「さあ! 始めましょうか!」
無駄に元気なワタクシ、更衣室で着替え終わった後、コート横で気合満々のドンと来いモード!
「だな! じゃー、ストレッチ開始~」
あらら、そこからですか。まあ、当たり前といえば当たり前だけど。
久美さんの指導の下、黙々と体をほぐす一同。意外なのが、ミケちゃんやノーラちゃんが「早くやりたーい」と愚痴をこぼさないこと。
二人とも、本格的にスポーツとダンスに打ち込むようになったから、こういうのが大事だって理解してるんだな。よその子たちも、順調に成長してるんだなあ……。ちょっと感動。
しかし……最近ダンスとかボクササイズばかりだったから忘れてたけど、地味に体力削れまくるわ、これ。息切れしてきた。
「よーし、終わりー。じゃー、ルール説明すんぞー、ちびっこたちー」
ストレッチが終わると、レクチャーが始まりました。今のうちに息を整える。いやー、今からこの調子で、二時間もバドミントンできるのかしら、私。
「二人は、ルール説明いらんよね? 念のために訊くけど」
「あ? はい! 一応、軽くルールは知ってます」
白部さんも、ご同様の様子。
「りょーかい。じゃー、四人にルール教えてる間、休んでて。すでに、肩で息してるからね」
苦笑する久美さん。横を見れば、白部さんもすでにへばっている。「お互い、体力ないですね」という思いを込めて、顔を見合わせ力なく微笑む。
「ちょっと、スポドリ買ってきますー。アメリも飲む?」
「うーん、まだいいや!」
「アメ子、脱水には気をつけてな。まあ、白部サンがいるから大丈夫かな。つーわけで、いってら」
「行ってきます」と、一度更衣室に戻り小銭を取り出し、体育館エリア玄関口の自販機でスポドリを買う。ごっくごっく……くはー! 生き返るぅ!
残りは適宜飲みましょ。
「戻りました」
「おかえりー。じゃ、ルールも説明したし、やっていこうか。ただ、ラケットが二本しかないからね。とにかく一点とったら両者交代って形で」
「はーい」とお返事。で、誰からやるかという話で、まずはお手本として久美さん。対戦相手には、ノーラちゃんが立候補しました。
サーブは久美さん。スパン! といういい音ともに、シャトルがネットを越えて飛んでいく。彼女ならもっと速いの打てそうだけど、手加減してるんだろうね。勝つことじゃなく、みんなで楽しむことが目的だし。
ノーラちゃん、見事にレシーブ! 初めてなのに見事な反応! やっぱ、スポーツそのものに素質があるんだなー。みんなで拍手。
両者のラリーはしばらく続いたけど、惜しくもノーラちゃんが取り落し、メンバー交代。
二番手、私とアメリ。
「おお~! おねーちゃんが相手だー!」
めらめらと燃えるアメリちゃん。いやん。おねーさん、ガチ勢じゃないのよ?
ともかくも、サーブ! ……すかっ! 固まる一同。
「えーと……今のはノーカンでいいですか?」
「あ、ああー……うん、さすがにな。もう一戦どうぞ」
久美さんからご許可をいただく。とほほ、恥ずかしい。
今度は上手く飛ばすことができ、アメリがレシーブ! おお、さすが我が子!
でも、肝心の私が盛大にレシーブ空振り! さすがにこれはメンバー交代ということで、白部さんとクロちゃんにタッチ。
体育座りになり、両手で顔を覆う。うう~……恥ずかしい!
「おねーちゃん、どんまい!」
ありがとう、アメリちゃん。でも、今はその優しさが辛いわ。
パチパチと拍手が聞こえる。顔を上げると、勝負が決したらしい。シャトルがクロちゃん側に落ちてるから、白部さんの勝ちか。
人数が奇数なので、今度は久美さんとミケちゃんの対決。
「久美! 手加減なんてしたらショーチしないからね!」
ラケットを突きつけるミケちゃんと、「困ったな」という風に後頭部を撫でる久美さん。ミケちゃんああ言ってるけど、実際手加減なしでやったら、悔しくて泣くかもしれない。
「ほっ!」
ノーラちゃんに決めたのよりは速いサーブを打ちこむ。ギリギリ手加減とわからない、見事なレベルだ。多分。
ミケちゃん、これをレシーブ! 拍手が上がる。
久美さんの絶妙な手加減が加えられたラリーが続いたけど、ミケちゃんレシーブ失敗! ラケットを握りしめて、「くぅぅ~!」と悔しさ全開の声を上げる。やっぱり、少し手加減して正解でしたね。
「次は負けないんだからね!」
ラケットを突きつけるミケちゃんに、「おう、リベンジ待ってるぜ」と悪役っぽく笑顔で返す我らが指導者。本当に、面倒見がいいなあ。
こんな感じでゲームはメンバーを入れ替えながら進んでいき、気づけばもうすぐお時間に。
「へとへとです~」
肩で息しながら、スポドリの残りをごくごく。
「私もです」
白部さんも、買ってきたスポドリを飲みながら、へばりモード。
「ボクもです……」
クロちゃんも、お小遣いなのか、まりあさんが今日のために渡したかのお金でスポドリを買い、勢いよく飲んでいる。
ほかのみんなも、交代制とはいえ二時間近い運動をしたので、スポドリ片手に休息モード。
「やっぱ、運動って楽しーなー!」
ノーラちゃんが、肩で息しながらも、いい笑顔を浮かべる。ほんとに、スポーツが好きなんだなー。
「スポーツっていいよな! また今度やろうぜ!」
スポドリの飲み口を離し、彼女にサムズアップする久美さん。
「息を整えたら、シャワー浴びて着替えよう」
「ですね」
というわけで、着替えて体育館を後にするのでした。
食事は、せっかくなので生涯学習センター内にあるレストランで、いただくことに。
かなり激しい運動をしたので、アメリと一緒にガッツリとカツカレーを注文。
久美さんは、ハンバーグ&エビフライ定食というボリューミーなものを注文したようです。ほんとに、よくその体に入りますよね……。
逆に、白部さんとクロちゃんは、疲れすぎて食欲不振なようで、きつね蕎麦を注文。クロちゃん、ちゃんと食事代用意してもらってたのね。ミケちゃんはエビカツ定食。さすが、エビ大好きガール。
ランチタイムサービスにつき、みんなコーヒーかオレンジジュース付き。基本的に、大人はコーヒー、子供はジュースを頼みました。
出来上がった順に受け取り、いただきますを言って食べていく。
私のも来たので、いただきます。
うん、うん! カツカレー考えた人って天才よね! トンカツとカレーがこんなに合うなんて……! ああ、美味しい。カロリーお化けだけど、運動しまくったからヨシ!
こうして各自美味しく食事を終え、帰宅の段に。
久美さん、ミケちゃん、クロちゃんがバス組だけど、三十分に一本しか来ないので、雨中待つのも辛いでしょうということで、私と白部さんで手分けして送っていくことに。
クロちゃんは、まりあさんの影響か、もともとの慎み深さ故か遠慮してたけど、「子供が遠慮しないの」と説得し、送っていきました。
まりあさん、「ご迷惑をおかけしました」と恐縮されてたけど、「いえいえ、全くそんなことないです」と応え、互いにお辞儀。お礼に、おせんべいをいただいてしまいました。
かえって、こっちが恐縮してしまうなあ。でも、ご厚意を無下にするのも良くないよね。
しっかし、疲れたー! 洗濯したら、少し仮眠しよ。
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