「一度こっちに来た後、洗濯しに行ったよ」
ほむ。四人で語らおうと思ったのにな。まあ、すぐ戻ってくるでしょ。
「向こうでは、どうだい?」
「んー。大変なこともあるけど、楽しくやってるよ。仕事も順調! そうそう、私にもアメリにも、新しいお友達ができてね」
近井さんご一家と、英一くんと美子ちゃんについて話す。
「へー。最近の神奈は、すごくご縁が広がってるねえ」
「そだねー。アメリのおかげかなー」
隣に座ってるアメリを、よしよしする。
「あ! そうだ! アメリといえば、この子天才なのよ!」
今度は、T総で始動した、特別カリキュラムについて説明。
「へえー! 大したもんだねえ!」
「でしょ!? 私もアメリ自身も、もうびっくりで」
「あら、なんの話?」
お。お母さん、おかえりなさい。
「いや、それがね……」
今しがた私がした話を、お母さんに伝えるお父さん。
「天才!? すごいわねー」
お母さん、鳩が豆鉄砲食らったような顔してます。
「まあ、何があっても、私たちの大切な孫だけどね」
「だねえ」
うんうんと、頷き合う熟年夫婦。
「あ、そうだ! おやつ出してあげる! ちょっと待ってて」
そう言って、台所へ向かうお母さん。
少しして、紅茶とシュークリームを手に戻ってきました。
「ありがと~」
「おお~! シュークリーム! ありがとー」
アメリちゃん、お目々キラキラ。
「アメリちゃん、シュークリーム好きなの?」
「うん! お菓子、何でも好きだよ!」
「そっかー。これは、甘やかしたくなっちゃうわねえ」
私には小言が多いお母さんも、孫にはメロメロです。
さっそく、いただきましょうか。ぱくっ。
「あら! これ、結構いいやつじゃない!?」
「そうよー。せっかく、娘と孫が帰ってくるんですもの」
「ほんとに、ありがとーね!」
うまうま。
あー、美味しかった。
こんな具合に、一家団欒を愉しむ私たち。
実家は、落ち着きますねえ。ほっこり。
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