神奈さんとアメリちゃん

退会したユーザー ?
退会したユーザー

第四百八十三話 白部先生のおしごと

公開日時: 2022年2月1日(火) 21:01
文字数:2,617

「へー、すげー! マジで天才なんだなー」


 今日は、ノーラちゃんと白部さんがお勉強会に来ています。


 で、ノーラちゃんが感心している理由ですが、アメリが自分から、特別カリキュラムの話を彼女に切り出したのです。それも堂々と!


 ミケちゃんの叱咤激励が、すごく効いたんだね。私じゃ、アメリに対してあんなムーブできないから、そういうのもあるのか! という感じでした。


 私が、猫時代はともかく、人化してからアメリに強い言葉を言ったのって、最初の予防接種のときぐらいかしらね。


 幸い、アメリは逆に心配になるぐらい、わがまま言ったり癇癪を起こさない子だけど、ことによったら、強い言葉を使う必要もあるのかな。……なんか、いまいち状況が想像できない。そのとき考えよう。


「驚きましたね。131ですか」


「それって、やっぱりすごいんですよね?」


 例の手紙を白部さんにもお見せしたところ、目を白黒させています。


「はい。IQ130超えたら、天才だと思っていただければ」


 ひょえ~! やっぱりそうなんだー!


「グラフのほうは、どう見たらいいのでしょう?」


「すみません。こちらは、私にも詳しくは。CH研では、内科系、特に消化器が専門なものでして」


 あー、そうか。普通のお医者さんでも、科が別れてるものね。研究職だからって、なんでもわかるわけじゃないか。


「ということは、普段、門外漢のことも調べてらっしゃる感じですか?」


「そうですね。内科以外ですと、たとえば児童精神科医の先生なんかから、『これこれこういうことに、注視して欲しい』という指針をいただいて、そこを見ている感じです」


 へー。


「ご負担、大きいですね」


「はい、正直。とにかく可能な限り、見たことをそのまま記録して、上げている感じです。それを見て、各科の担当が分析するんです」


 ひえー。勉強教えながら、そういうこともやってたんだ! これは大恐縮。


「すみません。なんだか、そんな大変なお仕事をされているのに、勉強まで見ていただいて」


「いえいえ。むしろ、精神科や脳神経科の先生から大変感謝されていまして、ありがたい状況です」


 なんか、お辞儀されてしまいました。こちらもお辞儀をお返し。


「ルリ姉ー。分数~」


「あ、ごめんなさいね。えっとね。ブンレッツが五人に分かれるでしょ? で……」


 ノーラちゃんにせっつかれ、授業に戻る白部さん。


「おねーちゃん、アメリもー」


「はいな。えーとですね。0.3に0.7を掛けるとね……」


 こちらも、授業再開。


 特別カリキュラムにGOサインが出た……正確には、私たちの承認待ちだけれども、受けることはほぼ決めていると、CH研にはお伝えしてある。


 なので、そちらの専門チームに、アメリの勉強のことは引き継がれることになり、白部さんはノーラちゃんに集中している状態です。二面指導、大変だからね。


 ちなみに、今こうして私がアメリに教えている様子自体は、白部さん、モニタリングしているそうで。


 それぞれ別個に、授業に打ち込む私たち。


 ……ふう、疲れたな。


「白部さん、少し休憩にしませんか?」


「ノーラちゃん、どう?」


「そーだな、ちょっと休みてえ!」


 うーんと、伸びをするノーラちゃん。


「じゃあ、新しいリンゴとお茶、持ってきますね」


「ありがとうございます」


「「ありがとー!」」


 お礼を受けて、空のティーカップとお皿をトレイに載せて、キッチンへ。


 今日のお茶請けは、白部姉妹がお客さんということで、シンプルにウサちゃんリンゴをお出ししています。ノーラちゃんも、結構リンゴ好きだからね。


 しゃりしゃりと皮むきして、カットして、ウサちゃん耳を……。かんせーい!


 紅茶も、ちょうどいい感じかな。


 トレイに載せ、寝室へと戻るのでした。


「お待たせしました」


 再度三人からお礼を言われ、配膳。着席し、授業を再開する。


「ああ……ほんと、なんでリンゴって、こんなに美味しいんでしょうね……」


 うっとりする白部さん。ノーラちゃんも、おなじみ「うめー」シャウト。


「喜んでいただけて、嬉しいです」


 互いに、微笑み合う。


「そういえば、アメリちゃんはエスカルゴ好きなんですよね」


「そうですね。シャンデリアイタリアンファミレス行ったら必ず食べてますね。やはり、好物のデータなんかも、CH研にご報告を?」


「はい、させていただいてます。大から小まで、可能な限り、猫耳人間のデータを送るのが私の仕事ですので」


 やっぱり、大変だなあ。四人の一挙手一投足を観察なさってるようなのもで、私にはとても務まりそうもない。


「あ、そうだ! 白部さん、実は……」


 順調にいけば、「あめりにっき」は、今のアメリを描いた、「新・あめりにっき」になるかもしれないことを伝える。


「……なので、今すぐでなくていいのですけど、報告書がどんなものなのか、一度拝見したいのですけど、いかがでしょう?」


「うーん……守秘義務がありますからね……。アメリちゃんに関する部分だけで良ければ、必要なときお見せできますが」


「はい! それでもう、十二分にありがたいです!」


 お仕事に必要というのもあるけれど、わが子のことが、どんな風に書かれているのかという、純粋な興味もある。


「あと……アメリちゃんの欠点についても書いたりしていますけど、お気を悪くなさらないでくださいね」


「欠点、ですか?」


「はい。本人の前なので、ここでは内容は伏せますが」


 アメリの欠点かあ~……。まあ、心当たりがなくもない。すぐに、マナーモードになっちゃうとことか。


「おお~……アメリ、ダメな子?」


 しょんぼりする当人。


「ううん、ダメじゃないよ。誰でも、苦手なことってあるからね」


 しょんぼりアメリちゃんの頭を撫で、慰める白部さん。


「そうそう。私なんて、欠点だらけよ? 朝弱いし、計画性はないし……」


 アメリを励ますためとはいえ、自分で言ってて情けなくなるな……。


「私も、猫耳人間と接してると、我を忘れそうになることが多々あってね」


 なんだか、自虐大会が始まってしまいました。


「そうだ、今度はアップルパイでも焼きましょうか」


 空気が変な方向に流れてしまったので、切り替えを試みる。


「よろしいんですか?」


「はい。今月は割と余裕があるほうなので」


「わあ。嬉しいです~」


 瞳をキラキラさせる、白部さん。良きかな良きかな


 お盆進行だけど、なんとかなるでしょ。……こんなだから、計画性がないんだな、私は。


 それにしても、ドクター白部の、お仕事の一環を知れたのは有意義だな。あとでもうちょっと、差し支えないレベルで、お仕事について取材してみようっと。

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート