「『くろねこクロのたび』の本まであったのは、驚きました」
一同、会場の隅っこで休憩中。経口補水液で水分補給なう。
いやー、暑い暑い。冷房効いている建物の中のはずなのに、暑いのなんの。
で、くろねこクロのたび本を出しているサークルさんがあり、先ほどの私のようなやり取りをまりあさんもして、一冊ずつお買い上げしました。
「なんだか、お二人が羨ましいですね。私の論文とか、誰か本にしてないものでしょうか」
白部さんが冗談を飛ばすので、三人でくすくす笑い。
「そういえば、すみませんね。荷物持ちしていただいて」
三人の中で、唯一漫画を色々読むワタクシ。興味ある作品の同人誌を色々見つけ、散財してしまいました。
ただ、キャリーバッグがいっぱいになってしまったので、白部さんのバッグを間借りしています。
「いえいえ。猫崎さんが楽しまれているようで、何よりですよ」
子供たちはというと、アメリはケイティちゃん本。クロちゃんは様々なお城のイラスト集、ノーラちゃんは有名サッカー選手、早井さん本なんてものを見つけて、購入してもらいました。
なんていうか、お城や実在人物の本なんてのもあるのねえ。
「う~……」
突如、唸りだす愛娘。
「どうしたの? 調子悪い?」
「おトイレ行きたい!」
Oh! 生理現象! でも、私もついでだから済ませておこうかな。
「トイレ、行きましょうか」
「そうですね。わたしもちょっと……」
というわけで、六人で女子トイレにやって来たわけですが……。
長~蛇~の~列~!!
ああ、再度理解しました。優輝さんが、早めの行動を勧めていた意味を。
あまりイベントに出かけないワタクシ、こういう大イベントの女子トイレがえらいことになるのを、失念していました。
しかたなく、最後尾へ。
「持ちそう?」
「わかんない」
アメリが、もじもじしながら返してきます。
列は徐々に進んでいき、あと一息!
「漏れちゃう!」
「我慢。頑張って、あともうちょっと我慢しよう」
アメリちゃん、お粗相の危機! 耐えて~!
ついに、私たちの番に。
急いで、トイレに駆け込む愛娘。セーフ!
戻ってきたアメリは、後ろの白部さんに見ていただき、私も済ませる。ふう。
あとは、用を足し終わった子の面倒を私が見つつ、トイレ脇で邪魔にならないように、子供たちと暇潰しします。
「お待たせしました」
最後の白部さんが、手を拭きながらこちらに合流しました。
「飲み物、調達したいですね」
早めの行動の大切さを、思い知った私たち。虎の子の経口補水液はさっき飲んでしまったので、マップを頼りに自販機を探す。
ここでも、行列が……。
並ぶことしばし、スポドリゲット!
「休憩も込みで、食事にしませんか?」
まりあさんが、クロちゃんの頭を撫でながら提案する。クロちゃん、たしかに疲れが顔に出ているな。
アメリを見ると、こちらも疲れ気味の模様。子連れなんだから、体力には気をつけないとだね。
「そうですね。色々あるようですけど、どこにしましょうか?」
六人で、Webカタログをすいすいめくる。
「和食のレストランがありますね。ここ、いかがでしょう?」
まりあさんが、ご提案。とくに反対意見もないので、同意。白部さんと子供たちも、異存ないようです。
では、レストランにGO!
◆ ◆ ◆
到着~。やはり、ここも行列。もう、慣れました……。
しばらく経って、やっと私たちの番に。はあ、これでゆっくりできる。
私は、冷たいお蕎麦を注文。暑いんですもの。ほかの五人も、めいめい食べたいものをオーダー。
おしゃべりを楽しんでいると、ややあって料理が運ばれてきました!
「いただきます!」
ここは、景気良くすすりましょう! はー、美味し。
「アメリ、美味しい?」
「うん!」
海鮮丼を頼んだアメリちゃん、嬉しそうにもぐもぐ。
「ごちそうさまでした」
何ぶんシンプルな料理なので、一番先に食べ終わってしまいました。
再度おしゃべりに興じながら、お水をいただきます。
最後にクロちゃんが、焼き魚定食を食べ終わり、全員ごちそうさま。
◆ ◆ ◆
「次は、何をしましょうか」
行列ができているのに、長居するわけにもいかないので、退店して作戦会議。
「わたしは……とくに欲しい物は、ないですねえ」
「私もです」
Webカタログをめくりながら、首を横に振るお二人。
「……私も、買いたい物は、すでに買っちゃった感じですね」
「とりあえず、角照さんたちのところに行ってみませんか?」
白部さんの提案に賛成し、懐かしの「島」へ。
◆ ◆ ◆
「やあやあ。お久しぶりですね! 楽しんでますか?」
そんな何時間も経ってないはずだけど、お久しぶりと言う優輝さんに、「はい、楽しんでます」と返す。
山積みになっていたゲームが、だいぶ減っている。随分売れたんだなー。
今も、由香里さんとさつきさんが、売り子をしている最中。
ミケちゃんは、パイプ椅子に座りながら、プラカードを掲げ、呼子をしています。
「ただ、もうやることがなくなってしまいまして」
三人で顔を見合わせる。
「でしたら、先に上がっていて大丈夫ですよ。あたしらは終わりまでいますけど」
「いいんですか?」
「集団行動取らなきゃいけないって話も、ないですしね」
再度、顔を見合わせる私たち。
「でしたら、お先に失礼させていただきますね」
「はい。お疲れ様でした」
優輝さんたちにお辞儀されるので、お辞儀を返す。
手を振って、会場を後にするのでした。
しかし、まだ一波乱待っていようとは……。
◆ ◆ ◆
会場前の一角に、人だかりができています。
「何でしょうね、あれ?」
「ついでですし、見てみましょうか」
白部さんの提案で、寄っていくことに。
すると、様々なキャラのコスプレをした人たちを囲んで、撮影会が行われていました。
「あ、あのキャラ知ってる!」
のんきにそんなことを言ってると、突然パシャリ。
……ん? 撮影者さんたちのカメラが、こっちに?
すると、三人娘にフラッシュが焚かれまくります。
「あー、違うんです! この子たち、コスプレじゃないんですー!」
どうしよう。かえってフラッシュが増えてしまった。
「……えーと、顔は後で修正してください! お願いします!」
「おお? 何か撮られてるけどだいじょーぶ?」
「アメリちゃん。人間、諦めると楽になることってあるものよ……」
しばし、流れに身を任せます。やれやれ。人気者だね、この子たちは。
だいたい撮られ終わったのか、こちらに興味を向ける人も減りました。今です!
そそくさと輪を出て、バス停に向かうのでした。ふう。
こうして、行きほどではないけど、結構な乗車率のバスと電車に乗り、家路を急ぐのでした。
珍事もあったけど、楽しかったなあ。また、次も来たいな!
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