神奈さんとアメリちゃん

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第十五話 猫耳幼女看病日記

公開日時: 2021年4月17日(土) 09:01
文字数:1,948

「食欲ある?」


 帰宅し、アメリをパジャマに着替えさせてベッドに寝かせ、食欲の有無を問うとこくりとうなずく。となると、おかゆさんの出番だね!


 ただ、うちはパン食が多いもので炊飯器は現在空っぽ。というわけで、先ほど購入したレンジ米で作る次第。


 手鍋でお湯を沸かしたら、ごはんをイン。煮込んだところに溶き卵を注いで塩で味を整えて……完成!


 一応味見。……うん、いい塩梅だと思う! 病気のアメリが食べるには多すぎるから、半分ぐらいにして残りはまた後で食べさせよう。


 トレイにおかゆ入りお茶碗とレンゲ、水の入ったコップ、そしてお薬を載せてアメリのもとへ戻る。


「できたよ~。起きてる?」


 そっと声をかけると、アメリが「うん」と、か弱い返事をする。


「ちょっと大変だけど、体起こそうね。……よいしょ」


 彼女を手助けし、ベッドの上で上半身を起こさせる。


 太もものあたりにお盆を載せる。


「食べさせてあげるね。はい、あーん」


 ふうふうと息をかけて冷ましたおかゆを口元へ運ぶと、気だるそうにそれを食む。


「おいしい?」


 出来を問うと、こくりとうなずく。よかった。


 なんとかおかゆを完食してくれ、薬も飲ませてお膳を下げて洗い物は食洗機に。


「じゃあ、私仕事してるからね。何かあったら声かけてね」


 横になっているアメリに声をかけ、彼女が退屈しないように南海ビデオを無音で流しながら、仕事机の照明だけにする。


 もともと一人暮らしだから適当に仕事場と寝所を一緒にしていたわけだけど、今ほどその状態で良かったと思うことはない。何かあれば、仕事中でもすぐにアメリに反応できるのだから。


 また同時に、私が作業にBGMを必要としないタイプだったのも幸いした。アメリの睡眠を妨害したり、逆にヘッドホンで声をかけられたとき気づかないということもない。


 なによりこの仕事漫画家が幸運だった。在宅ワークで騒音を出すこともない。静かにずっとアメリの傍にいられる。


 不幸中の幸いを噛み締めながら、明日のかてのため、そしてアメリの養育費ために筆を走らせる。


 ときおり、こほんという小さな咳が聞こえる。大丈夫かな、心配だな。


 アメリは心配だけど、クオリティを維持しつつ締め切りを守るのも大切なこと。仕事はこなす。アメリも世話する。両方やらなくちゃならないってのがの辛いところよね。


 でも、本来なら彼女は今もうこの世にいなかったのだから、もう一度その機会に恵まれたことの何と幸いであることか。


 猫の寿命は長くて十五年。きっとそれより長く、またアメリと暮らせるんだ。こんな状況だけど、きゅっと喜びに唇を噛みしめる。


 虹の橋から彼女を戻らせてくれた女神様、心から感謝します。



 ◆ ◆ ◆



 お薬が効いたのか、咳は殆どしておらず安らかな寝息が聞こえる。そういえば、私自身のお昼ごはんがまだだった。時計を見るともう三時。アメリの容態も落ち着いたようだし、随分遅くなったけどごはんにしよう。


 テレビとBDの電源を落とした後、台所へGO。まずは冷めたおかゆを耐熱のお茶碗に移し、ラップをかけて冷蔵庫にしまう。お鍋はこのまま食洗機に入れてもおこげが落ちないのでたわしでこする。あとは食洗機行き。


 お鍋洗いが一段落したところで改めて冷蔵庫を漁る。だいたいその日食べるものだけ買ってるから、さっき使った卵と牛乳とパンぐらいしかない。あとは缶詰とかスパゲッティーとかアメリ用に買ったゼリーやレンジ米ぐらいか。


 アメリの具合がまたいつ悪くなるかわからないから、手のかからないものがいいよね。となると……よし、目玉焼きトーストにしよう。


 パンをトースターにセットして、さっき洗ったばかりだけど火にかけた手鍋にバターを塗って溶かす。あとは卵を割り入れてお水をちょいと入れて、お鍋を透明ガラス蓋で塞ぐ。


 目玉焼きの目玉に白い膜がかかったら、火を止める。で、トーストに載せてマヨをぐるりと一周。はい、出来上がり~! わお、お手軽ぅ!


 コップに牛乳を注いで、いただきまーす! うん、テキトー料理だけど美味しいものは美味しいな。


 できればお野菜が欲しいところだけど、残念ながらストックがない。アメリを置いて買い物に行くわけにもいかないし。セールが来たら、アスパラの缶詰でも買い込んでおこうかしら。


 さて、食事も済ませたことだし、アメリが心配なので寝室に戻りましょ。お鍋とお皿とコップを食洗機に入れて、アメリのもとへと舞い戻る。


 安らかな寝息を立てているアメリ。今朝、あんなに辛そうだったのが嘘みたい。そういえば猫耳人間になってから、アメリの寝顔をじっくり見たことってなかったな。


 薄明かりの中、じっと寝顔を見つめる。……可愛い。本当にもう、天使としか言いようがない。自分でも、どうしようもないぐらいの親バカだという自覚はある。


 もっと見守っていたいけど、お仕事しなきゃね。


 さあ、頑張るぞー!

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