神奈さんとアメリちゃん

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第四百八十二話 素晴らしいね、親友って!

公開日時: 2022年1月31日(月) 21:01
文字数:2,789

 朝、しゃっきりしてから郵便受けを開けると、T総から封書が届いていました! ついに来た!


 諸々の郵便物を持って、急いで寝室に戻る。


「来たよ、アメリ! T総のあれ!」


「おお!? おおおおおお……」


 ベッドに腰掛け、本を読んでいたアメリちゃんが、マナーモードになってしまう。


「見てみよう」


 ペーパーナイフを取り出し、ビッと開封! 中身を出すと……。


 よくわからないグラフと、別紙に「アメリさんのIQは131であると結果が出ました。つきましては、特別カリキュラムについてご相談したいので、平日でご都合のよろしい日時をご指定ください」と書いてある。


 ……。……? ……!! えらいこっちゃ! これ、天才判定が下ったってこと!? どひゃー!


「アメリ! 特別カリキュラム、受けられちゃいますよ!?」


「お……おおおおおおおおおお!!?」


 さらに、震えが大きくなる愛娘。


「おお……おねーちゃん、怖いことない?」


「大丈夫! T総の人たち、怖いことしないから!」


 とか言いながら、私もちょっとパニック気味。だってねえ? ええー……。思わず、紙をもう一回見てしまう。


 落ち着け神奈。まだ慌てるような時間じゃない。深呼吸~。すー……はー……。ヨシ! 私が動揺してたら、アメリ不安になっちゃうもんね。


「落ち着こうか」


 震える娘を、ぎゅっと抱きしめ頭を撫でる。しばらくそうしていると、震えが少しずつ収まっていく。


「よしよし」


 アメリの震えが収まるまで、ずっとそうするのでした。


「もう、だいじょぶ」


「そう?」


 まだ少し震えているけれど、本人の自己申告を信じよう。


 深呼吸するアメリちゃん。そして、「むん!」と気合を入れる。


「だいじょーぶ!」


 なんか健気で可愛くて、つい頭を撫でたり。


「とりあえず、お返事するね。アメリは、いつがいいとかある?」


 スマホを手に取る。


「おおー……。早いほどいいかな。待ってると、また不安になりそう」


「りょーかい」


 T総にTEL。


「猫崎と申します。CH研究部に、つないでいただけますか? 氏名は猫崎アメリ。生年月日ですか? 二〇二〇年、九月三日です。はい、お願いします」


 保留音を聞きながら、待つことしばし。


「おはようございます。猫崎です。はい。本日書簡が届きまして、特別カリキュラムの件でおかけしました。最速、何日からOKでしょう? ……来月三日。わかりました。それでお願いします。はい、では一時に」


 ふう、打ち合わせ終了。


「アメリちゃん。来月三日に、お話聞きに行くことになったよ」


「おお~……」


 また小刻みに震えだしたので、抱きしめ&撫で撫でで、落ち着かせる。


「だいじょーぶ、だいじょーぶ。三日まで、このことは考えないようにしよ?」


「うん……」


「さ、ミケちゃんとクロちゃん今日も来るし、お買い物行っとこうか!」


 というわけで、気分転換も兼ね、いつものスーパーへGO!



 ◆ ◆ ◆



 帰宅後、アメリと寄り添い、昨日買ったファッション誌をのほほんと眺めていると、呼び鈴が鳴りました。


 応対すると、果たしてミケちゃんだったので、アメリと一緒にお出迎え。


「「こんにちはー」」


 おや、クロちゃんも一緒じゃないですか。


「こんにちは。タイミング合わせたの?」


 アメリも、「こんにちは」とご挨拶返し。


「たまたまです。門の前まで来たら、ミケが偶然出てきて」


 クロちゃんが、状況を説明してくれる。


「へー。とりあえず、中入って。暑いでしょう」


「お邪魔しまーす」


 クロちゃんも、自転車を前庭に停めてから、「お邪魔します」とミケちゃんの後を追いました。



 ◆ ◆ ◆



 今日は、昨日遊んでしまったぶんを埋めるべく、お勉強会。


「昨日のお昼、クロちゃんは何してたの?」


 ミケちゃんは梱包作業のお手伝いらしいけど。


「家のお手伝いと、ネット将棋ですね。お姉ちゃんも、普通に忙しいですから。『クロちゃんは好きなこと将棋に打ち込んで』って、逆に心配されちゃいましたけど」


 お互い大変ですなあ。まりあさん、割と一人で抱え込むところがあるから、無理してないといいけど。


 去年、まりあさんが風邪で寝込んだ時を思い出す。あのときは、かくてるの皆さんがいらっしゃって、私もちょうど暇な時期で、不幸中の幸いだった。ただ、アメリと離れ離れになったのは、辛かったなあ。


「おねーちゃん?」


「ハイなんでしょう!?」


 ボーッとしてるところに、当のアメリから声をかけられ、我に返る。


「0.5に0.5掛けると、なんで0.25に減っちゃうの?」


「いい質問です、アメリちゃん。0.5って、イコール二分の一なのね。で、掛けるってのは、前の数が、これだけありますよーって意味なの。だから、二分の一。一個の半分だね。それがさらに半分になったら?」


「四分の一!」


「正解! さらに減っちゃうんだね。0.25は四分の一と同じなんだ」


 「おおー」と、感心するアメリちゃん。この子はなんと、小数点の掛け算まで進んでいます。白部さん、ここまで進めてくださったんだ。彼女もアメリも、すごいなあ。


「そーいえばさ、アメリ」


「おお?」


「例の特別カリキュラムって、どーなったの?」


 あ……。


 ミケちゃんの振った話に、またもマナーモードになってしまう娘。


「ちょ……だいじょーぶ? やっぱ、ダメだったとか?」


 自分の発した言葉の破壊力にびっくりして、心配そうにアメリを見るミケちゃん。


「ごめんね。そのことは来月の三日まで、考えないことにしようって、話し合ったばかりなんだ」


 アメリを抱きしめて落ち着かせる。


「やっぱり、ダメだったの?」


「ううん。むしろ、話が進んだのよ。この子、本物の天才だったみたい」


 ぽかーんと、あっけにとられるミケちゃん。しかし、我に返ると、ぺしーんとアメリの肩を、私の反対側から叩く。


「しっかりしなさい! ミケ、応援してるんだからね!」


 きょとんと、彼女を見るアメリ。


「ミケは、勉強では完全敗北したわ。アメリは、ミケのジマンの妹よ! だから、胸を張りなさい!」


 ふんすと鼻息も荒く、胸を反らすミケちゃん。


 荒っぽいけど、彼女なりにアメリを励ましてるんだ。そして、その言葉は誠の気持ちから出ている。


 アメリの才能に嫉妬していた彼女が、それを克服して、逆に励ますまでになった。


 ダークエネルギーショック以来、ほんとに人間的に成長したんだね。


「ボクも応援してるよ……。あ、でもプレッシャーになるなら、言わないようにするからね」


 クロちゃんも、相変わらずとても優しい。


「おお……。ありがと。アメリ、ちゃんとする!」


 しゃきっと姿勢を正す娘。


「大丈夫?」


「だいじょーぶ!」


 きりりとした表情で、私を見るアメリ。


「ありがとう、二人とも」


 二人に向かって、お辞儀。素晴らしいね、親友って!


 もう一度、アメリを抱きしめて、頭を撫でる。今度は落ち着かせるためではなく、恐れを克服したことを称えるために。


「よし! じゃあ、勉強の続きしよっか!」


 「はーい」と三重唱。この子たちは、きっと互いに終生の友になる。そんな確信を得るのでした。

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