神奈さんとアメリちゃん

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第四百九十四話 お盆だヨ! 一家団欒!

公開日時: 2022年2月12日(土) 21:01
文字数:2,811

 本日、九日。お盆休みに向けて、冷蔵庫の残り食材の調整を始めています。


 お父さんの会社も、編集部も、七日から十六日までお盆休み。このため、デスマーチして、ネームまで一気に提出したわけです。


 で、私もそれに合わせて帰省しても良かったんだけど、コミットにぜひ行っておきたかったのと、在宅ワークのフリーランスにとって、今日から十二日までの四日間を仕事に充てるのが、案外馬鹿にならなかったりします。


 芦田さんは実家住まいなため、とくに帰省の予定はなく、私の帰省が始まる一日前の十二日に、下書きを渡したいところ。


 そんなわけで、今日はお仕事。昨日のお土産を読む時間がないね、こりゃ。


 ちなみに、私以外の皆さんは、今日から帰省だそうで。寂しくなりますねえ。


 我が娘は、『スポンジ・トム』の録画を視聴中。押江先生もお盆休みを取っているので、十七日まで授業がないのです。



 ◆ ◆ ◆


 よし、できたー! 芦田さん、受け取ってくださーい!


 あっという間に十二日の夜。冷蔵庫も片付いたし、仕事も一段落。さーて、明日から帰省ですよー。準備しーましょ。


「アメリちゃんも、持っていく物あったら、リュックに入れといてね」


「おお~。図鑑持っていこうかな……」


 こっちは、コップや歯ブラシ、着替えなんかはキャリーバッグに入れるとして……。せっかくだから、同人誌も何冊か持っていこう。


 よし、こんなもんですかね。


 あ、芦田さんから質問が来てますね。指示出し~。ヨシ! これで今日はもう、寝るだけです!



 ◆ ◆ ◆



「ぐっど・あふたぬーん! お母さん、福井に着いたよー。迎えに来てー」


 帰省当日。福井駅に着いたので、さっそくお母さんにコール。あとは、お迎えを待つだけです。


 「鯵な押し寿司」、相変わらず美味しかったなあ。


 しばらく、アメリと雑談しながら待っていると、やって来ました、赤い乗用車!


「おひさー」


「お帰りなさい、神奈、アメリちゃん。乗って、乗って」


「はーい」


 お母さんに促され、アメリと一緒に後部座席にIN!


「神奈、おかえりー」


 運転席のお父さんが、続いて迎えの挨拶。


「ただいまー。四日間、お世話になります」


 なんて、しおらしく頭を下げる。


「なんだい、他人行儀に。とりあえず、出すよ」


 というわけで、一家の会話を楽しみながら、懐かしの実家へ!



