神奈さんとアメリちゃん

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第四百三話 スポーツの……夏? ―後編―

公開日時: 2021年11月9日(火) 21:01
更新日時: 2021年11月10日(水) 19:26
文字数:2,872

「さあ! 始めましょうか!」


 無駄に元気なワタクシ、更衣室で着替え終わった後、コート横で気合満々のドンと来いモード!


「だな! じゃー、ストレッチ開始~」


 あらら、そこからですか。まあ、当たり前といえば当たり前だけど。


 久美さんの指導のもと、黙々と体をほぐす一同。意外なのが、ミケちゃんやノーラちゃんが「早くやりたーい」と愚痴をこぼさないこと。


 二人とも、本格的にスポーツとダンスに打ち込むようになったから、こういうのが大事だって理解してるんだな。よその子たちも、順調に成長してるんだなあ……。ちょっと感動。


 しかし……最近ダンスとかボクササイズばかりだったから忘れてたけど、地味に体力削れまくるわ、これ。息切れしてきた。


「よーし、終わりー。じゃー、ルール説明すんぞー、ちびっこたちー」


 ストレッチが終わると、レクチャーが始まりました。今のうちに息を整える。いやー、今からこの調子で、二時間もバドミントンできるのかしら、私。


「二人は、ルール説明いらんよね? 念のために訊くけど」


「あ? はい! 一応、軽くルールは知ってます」


 白部さんも、ご同様の様子。


「りょーかい。じゃー、四人にルール教えてる間、休んでて。すでに、肩で息してるからね」


 苦笑する久美さん。横を見れば、白部さんもすでにへばっている。「お互い、体力ないですね」という思いを込めて、顔を見合わせ力なく微笑む。


「ちょっと、スポドリ買ってきますー。アメリも飲む?」


「うーん、まだいいや!」


「アメ子、脱水には気をつけてな。まあ、白部サンがいるから大丈夫かな。つーわけで、いってら」


 「行ってきます」と、一度更衣室に戻り小銭を取り出し、体育館エリア玄関口の自販機でスポドリを買う。ごっくごっく……くはー! 生き返るぅ!


 残りは適宜飲みましょ。


「戻りました」


「おかえりー。じゃ、ルールも説明したし、やっていこうか。ただ、ラケットが二本しかないからね。とにかく一点とったら両者交代って形で」


 「はーい」とお返事。で、誰からやるかという話で、まずはお手本として久美さん。対戦相手には、ノーラちゃんが立候補しました。


 サーブは久美さん。スパン! といういい音ともに、シャトルがネットを越えて飛んでいく。彼女ならもっと速いの打てそうだけど、手加減してるんだろうね。勝つことじゃなく、みんなで楽しむことが目的だし。


 ノーラちゃん、見事にレシーブ! 初めてなのに見事な反応! やっぱ、スポーツそのものに素質があるんだなー。みんなで拍手。


 両者のラリーはしばらく続いたけど、惜しくもノーラちゃんが取り落し、メンバー交代。


 二番手、私とアメリ。


「おお~! おねーちゃんが相手だー!」


 めらめらと燃えるアメリちゃん。いやん。おねーさん、ガチ勢じゃないのよ?


 ともかくも、サーブ! ……すかっ! 固まる一同。


「えーと……今のはノーカンでいいですか?」


「あ、ああー……うん、さすがにな。もう一戦どうぞ」


 久美さんからご許可をいただく。とほほ、恥ずかしい。


 今度は上手く飛ばすことができ、アメリがレシーブ! おお、さすが我が子!


 でも、肝心の私が盛大にレシーブ空振り! さすがにこれはメンバー交代ということで、白部さんとクロちゃんにタッチ。


 体育座りになり、両手で顔を覆う。うう~……恥ずかしい!


