朝九時ちょっと前。アメリちゃんを膝に乗せていちゃついてると、はたと重要なことに気づきました。ミケちゃんのお誕生日が十日後に迫っているのです。
ミケちゃんが愛してやまない存在といえば、千多ちゃん。ただ、彼女のことだから熱心にグッズ集めてるだろうし、カブるといけない。ふむ、ここはご本人にリクエストを尋ねてみましょう。
優輝さんにコール。
「おはようございます」
「おはようございます。ミケちゃん、今出られますか?」
「ミケですか? 一階にいるはず……ちょっと待ってくださいね。おっと、イヤホン」
しばし間があって、「もしもし?」とミケちゃんの声が聞こえてくる。
「あ、ミケちゃんおはよう~。もうすぐお誕生日よね? 欲しい物ってある?」
「それはもう、千多ちゃんのグッズよ! あ、おはよー」
慌てて挨拶を付け加える彼女。
「うん、そうじゃないかなって思ったんだけど、ほら、もう持ってるグッズを贈ってもあれでしょう?」
「あー、なるほど。そうね……等身大パネルとか欲しいけど」
等身大パネル!?
「い、いや~……それはちょっと無理かな。他に何かない?」
「んー……あ!! あのね、十九日に千多ちゃんの写真集が出るの! それ欲しい!!」
こないだも写真集買ってなかったっけ? さすが人気アイドル、ハイペースでグッズが出るのねえ。
「りょーかい。タイトルわかる?」
「えっとねー……」
タイトルを教わり、メモ。ふむ、「麗文堂」さんは電話で予約できるんだったな。たしか九時半開店だから、もうすぐだ。
「じゃあ、楽しみに待っててね」
「うん!」
明らかに上機嫌な声で通話を終えるミケちゃん。
さて。話終わったら九時半になってましたよ。予約、予約っと……。麗文堂さんに電話をかけ、件の写真集を予約する。これでヨシ!
おっと。半といえば、真留さんから返事が来てるかもしれない。LIZEちぇーっく!
お、来てます来てます!
よーし、ネーム一発通過! 下書きに入りますよ~!
「アメリちゃん。名残り惜しいですが、おねーさんはお仕事をしなければなりません。なので、一人で遊んでてくれるかな?」
「はーい」
とてとてと、指定席に向かうお嬢様。そんじゃー、お仕事頑張りますかー!
◆ ◆ ◆
「えびぞうくん! たからのちずをてにいれたよ!」
突然何の話かとアメリのほうを見れば、ぬいぐるみ遊びを始めた模様。右手にえびぞう、左手にはこぺんを持ってるから、はこぺんのセリフかしらね。
しかし、また宝探しネタか~。今回はどんな大冒険になりますやら。
「すごいじゃないか! よし、みんなでふねにのってしゅっぱつだ!」
おお、今回は大海原を大冒険ですか。「大航海世代」の影響かしらね。
「さあ、まずはチーズをかうぞ!」
初手、やっぱり食べ物購入から入るアメリちゃん。ともかくも、海産物探検隊は無事港を出発したようです。
「ああ! いるかたろうさーん! かにざえもんさーん!」
悲痛 (?)な叫びに何ごとかとそちらを見れば、いるかたろうとかにざえもんが折りたたみ机から転げ落ちていました。海産物ファミリーもずいぶん多くなったからねー。机に載せきるのも一苦労よね。
「だいじょうぶ! ぼくたちはおよいでいくよ!」
さすが海産物。しかし、帆船に泳いでついていくのかー。たくましいな。でも、カニって泳げたっけ?
「みろ! えれべすとについたぞ!」
出たわね、名所えれべすと。ていうか、海からいきなり着いたの!? すごい立地ね。
「おれさま、もちょらん! はらへった! なにかよこせ」
そして、こっちも出たわね、えれべすと在住謎生物・もちょらん。
「よし、チーズをあげよう」
「たすかる。かわりにソーセージをもっていけ」
いやいや、もちょらん! お腹空いたなら、そのソーセージ食べればよかったじゃない!
ていうか、もちょらん危険生物じゃなかったっけ? 随分フレンドリーになったわね。
「ついたぞ! りす……? リスボンだ!」
よく言えました! って、ポルトガルに戻ってきちゃったじゃない。
「よし、ソーセージをうって、またチーズをかうぞ!」
交易成功したのはいいけれど……。旅の目的忘れてない?
「ついたぞ! ブラジルだ!」
はやっ! コロンブス涙目。
「おお、ここがおうごんのみやこ、える……? えるなんとかか!」
うろ覚えアメリちゃん。エルドラドかしらね。大航海世代でも発見イベントがあったっけ。でも、たしかあそこアンデスよね? ブラジルからめっちゃ遠くない?
「よくきたな、たんけんかたちよ。わしは、ゆんどー」
えーっと、たしかアメリカに住んでてお寿司屋さんしてるんだっけ? って、ゆんどーって北米じゃなくて南米のほうに住んでたの!? 今明かされる、衝撃の事実!
どうでもいいけど、数が多すぎて出番のない海産物がいるわね。しまだくんとか、そめごろうとか。
「わしのしゅつだいする、もんだいをとくがよい。とければたからをあたえる。とけなければおすしにする」
ひょお! 海産物ズ、最大のピンチ!
「よんぶんのさん、たす、ごぶんのろくは?」
「むむむ! なんてなんもんだ!」
出ました、算数くいーず!
「そめごろうさん、つうぶんをつかうのよ!」
そめごろう、満を持して登場。しまだくんの出番は残ってるのかしら?
「……そうか! こたえは、にじゅうぶんの、さんじゅうきゅうだ!」
思わず、「おー!」と拍手。暗算しちゃうのはすごいわね! 「えへへ」と嬉し照れくさそうなアメリちゃん。
さあ、お宝の正体やいかに!?
「みごとだ。たからをさずけよう。じぶんのむねにてをあてるがよい。たびのおもいで、それこそがたからなのだ」
おー、いい話にまとまった! なんか、思い出としてはあっという間にえれべすと行って、リスボンに帰って、ブラジル……アンデス? に行っただけだけど。あと、この子たち手ないよね? 無粋なツッコミだけど。
「すばらしいたびだった! さあ、みんなかえろう!」
かくして、海産物たちは帰っていくのでした。……しまだくん、結局最後まで出番なかったわね。ふぐたくんたちお風呂組もだけど。
うーん、ツッコミ入れながら描いてたら、随分筆が進んだわー。伸び~!
もう十一時か。お買い物でも行きましょうかねー。
今日は、何にしようかしら?
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