さらに、時計の針はちょっとくるりと回って二月二日、節分です!
「アメリちゃーん、今日は節分ですよ~。お昼は恵方巻きにしよう~!」
八時もとうに回り、しゃっきり意識回復した私は、対面で牛乳を飲んでいるアメリに提案するのでした。
「おお? えほーまき?」
「うん。節分っていう日に食べるお寿司なんだけどね、これを恵方……今年は南南東だったかな。そっち向いて無言で食べきると、福が訪れるのよ」
「おお~!」
目をくりくりさせて、興味津々なアメリちゃん。ほほえま!
それじゃあ、九時になったらいつものスーパーに行きましょー!
◆ ◆ ◆
というわけで、とーちゃく!
やあやあ、朝からなかなかの人混みですねえ。さすがイベント日。
今回の問題は、手作りか出来合いで済ますか。
個人的には、せっかくだから手作りしたいところだけど。
横に佇んでいるパートナーに、お伺いを立ててみましょうか。
「アメリちゃん、アメリちゃん。恵方巻きは自分で楽しく作るのと、出来合いで済ませて楽しちゃうのと、どっちがいいかな?」
うーん、と考え込むアメリ。
「どっちでもいいよー!」
そして笑顔で放たれる、力強いいつものお言葉。困ったね。
……よし。アメリの初節分だし、手作りでいってみよう!
鮮魚コーナーで、グラム売りしているマグロとサーモンのサクを、百グラムずつ切り売りしてもらう。こういう細かい注文に応えてもらえるの便利よね。
あとは、卵とカニカマときゅうり。そして、肝心の海苔と米酢。かんぴょうとかあるとそれっぽさがぐっと出るけど、持て余しそうだし、第一乾物コーナーにも見当たらない。あれってどこで売ってるのかしらね。まあ、いいや。
さらにふと、イベント品コーナーの、鬼のお面付き・マス入り煎り大豆が目についた。
どうしようかな。後片付けが面倒は面倒だけど……ええい、アメリちゃんの初節分だ。買っちゃえ!
よし、節分アイテムはこれでおっけー! 晩ごはんは、恵方巻きの具材が使い切れないだろうから残り物でいいとして、後は朝ごはんにパンと牛乳を買ってけばいいか。
それじゃあ、お会計~!
アメリは、「バルーンガム」と「うめえ棒」を買っていきました。
◆ ◆ ◆
というわけで、ただいまーっ!
いつものように手洗い&うがいを済ませ、お米を水に浸すというルーチィンを行う。
さて、いい感じに浸水が終わるまで、おまけコーナーでも描いていてましょうかねー。
今回のおまけは、由加&ミキコンビを中心に描いていく。ピザ焼いてる由加なんて描いたら、優輝さん喜んでくれるかな。うふふ、手間っちゃ手間だけど、やっぱりおまけコーナーは描いてて楽しいなあ。
浸水終了をスマホが知らせてくれたので、炊飯ボタンぽちっ。引き続き筆を入れていく。
「おねーちゃーん」
後ろから、アメリの困り声が聞こえる。
「んー? どうしたの?」
「ガムがどうしても膨らまないー」
アメリ、以前買ったバルーンガムを膨らませるのに失敗しており、現在そのリベンジ中なわけだけど、やはり上手くいかないらしい。
「んーとね、歯の裏にガムをひっつけて、なんていうのかな、歯の間に膜を作るみたいに。で、そしたら唇をすぼめて、ぷーってゆっくり吹いてみて」
言われた通りにすると、少しだけ膨らみが口から顔をのぞかせて破裂する。
「できた!」
「うん、その調子その調子。コツを掴むと、もっと大きくできるよ」
アメリも、コツの第一歩を掴んだようなので、作業に戻る。
しばらくすると、「んーっ! んーっ!」と、アメリの声。まさか、喉に詰まった!? 慌てて後ろを向くと、それは見事なバルーンができていました!
「おお~、お見事お見事!」
パチパチと拍手。見せるものを見せ終わると、バルーンをしぼませる。
「上手くできた!」
得意げなアメリに、「上手上手」と拍手を送る。心残りなし、とばかりにガムをティッシュにくるんで捨てる彼女。だいぶ長く噛んでたみたいだものね。
お、ごはんももうすぐ炊き終わるなー。ちょっと早いけど、移動しましょうか。
◆ ◆ ◆
やって来ましたキッチン! ごはんもちょうど炊き終わり、蒸らし中。では、今のうちに具を作っていきましょー。
「アメリ先生。具材を切るのをお任せしていいかな? こんな風に切ってほしいんだけど」
レシピサイトの参考写真を見せる。
「やってみる!」
「じゃあ、そちらはお任せね。私は玉子焼き作るから」
というわけで、共同作業開始!
素早く溶き卵にお砂糖とだしを入れ、卵焼きをちゃちゃっと焼いてしまう。
ご飯の蒸らしが終わったのでお米を切り、ちょっとアメリに作業を中断してもらって、酢飯を作る。
今度は二人で具材切りを再開。アメリが余分にサクを切ろうとするので、慌てて止める。言うの忘れてましたよ。二巻ぶんあれば十分だからね。
さて、具切りの仕上げは彼女に任せて、巻きすをきれいに洗いましょうか。海苔が湿気るといけないので、水分をよく拭き取って……と。それにしてもうち、色んな物があるのねほんと。
「できたよー!」
アメリちゃんの元気な言葉。おお、よくできてますねえ。「いえーい!」と、パチンと手を打ち合わせる。
さて、肝心の巻き作業ですが。
「やってみる?」
こくこくと頷くアメリ。
というわけで、今度はレシピ動画に切り替えて手順を見せる。
上下に余白を作り酢飯を敷き詰め、平らに均す。そして具を載せていき、ぐいーっと一気に巻く!
少し酢飯が余るので、そこをさらに巻き込むようにして、固すぎず、緩すぎずを目指してぎゅっぎゅと握る。
そのまま五分放置。巻きすを取り、端を濡れ包丁で切り落として整形。端っこの部分はもったいないので、別に食べましょう。
かくして、完成でーす!
「できた!」
「初めてとは思えないぐらい上手!」
ちょっと中心から具がずれてるけど、子供は褒めて伸ばす! 頭を撫でると、「えへへ~」ととろけた声を出す。
自分のほうも作ろうと思ったけど、アメリが私のぶんも巻きたいと言うので、わさびを混ぜてお任せする。うん、上手上手! 再度頭を撫でると、「うにゅう」という気抜け声を上げる。
こちらも完成! えっと、うちの南がこっちだから……南南東はこの方角か。お茶を用意して、と。
「じゃあアメリ、食べ終わるまで無言ね。いただきます!」
「いただきます!」
無言で、もくもくとかぶりつく私たち。どうにも会話が弾まないのは寂しいけれど、恵方巻きだからねー。巻き加減が、ちょうどいい塩梅で美味しい。
よし、食べ終わった! アメリも食べ終わるのを、お茶をすすリながら待つ。
「ごちそうさまでした!」
「はい、ごちそうさまでした~。美味しかった?」
「うん!」
笑顔を浮かべる彼女の頭を撫でると、「うにゅう」という例の声を上げる。良き哉良き哉。
さて、切り落とした端っこもちゃんと食べて、後片付けと歯磨きをしましょうか。
後半に続く!
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