神奈さんとアメリちゃん

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第四百三十七話 真留さんでグダグダ!? ―前編―

公開日時: 2021年12月17日(金) 21:01
更新日時: 2021年12月18日(土) 02:46
文字数:2,056

「アメリちゃ~ん。ちょっと原稿描きにくいから、手を離してくれるかな~? それに、もうすぐみんな来ちゃうよー?」


 月曜日。お昼ごはんを食べ終わると、妖怪・子泣きアメリと化した我が娘が、仕事中の私にずーっとおぶさっています。


「むしろ、みんなが来るまで甘えてるのー」


 あらあら、今日はどうしちゃったのかしら。一段と甘えんぼさんね。積極的にスキンシップしてくれるのは嬉しいけど、仕事できないのは困るな。


 仕方ない。アメリが満足するまで、甘えさせてあげますか。アメリの左二の腕を、右手でとんとん叩く。


「アメリちゃんは可愛いですねー」


「えへへ~」


 しかし、そんな親子のふれあいタイムは長くは続かなかったのです。ほどなくして、呼び鈴がピンポン。


「おお~。来ちゃった……」


「また後でね」


 名残り惜しそうなアメリの二の腕を、再度二回だけポンポンと叩き、インタホンへ。白部さんだったので、アメリと一緒に迎えに出る。


「こんにちは~」


 互いに挨拶を交わす。


「あ、そうだ!」


 愛娘がダッシュで室内に戻り、ダッシュでまた門まで戻ってくる。


「見て、スマホ!」


 ケイティちゃん傘の下で、薄紫のスマホを、紋所のように掲げるアメリ。


「あらー、可愛いの買ってもらったわねー」


「おー、ルリ姉が昨日言ってたやつだな! アタシも欲しーぞ!」


「今度、買いに行こうね」


 「おー!」と目をキラキラ輝かせるノーラちゃん。


「良かったねー、アメリ。可愛いって」


「うん!」


「では、立ち話もなんですので、中へどうぞ。」


 お茶を出し、「クロちゃんを迎えに行ってきます」とお断りして、出支度をする。


「それじゃあアメリ、ちょっとだけ白部さんとお留守番しててね。ミケちゃんが来たら、入れてあげて」


「はーい」


 というわけで、車を走らせ宇多野家へ。入り口脇に停車してクロちゃんに電話すると、ややあって彼女とまりあさんが出てきました。


「お手数かけます。こちら、粗末なものですが」


 箱入りのお菓子を渡される。感じからして和菓子かな。


「いえいえ、ご謙遜なさらないでください。ありがたくいただきます」


「よろしくお願いします」


 クロちゃんが乗り込んでくる。


「うん、ちゃんとシートベルトを締めてね。ではまりあさん、クロちゃんをお預かりします」


 互いに頭を下げ、発進。「さわきスーパー」さんの駐車場を利用させてもらって方向転換し、道を戻るのでした。



 ◆ ◆ ◆



「こんにちは。遅かったじゃない」


 家に戻ると、トイレから出てきたミケちゃんとばったり出くわす。


「こんにちは。クロちゃんちまで、結構距離あるからね」


 クロちゃんも、ミケちゃんとご挨拶。


「自転車が使えないと、億劫よね。せっかく、だいぶ前に補助輪が外れたのに」


「あら、すごいじゃない!」


 「まーね!」とドヤ顔で胸を反らす彼女。


「とりあえず、二人のお茶とお菓子も用意するから、向こうで待ってて」


 「はーい」と寝室に向かう二人。では、まりあさんからのいただきものを、開封しますかー。



 ◆ ◆ ◆



「お茶菓子、持ってきましたー」


 寝室のドアを開けると、みんなでアメリのスマホを見物してるところでした。


「これで、スマホ同盟もノーラを残すのみね!」


「早く欲しいぞー」


 子供たち、好きなように色々話してます。


「人気だね、アメリのスマホ」


 お茶菓子を配膳しながら微笑む。ちなみに、いただきものは栗まんじゅうでした。


「お姉ちゃん、和菓子にしてくれたんだ」


 ほっこりと、はにかむクロちゃん。相変わらず、誰が見ても可愛い。


 本当は鮎最中も出したいんだけど、あれは真留さんに、まるごと渡すつもりだからなー。


「はいはい、みんな。スマホはまた後でね。みんな揃ったところで、さっそく始めましょうか」


 白部先生の宣言で、授業開始。私もおまんじゅうの包み一個とお茶を手に、デスクに引き上げます。


「そういえば、ミケちゃん。あれから数日経ったけど、お勉強の歌のほうどう?」


 ふと気になったので、尋ねてみる。


「ジュンチョーみたいよ。あと少しで完成しそうだって」


「そっかー。良かったねえ」


 良きかな良きかな


 後はこれといって何事もなく、静かにお勉強とお仕事は進んでいきました。


 やがて、インタホンの呼び鈴が。PCの時計を見ると、ジャスト二時。間違いない、真留さんだ!


「すいません、うちの担当さんが来たみたいです。リビングで打ち合わせさせていただきますね」


「え! 漫画家の打ち合わせとか、見てみたい!」


「おー、アタシも見たいぞー」


 クロちゃんは言葉に出さねど、やはり興味津々だとしっぽが語っている。


「んー……ちょっと話し合っておいてください、白部さん。とりあえず、迎えに行きますので」


「はい」


 というわけで、門に迎えに行きます。


「先生、こんにちは」


 お辞儀する真留さん。今日もファンレターの紙袋を下げている。ちゃんと耐水性のビニールパッケージのものにして、入口を閉じているあたり、彼女らしい心遣いだ。


「こんにちは。ちょーっと寝室側が、今立て込んでますけど、どうかお気になさらず」


 お辞儀と奥歯に物が挟まったような言葉で返すと、怪訝けげんな顔をなさる。はてさて、どうなりますことやら……。

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