朝、しゃっきりしてから郵便受けを開けると、T総から封書が届いていました! ついに来た!
諸々の郵便物を持って、急いで寝室に戻る。
「来たよ、アメリ! T総のあれ!」
「おお!? おおおおおお……」
ベッドに腰掛け、本を読んでいたアメリちゃんが、マナーモードになってしまう。
「見てみよう」
ペーパーナイフを取り出し、ビッと開封! 中身を出すと……。
よくわからないグラフと、別紙に「アメリさんのIQは131であると結果が出ました。つきましては、特別カリキュラムについてご相談したいので、平日でご都合のよろしい日時をご指定ください」と書いてある。
……。……? ……!! えらいこっちゃ! これ、天才判定が下ったってこと!? どひゃー!
「アメリ! 特別カリキュラム、受けられちゃいますよ!?」
「お……おおおおおおおおおお!!?」
さらに、震えが大きくなる愛娘。
「おお……おねーちゃん、怖いことない?」
「大丈夫! T総の人たち、怖いことしないから!」
とか言いながら、私もちょっとパニック気味。だってねえ? ええー……。思わず、紙をもう一回見てしまう。
落ち着け神奈。まだ慌てるような時間じゃない。深呼吸~。すー……はー……。ヨシ! 私が動揺してたら、アメリ不安になっちゃうもんね。
「落ち着こうか」
震える娘を、ぎゅっと抱きしめ頭を撫でる。しばらくそうしていると、震えが少しずつ収まっていく。
「よしよし」
アメリの震えが収まるまで、ずっとそうするのでした。
「もう、だいじょぶ」
「そう?」
まだ少し震えているけれど、本人の自己申告を信じよう。
深呼吸するアメリちゃん。そして、「むん!」と気合を入れる。
「だいじょーぶ!」
なんか健気で可愛くて、つい頭を撫でたり。
「とりあえず、お返事するね。アメリは、いつがいいとかある?」
スマホを手に取る。
「おおー……。早いほどいいかな。待ってると、また不安になりそう」
「りょーかい」
T総にTEL。
「猫崎と申します。CH研究部に、つないでいただけますか? 氏名は猫崎アメリ。生年月日ですか? 二〇二〇年、九月三日です。はい、お願いします」
保留音を聞きながら、待つことしばし。
「おはようございます。猫崎です。はい。本日書簡が届きまして、特別カリキュラムの件でおかけしました。最速、何日からOKでしょう? ……来月三日。わかりました。それでお願いします。はい、では一時に」
ふう、打ち合わせ終了。
「アメリちゃん。来月三日に、お話聞きに行くことになったよ」
「おお~……」
また小刻みに震えだしたので、抱きしめ&撫で撫でで、落ち着かせる。
「だいじょーぶ、だいじょーぶ。三日まで、このことは考えないようにしよ?」
「うん……」
「さ、ミケちゃんとクロちゃん今日も来るし、お買い物行っとこうか!」
というわけで、気分転換も兼ね、いつものスーパーへGO!
◆ ◆ ◆
帰宅後、アメリと寄り添い、昨日買ったファッション誌をのほほんと眺めていると、呼び鈴が鳴りました。
応対すると、果たしてミケちゃんだったので、アメリと一緒にお出迎え。
「「こんにちはー」」
おや、クロちゃんも一緒じゃないですか。
「こんにちは。タイミング合わせたの?」
アメリも、「こんにちは」とご挨拶返し。
「たまたまです。門の前まで来たら、ミケが偶然出てきて」
クロちゃんが、状況を説明してくれる。
「へー。とりあえず、中入って。暑いでしょう」
「お邪魔しまーす」
クロちゃんも、自転車を前庭に停めてから、「お邪魔します」とミケちゃんの後を追いました。
◆ ◆ ◆
今日は、昨日遊んでしまったぶんを埋めるべく、お勉強会。
「昨日のお昼、クロちゃんは何してたの?」
ミケちゃんは梱包作業のお手伝いらしいけど。
「家のお手伝いと、ネット将棋ですね。お姉ちゃんも、普通に忙しいですから。『クロちゃんは好きなことに打ち込んで』って、逆に心配されちゃいましたけど」
お互い大変ですなあ。まりあさん、割と一人で抱え込むところがあるから、無理してないといいけど。
去年、まりあさんが風邪で寝込んだ時を思い出す。あのときは、かくてるの皆さんがいらっしゃって、私もちょうど暇な時期で、不幸中の幸いだった。ただ、アメリと離れ離れになったのは、辛かったなあ。
「おねーちゃん?」
「ハイなんでしょう!?」
ボーッとしてるところに、当のアメリから声をかけられ、我に返る。
「0.5に0.5掛けると、なんで0.25に減っちゃうの?」
「いい質問です、アメリちゃん。0.5って、イコール二分の一なのね。で、掛けるってのは、前の数が、これだけありますよーって意味なの。だから、二分の一。一個の半分だね。それがさらに半分になったら?」
「四分の一!」
「正解! さらに減っちゃうんだね。0.25は四分の一と同じなんだ」
「おおー」と、感心するアメリちゃん。この子はなんと、小数点の掛け算まで進んでいます。白部さん、ここまで進めてくださったんだ。彼女もアメリも、すごいなあ。
「そーいえばさ、アメリ」
「おお?」
「例の特別カリキュラムって、どーなったの?」
あ……。
ミケちゃんの振った話に、またもマナーモードになってしまう娘。
「ちょ……だいじょーぶ? やっぱ、ダメだったとか?」
自分の発した言葉の破壊力にびっくりして、心配そうにアメリを見るミケちゃん。
「ごめんね。そのことは来月の三日まで、考えないことにしようって、話し合ったばかりなんだ」
アメリを抱きしめて落ち着かせる。
「やっぱり、ダメだったの?」
「ううん。むしろ、話が進んだのよ。この子、本物の天才だったみたい」
ぽかーんと、あっけにとられるミケちゃん。しかし、我に返ると、ぺしーんとアメリの肩を、私の反対側から叩く。
「しっかりしなさい! ミケ、応援してるんだからね!」
きょとんと、彼女を見るアメリ。
「ミケは、勉強では完全敗北したわ。アメリは、ミケのジマンの妹よ! だから、胸を張りなさい!」
ふんすと鼻息も荒く、胸を反らすミケちゃん。
荒っぽいけど、彼女なりにアメリを励ましてるんだ。そして、その言葉は誠の気持ちから出ている。
アメリの才能に嫉妬していた彼女が、それを克服して、逆に励ますまでになった。
ダークエネルギーショック以来、ほんとに人間的に成長したんだね。
「ボクも応援してるよ……。あ、でもプレッシャーになるなら、言わないようにするからね」
クロちゃんも、相変わらずとても優しい。
「おお……。ありがと。アメリ、ちゃんとする!」
しゃきっと姿勢を正す娘。
「大丈夫?」
「だいじょーぶ!」
きりりとした表情で、私を見るアメリ。
「ありがとう、二人とも」
二人に向かって、お辞儀。素晴らしいね、親友って!
もう一度、アメリを抱きしめて、頭を撫でる。今度は落ち着かせるためではなく、恐れを克服したことを称えるために。
「よし! じゃあ、勉強の続きしよっか!」
「はーい」と三重唱。この子たちは、きっと互いに終生の友になる。そんな確信を得るのでした。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!