神奈さんとアメリちゃん

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第三百九十八話 公園で遊び納め!

公開日時: 2021年11月3日(水) 21:01
文字数:2,582

 やや、これはこれは!


 朝のニュースチェックということで天気予報を見ると、明日から一週間ずーっと雨。というか、ついに梅雨入りするようです。


 困ったね。


 LIZEに入ってご挨拶すると、やはり皆さん……特に車を持っていないまりあさんと、衣類乾燥機のない白部さんが、「参りますね」とぼやかれていました。


 まりあさんは、私たちが足代わりを務めることもできるけど、さすがに白部家の洗濯物を私たちが預かるのはね……。そんなわけで、彼女は梅雨明けまで、室内干しに切り替えることにしたようです。


 といっても、この書き込みも少し前のもので、御三家の保護者トリオはすでに習い事のため外出中。いつぞや導入するとおっしゃっていた防犯ブザーとスマホは、今日見繕ってくるとのこと。


 サッカーの練習場は雨の間使えないので、ノーラちゃんのクラブは今日が終わったら梅雨明けまでお休みです。


 また、クロちゃんはこっちに来るのが大変になるので、勉強会も当面三人で行うことに。


「おお~……クロとしばらく会えないの?」


 と、残念そうに項垂うなだれるアメリちゃん。


「自然さんには逆らえないからねー。代わりに、お電話はたくさんさせてあげるからね」


 慰めになってるんだか、なってないんだかわからない言葉をかける。


 さて。私たちは車があるし、二人揃って基本インドア派だから生活がそれほど変わらないけれど……。明日から、公園が使えなくなってしまう。


「アメリ、今日はともちゃんと公園で遊ぶ?」


 遊び納めということで尋ねてみると、瞳をキラキラ輝かせ、「うん! うん!」とこくこくうなずく。良きかな良きかな


 子供好きな久美さんも誘おうと打診したけれど、本日は昨日おサボりしたぶん、仕事プラス、家事の殆どを担当するそうで。私たちのために、すみません……。


 そんなわけで、近井さんのみお誘いしましょう。


「おはようございます。明日から梅雨入りですね。遊び納めということで、ともちゃんとアメリを公園で遊ばせてあげたいと思うのですが、いかがでしょう?」


「おはようございます。そうですね。友美も、あの公園大好きですから、そうさせてあげたいです。こちら公園にいらっしゃるまで、どのぐらいかかりそうですか?」


「三十分もあれば、大丈夫かと思います」


「では、先に遊ばせながらお待ちしてますね」


 よっし! そいじゃー、公園遊び納めと洒落込みましょー!



 ◆ ◆ ◆



「お待たせしましたー」


 公園に着くと、先に砂場で遊んでいた近井さん親子にご挨拶!


「いえいえ。友美、アメリちゃんと遊べるって大喜びで」


「ともちゃん、おかーさん、おはよーございます!」


 しゅびっと挙手してご挨拶するアメリ。お二人も、「おはようー」と、ご挨拶返し。


 こないだお友達になった二人の子は、今日は来てないみたい。


「お水くんでくるー」


 とてとてと、水道に向かう愛娘。


「アメリもですけど、ともちゃんも砂遊び好きですよねー」


「ええ、ほかの遊具そっちのけで、砂場ばっかりで。理由を訊いてみたら、『なんとなく』だそうです」


「逆にアメリは、それこそなんとなくわかりますね。あの子、運動より知的好奇心を刺激されるのが好きみたいで。いつも、変なオブジェ作ってますでしょう?」


 ふふと笑うと、近井さんも「ユニークなセンスを持った子ですよね」と微笑む。


 そんな会話をしていると、水をくみ終わったアメリがともちゃんと共同作業で、言ったそばからへんてこなオブジェを作っていく。


「あ、そうだ。近井さん、映画お詳しいですよね?」


「ええ、まあそれなりには」


「近々、駅前の映画館でアメリと何か観たいなーって思うんですけど、おすすめとかないですか?」


 そう尋ねると、「うーん」と考え込んでしまう彼女。


「女の子向けですと、『リリピュア』なんかが鉄板ですけど、いかがでしょう?」


 たしか、もう十五年ぐらい放映している、女児向け長寿アニメだ。


「あー、すみません。アメリ、それ見てないんですよ。あの子、アニメは『スポンジ・トム』ぐらいしか見なくて」


 せっかくアドバイスをいただいたのにと、恐縮して後頭部を撫でる。


 アメリのある種偏った好みを知り、再び考え込んでしまう近井さん。私もスポンジ・トムの映画が上映されるとかいう話は聞かないから、攻めあぐねているのだろう。


「あ、そうだ」


「はい」


 ピンと来たらしい彼女。


「ミケちゃんの保護者の方も、映画お詳しいんですよね? 彼女に尋ねてみるのはいかがでしょう?」


「あ、あはは……。その、彼女の映画趣味、ひっじょーに特殊でして……」


 優輝さんにおすすめを尋ねたら、何を紹介されるかわかったものではない。


 さらに唸って、考え込んでしまう近井さん。なんだか、無理難題を押し付けているようで恐縮デス……。


「ええと、前提を覆して恐縮なのですけど」


「はい」


「映画館はやめにして、それこそ、スポンジ・トムのBDなんかを借りて、見せてあげるのはいかがでしょう?」


 目からウロコ。その発想はなかった! パラダイム・シフト!


 思えば、大スクリーンで見たいというのは私の願望で、アメリが言い出したことではないのだ。


「そうですね! いえ、もともと映画館でっていうのが私の発想だったんです。どうせなら、何か大画面・大音響で観せてあげたいなって。でも、アメリの好みが最優先ですものね!」


 思わず手を取り、ぶんぶん振ってしまう。


「あ、はい。お役に立てたようで良かったです」


「……あ! すみません、つい興奮して」


 慌てて手を離す。


「おねーちゃん、見て見てー」


 ちょっと変な空気になってる間に、アメリたちが謎オブジェクトを完成させていました。


「それはなーに?」


「しょこらん! おうどん屋さんなの!」


 名前に「しょこら」とか入ってるのに、チョコ要素一切ないとか、さすがアメリちゃんセンス。というか、うどん屋ってチョイスが渋いね……。


「そっかー。良くできてるねー! きっと、美味しいおうどん打つんだろうねー」


 頭を撫でると、「うにゅう」と気抜け声を上げる。子供は褒めて伸ばーす!


「ともも頑張ったのー」


 ともちゃんも共同作業の頑張りをアピールするので、近井さんが「すごいよー」と、頭を撫でる。嬉しそうに微笑むともちゃん。


 私も、ともちゃんに「頑張ったねー」と、ねぎらいの言葉をかける。


 こうして、映画問題も解決し、アメリとともちゃんはお昼まで砂遊びを満喫したのでした。


 せっかく最後の晴れだ。帰ったら、ベッドのマットと掛け布団でも干そうかな!

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