 ◆ ◆ ◆



「たっだいまー!」


「おおー。ただいまー!」


 玄関で手を広げ、実家の広さをさっそく満喫。


「あー、疲れた。客間でごろ寝してていい?」


「もーう、この子は帰ってくる早々……。まあ、いいけれど」


 苦言を呈するお母さんだけど、私の扱いは慣れたもので、好きにさせてくれます。


「神奈。明日にでも、本整理してくれるかな? 大型連休のときは、お友達の観光案内で、やってる暇なかったようだからね」


「あー、そうでした」


 お父さんに言われて、いつもの行事を思い出す。


「おお? 何やるの?」


「んー? 私、向こうに置けなくなった本を、こっちに送っているでしょう? でも、この広い家でも限界あるからね。いらない本を選別するの」


「へー」


 とりあえず、手洗いうがいして、着替えてくつろぎましょっと。



 ◆ ◆ ◆



「おー。アメリちゃんのこと、よく把握してますねえ。さすが」


 コミットで買った、あめりにっき本をこっちに持ってきてるので、現在読書中。


 あはは。私のねぼすけぶりも、良くわかってらっしゃる。


 アメリはアメリで、鳥類図鑑を鑑賞。


 こうして、五冊持ってきた様々な同人誌を読みながら、だらだらとお布団の中で、時を過ごします。


 ふう。なかなか面白かった! アマチュア作品だからって、甘く見ちゃいけないですねえ。なんでも、優輝さん情報によると、プロ作家も出品するらしいし。


 少し、仮眠しようかな。長旅で疲れてる……し……。



 ◆ ◆ ◆



「神奈、神奈、起きなさい! 夜寝れなくなるわよ!」


 んー……? ああそっか、仮眠を取ったんだった。


「おはよー」


 寝ぼけ眼をこすりながら、身を起こし、隣を見る。


 アメリちゃんも、すやすや寝てますねえ。


「アメリ、どうしよっか」


「神奈に任せるわ」


 このまま寝かせておいてあげたいけど、お母さんの言うように、夜、眠れなくなっちゃうかな。


「アメリちゃーん。起きてくださーい」


 ゆさゆさ。


「おお……? おはよー、おねーちゃん……」


 私とは逆に、仮眠からの寝起きが悪いアメリ。大あくびして、船漕いでます。


「おはよーさん。お母さん、どうせ夜こっち使うし、布団敷きっぱでいい?」


「もう、この子はほんとに横着なんだから……。まあ、いいけど」


 やだなあ、お母さん。私、向こうでは立派に生活してますよ? 実家に帰ると、甘えモードになるだけで。


 とりあえず読み終わった本をしまい、髪を整え、アメリと一緒にリビングへ。


「やあ、神奈。よく寝てたみたいだね」


 テレビを見ていたお父さんが、話しかけてくる。


「うん。旅の疲れが出ちゃったみたい。お父さん、今日はDIYしないの?」


「さすがに、暑すぎてね。今朝のうちに、少しやっておいたけど」


 さて、今何時ですかね~?


 壁掛け時計を見ると、だいたい四時か。なんか、中途半端な時間だな。


「お母さんは?」


「一度こっちに来た後、洗濯しに行ったよ」


 ほむ。四人で語らおうと思ったのにな。まあ、すぐ戻ってくるでしょ。


「向こうでは、どうだい?」


「んー。大変なこともあるけど、楽しくやってるよ。仕事も順調! そうそう、私にもアメリにも、新しいお友達ができてね」


 近井さんご一家と、英一くんと美子ちゃんについて話す。


「へー。最近の神奈は、すごくご縁が広がってるねえ」


「そだねー。アメリのおかげかなー」


 隣に座ってるアメリを、よしよしする。


「あ! そうだ! アメリといえば、この子天才なのよ!」


 今度は、T総で始動した、特別カリキュラムについて説明。


「へえー! 大したもんだねえ!」


「でしょ!? 私もアメリ自身も、もうびっくりで」


「あら、なんの話?」


 お。お母さん、おかえりなさい。


「いや、それがね……」


 今しがた私がした話を、お母さんに伝えるお父さん。


「天才!? すごいわねー」


 お母さん、鳩が豆鉄砲食らったような顔してます。


「まあ、何があっても、私たちの大切な孫だけどね」


「だねえ」


 うんうんと、うなずき合う熟年夫婦。


「あ、そうだ! おやつ出してあげる! ちょっと待ってて」


 そう言って、台所へ向かうお母さん。


 少しして、紅茶とシュークリームを手に戻ってきました。


「ありがと~」


「おお~! シュークリーム! ありがとー」


 アメリちゃん、お目々キラキラ。


「アメリちゃん、シュークリーム好きなの?」


「うん! お菓子、何でも好きだよ!」


「そっかー。これは、甘やかしたくなっちゃうわねえ」


 私には小言が多いお母さんも、孫にはメロメロです。


 さっそく、いただきましょうか。ぱくっ。


「あら! これ、結構いいやつじゃない!?」


「そうよー。せっかく、娘と孫が帰ってくるんですもの」


「ほんとに、ありがとーね!」


 うまうま。


 あー、美味しかった。


 こんな具合に、一家団欒を愉しむ私たち。


 実家は、落ち着きますねえ。ほっこり。

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