神奈さんとアメリちゃん

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第四百六話 意外な(?)来客 ―前編―

公開日時: 2021年11月12日(金) 21:01
文字数:2,538

 朝、ニュースやLIZEのチェックを一通り終え、お仕事に励んでいると、スマホに着信が。


 はて、どなたでしょう? と送信者を見ると、近井さん。


「おはようございます。どうされました?」


「おはようございます。いえ、今日も友美がアメリちゃんと遊びたいと言うのですけど、この雨でしょう? 呼びつけるのも失礼ですし、お邪魔してもよろしいものかと」


「あー、なるほど。以前のように、仕事しながらでよろしければ一向に構いませんよ」


 む。この線、ちょっと直そう。いやー、デジタルってほんと修正が楽。


 あ、そうそう。来月号の原稿はとっくに下書きを終え、ペン入れの段階になっています。


「では、お邪魔させていただきますね。何時がよろしいでしょう? お菓子持っていきますので、そちらはお構いなく」


「ありがとうございます。そうですねえ。今、九時か……。十時とかいかがです? お昼、振る舞いますよ」


「え! そんな、悪いですよ!」


「いえいえ。今日はお手軽にスパゲッティーの予定ですし、二人分作るのも、四人分作るのも、そう手間は変わりませんから。それに、みんなで食べたほうが美味しいじゃないですか」


 なんだか、優輝さんみたいなこと言ってるね、私。


「うーん、そこまでおっしゃるのでしたら。すみません、ごちそうになります」


「いえいえ。恐縮なさらないでください。私も、お菓子いただきますし。では、お待ちしてます」


 互いに失礼しますと言って、通話終了。本当に、ミケちゃんたちが習い事でいない土日に、近井さんの存在は助かる。ノーラちゃんは本日、白部さんが付き添って、例の体育館でエアロバイクを使って脚を鍛えるそうで。


 ご一緒したいのはやまやまだけど、ちょっと最近仕事サボり過ぎちゃったからね。


「アメリちゃーん。今日は、近井さんとともちゃんが、十時にいらっしゃるよ~。お昼も一緒に食べましょうって誘ったよ」


 座椅子で読書に励んでいた愛娘に声をかける。


「おお! ともちゃんと会える!」


 本からガバっと顔を上げ、キラキラ瞳。良きかな良きかな



 ◆ ◆ ◆



 予定の時刻に、インタホンの呼び鈴が。


 すでに、着替えと片付けは済ませてあるので応対すると、果たして近井さん親子でした。


 アメリと一緒にお出迎え。


 近井さんは花柄白基調の傘、ともちゃんはアメリとおそろいのケイティちゃん傘。


「こんにちは~。あらー、アメリとおそろいだねえ」


「こんにちは! ほんとだー! アメリちゃんとおんなじ!」


 嬉しそうに、傘のをくるりと回すともちゃん。


「ともちゃん、おかーさんこんにちはー! おそろい、おそろい!」


 手を差し伸べ、二人で握手。ほほえま~。


 近井さんからも、昼のご挨拶をいただく。


「では、雨中の立ち話もなんですし、中へどうぞー」


「お邪魔します。友美も」


「お邪魔します!」


 というわけで、二人を中に招き入れたのでした。


「こちら、お菓子です」


「ご丁寧にありがとうございます」


「いえいえ。こちらこそ、今日はごちそうになってしまいまして」


 屋内に上がると、互いにお辞儀。ビニール袋を受け取る。


「じゃあアメリ、私はお茶菓子の用意するから、お二人を寝室にお通ししてくれる?」


「はーい! こっちだよー!」


 奥に向かう三人を見送る。そいじゃ、お茶とお菓子の用意をしましょっと。



 ◆ ◆ ◆



 雑談に花を咲かせる、三人と私。ほんとに、喋りながら色々できるって我ながら器用だわ。


 話題は、勉強やピュアランドや映画のことなど。さすが近井さん、映画の趣味が健全で助かるわ……。


 彼女が主に観ているのは、ご自身の趣味としては、恋愛ものやヒューマンドラマもの。ともちゃんと一緒に見るのは、ディスティニーのアニメが多いそうで。


 ディスティニーというのは、世界的に有名なアメリカのアニメ及び実写映画のスタジオ。浦安に「ディスティニーランド」という超有名テーマパークもあったりします。


「おお~! それも面白そうだね!」


 アメリちゃん、ディスティニーのアニメにも興味を示してくれたようです。今度、「スポンジ・トム」と一緒に借りてこようかしら?


 そんな感じでほのぼの過ごしていると、スマホに着信が。このコール音は私のものだ。送信者を見ると、主は優輝さん。


「ちょっと、席を外しますね」


 三人の会話の邪魔になってはいけないので、リビングへ。


「もしもし、こんにちは」


「こんにちはー。今、いいですか?」


「はい。来客中ですので、短いお話でしたら。今、リビングに出てるんです」


「来客中ですか? いや、困ったな」


 はて、それほど長話をされたかったのかしら?


「いえね。あたしの仕事がしばらくないもんで、家事を引き受けようと、分担表の予定組もうと思ってたんですよ」


「はい」


 んん? これと来客中だと困るというのが、どうつながるのだろう?


「そしたら由香里、だいぶストレス溜め込んでるんですかね。『わたしにやらせて!』って、料理から洗濯、掃除まで、自分でやりたがっちゃって」


 なんとまあ、料理のみならず、家事全般がストレス発散法とは。どこまで完璧超人なのかしら……。


「で、ミケが一人で習い事行ってるのもあって、やることなくなっちゃって。読書に励むとかでもいいんですけど、神奈さんお忙しいのに、色々イベントに誘ってしまったでしょう? 何か、お手伝いできないかなーって思ったんです」


 ははー、なるほど。


「ちなみに、来客というのは担当さんですか?」


「いえ。近井さんと、ともちゃんです」


 「ああー」と、納得の声が上がる。


「あたしも、近井さんたちとは一度しっかりご挨拶したいですね。それも込みで、いかがでしょう?」


 うーん、そう言われると、断るのも申し訳ない気がするな。


「近井さんに、是非を尋ねてみようと思いますが」


「はい、よろしくお願いします」


 というわけで、保留状態にして、かくかくしかじかと近井さんにお尋ねする。


「あの、映画好きの方ですよね! ぜひ、お願いします!」


「わかりました。OKの旨、伝えてきますね」


 リビングに戻り、保留を解除。


「ご許可をいただきました。いついらっしゃいます?」


「今すぐ……とかダメですか?」


 あー、暇だっておっしゃてたものね。


「構いませんよ。お待ちしてます」


 互いに失礼しますと交わし合い、通話終了。


 生と負……負っていったら優輝さんに失礼か。ある種、真逆の嗜好を持つ映画好き同士の邂逅、どうなりますことやら。

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