「おねーちゃん、どんまい!」


 ありがとう、アメリちゃん。でも、今はその優しさが辛いわ。


 パチパチと拍手が聞こえる。顔を上げると、勝負が決したらしい。シャトルがクロちゃん側に落ちてるから、白部さんの勝ちか。


 人数が奇数なので、今度は久美さんとミケちゃんの対決。


「久美! 手加減なんてしたらショーチしないからね!」


 ラケットを突きつけるミケちゃんと、「困ったな」という風に後頭部を撫でる久美さん。ミケちゃんああ言ってるけど、実際手加減なしでやったら、悔しくて泣くかもしれない。


「ほっ!」


 ノーラちゃんに決めたのよりは速いサーブを打ちこむ。ギリギリ手加減とわからない、見事なレベルだ。多分。


 ミケちゃん、これをレシーブ! 拍手が上がる。


 久美さんの絶妙な手加減が加えられたラリーが続いたけど、ミケちゃんレシーブ失敗! ラケットを握りしめて、「くぅぅ~!」と悔しさ全開の声を上げる。やっぱり、少し手加減して正解でしたね。


「次は負けないんだからね!」


 ラケットを突きつけるミケちゃんに、「おう、リベンジ待ってるぜ」と悪役ヒールっぽく笑顔で返す我らが指導者。本当に、面倒見がいいなあ。


 こんな感じでゲームはメンバーを入れ替えながら進んでいき、気づけばもうすぐお時間に。


「へとへとです~」


 肩で息しながら、スポドリの残りをごくごく。


「私もです」


 白部さんも、買ってきたスポドリを飲みながら、へばりモード。


「ボクもです……」


 クロちゃんも、お小遣いなのか、まりあさんが今日のために渡したかのお金でスポドリを買い、勢いよく飲んでいる。


 ほかのみんなも、交代制とはいえ二時間近い運動をしたので、スポドリ片手に休息モード。


「やっぱ、運動って楽しーなー!」


 ノーラちゃんが、肩で息しながらも、いい笑顔を浮かべる。ほんとに、スポーツが好きなんだなー。


「スポーツっていいよな! また今度やろうぜ!」


 スポドリの飲み口を離し、彼女にサムズアップする久美さん。


「息を整えたら、シャワー浴びて着替えよう」


「ですね」


 というわけで、着替えて体育館を後にするのでした。


 食事は、せっかくなので生涯学習センター内にあるレストランで、いただくことに。


 かなり激しい運動をしたので、アメリと一緒にガッツリとカツカレーを注文。


 久美さんは、ハンバーグ&エビフライ定食というボリューミーなものを注文したようです。ほんとに、よくその体に入りますよね……。


 逆に、白部さんとクロちゃんは、疲れすぎて食欲不振なようで、きつね蕎麦を注文。クロちゃん、ちゃんと食事代用意してもらってたのね。ミケちゃんはエビカツ定食。さすが、エビ大好きガール。


 ランチタイムサービスにつき、みんなコーヒーかオレンジジュース付き。基本的に、大人はコーヒー、子供はジュースを頼みました。


 出来上がった順に受け取り、いただきますを言って食べていく。


 私のも来たので、いただきます。


 うん、うん! カツカレー考えた人って天才よね! トンカツとカレーがこんなに合うなんて……! ああ、美味しい。カロリーお化けだけど、運動しまくったからヨシ!


 こうして各自美味しく食事を終え、帰宅の段に。


 久美さん、ミケちゃん、クロちゃんがバス組だけど、三十分に一本しか来ないので、雨中待つのも辛いでしょうということで、私と白部さんで手分けして送っていくことに。


 クロちゃんは、まりあさんの影響か、もともとの慎み深さ故か遠慮してたけど、「子供が遠慮しないの」と説得し、送っていきました。


 まりあさん、「ご迷惑をおかけしました」と恐縮されてたけど、「いえいえ、全くそんなことないです」と応え、互いにお辞儀。お礼に、おせんべいをいただいてしまいました。


 かえって、こっちが恐縮してしまうなあ。でも、ご厚意を無下にするのも良くないよね。


 しっかし、疲れたー! 洗濯したら、少し仮眠しよ。

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