神奈さんとアメリちゃん

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第九十二話 折り紙とそれぞれの頑張りと

公開日時: 2021年4月21日(水) 12:01
文字数:2,207

「その髪型、ほんと可愛いねー」


 今日は、ミケちゃんが遊びに来ています。クロちゃんももう少ししたら来るとのこと。


 で、髪型の何が可愛いかというと、ミケちゃんがロングヘアをツーサイドアップにして、イメチェンしたのです。


「でしょー。昨日由香里がね、『こうしたらもっと可愛いんじゃない?』って言って、まとめてくれたらこれがバッチリ似合っちゃったワケよ」


 テールの片側をくりくりといじりながら、胸をそらしドヤ顔するミケちゃん。


「いいなー。アメリも、もうちょっと髪型の自由が効いたらねー」


 アメリの髪を手でくと、「うにゅう」と気の抜けた声を上げる。


「白部センセーが、ミケたちの髪はこれ以上伸びないって言ってたわよ」


「私もこないだ聞かされたよ。とりあえず、アメリのこのきれいなシルバータビーが崩れないのを心の支えに生きていこうと思うの」


 うん、我ながら大げさ。


「まー、オンナにとって髪は命だものね」


 まあ、ミケちゃんったらおませさんな言い回し。


「おねーちゃん、アメリの髪伸びないの悲しいの?」


 アメリが心配そうな視線を向けてくる。


「ううん、大丈夫。アメリは何があっても、可愛い素敵世界一位だもの!」


「おお~! よかった」


 ほっとするアメリと対象的に、「むう」とちょっとむくれるミケちゃん。うーん、こちらを立てればあちらが立たず。


 そんなほのぼのした(?)会話を繰り広げていると、インタホンの呼び鈴が鳴った。二人に待っててもらい、リビングに向かう。


「はーい、どちら様でしょう?」


 だいたい予測は付いてるけど、一応尋ねる。


「ボクです。こんにちは」


 やっぱりクロちゃんでした!


「はいはーい、今門まで行くねー」


 というわけで、彼女も招き入れ中に通す。


「これ、お姉ちゃんから……」


 紙袋には「亀池堂」の文字。


「あら、悪いわねー。ありがたくいただきます。今、これでお茶菓子用意するからね」


「はい。アメリたちのところ、行っていいですか?」


「どーぞどーぞ。寝室でミケちゃんと遊んでるから」


 ぺこりと一礼して、奥に進むクロちゃん。さて、緑茶れましょうっと。



 ◆ ◆ ◆



「お待たせー。あら、折り紙?」


 お茶菓子を持っていくと、三人が折りたたみ机を囲んで折り紙と格闘中。


「おお~! クロがね、持ってきてくれた!」


「懐かしいなあ。折り紙なんて子供の時以来だなー。私も混ざっていい?」


 「どうぞ」とクロちゃんが言ってくれたので、私も輪の中に入る。


 さて、折り紙でまずやることは、たしか対角線同士を折り曲げて、×の字に折り目をつけること。それから……ええと、どうするんだっけ? う~ん、二十年近いブランクは伊達じゃない。鶴もやっこさんも、まるで折り方が思い出せない……。


「クロー。ここ、どうすればいいの?」


「ここはね、こう折るんだよ」


 アメリに指南を請われ、器用に折っていくクロちゃん。


 プライドは投げ捨てるもの。私も教わっちゃおう。


「クロちゃん、私、鶴折りたいんだけど折り方忘れちゃって……。教えてくれる?」


「いいですよ。折り紙のことなら、ボクに任せて。こうやって……」


 クロちゃんが丁寧にゆっくり手順を見せてくれる。


 彼女の指導通りに折っていくと、鶴が完成! おお~!


「すごい! クロちゃん教え方上手ね!」


「それほどでも……」


 照れくさそうにうつむく彼女。可愛い。


 こうして、クロ先生の手ほどきのもと、やっこさん、カエル、手裏剣などを作っていく私たち。いやー、こうやって童心に帰って折り紙っていうのも悪くないね!


「そうそうクロちゃん。盆栽のほうはあれからどう?」


「松風ですか? とてもいい感じの枝ぶりです」


 はにかむクロちゃん。やはり可愛い。枝ぶりとかいう渋い言葉を発する幼女というのは、大変シュールだけど。


「そっかー、今度また見せてね。ミケちゃんはあれから何かしてる?」


 触れないほうがいい話題だったかな、と後から思ったけど、言ってしまったものは仕方ない。


「とりあえず、ダンスゲームで鍛えてるわよ」


 ちょっと声のトーンが落ちたものの、思ったほど歌謡コンの件を引きずっていないようで内心ホッとする。あのときはみんな、気が気じゃなかったものねえ。


「アメリはあれから、何か新しいこと覚えた?」


「えっとねー、アルファベットとローマ字、あと信号のこと教えてもらった!」


 ミケちゃんの問いに元気に答えるアメリ。


「むむ! ミケ、まだローマ字教わってないわ。後で優輝たちに教えてもらわなきゃ! 妹には負けてられないものね!」


 俄然、対抗意識に目覚める彼女。ほほえま。


「でもアメリ、きっとまだ漢字教わってないでしょ?」


「おお? なにそれ?」


「えーと。神奈おねーさん、ペン貸して」


 言われた通りに、ペンとついでにコピー用紙を手渡すと、一~十、〇、百、千、年、月、日、あと角と照という字を書く。


「これが漢字。ミケは、とりあえずこれは書けるようになったわ」


「おお~! すごい! おねーちゃん、後で教えて!」


「うん、いいよ。みんな勉強熱心ねえ」


 その後、折り紙を折りながら、どこまで皆の勉強具合が進んでるかという話で会話が弾む三人。良きかな良きかな


「あ。話変わるんだけど、明日もまた二人ともうち来ない?」


「構わないけど……なんで?」


 素朴な疑問を尋ねてくるミケちゃん。


「みんなと一緒に、美味しいお菓子作ろうかなって。興味あるでしょ?」


 すると、瞳をキラキラと輝かせる三人。うんうん、好感触!


「じゃあ、またお昼すぎに来てね」


 さあ、明日は子供たちとお菓子作りですよ! 楽しみ!

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