やってしまった……。どうして私はこう、猫耳幼女たちの可愛い姿、特にアメリを見ると我を忘れてしまうのか。
現在、自宅の仕事机で頭を抱え中。いつぞやのまりあさん、こんな気持ちだったのね。
あのあとしばらくして我に返り、まりあさんやかくてるの皆さんに平謝り。かくてるの皆さんは別に謝るようなことではないですよと仰るし、まりあさんなど以前の件があるからそれは親身に受け入れてくれたけれども。
前にまりあさんにあんなことを言った手前、あんまり落ち込むのもそれこそダブルスタンダードよね。
「おお~……? おねーちゃん大丈夫?」
アメリが心配して、小さな手で優しく頭を撫でてくれる。
「あー、心配させてごめんごめん」
椅子を九十度ひねり、彼女の頭を撫で返す。そうよね、私が落ち込んだら、アメリに心配をかけてしまう。子供に気を使わせるのは、良くない親のやることだ。
「よし!」
自分のほっぺを両手でぴしゃんと叩いて、気合を入れる。
こういうときは、なにか別のことをして気持ちを切り替えるに限る!
スマホを見れば、もう夕方五時。サンチョで色々買ったけれど、肝心のおかずになる生鮮食品がない。
「いつものスーパーに、お買い物行こうかアメリ!」
「おお~!」
二人で拳を突き上げ、意気軒昂。いざ本日二度目のお買い物タイム!
◆ ◆ ◆
というわけで、やって来ましたおなじみの店内へ!
サンチョの店内BGMも中毒性が高いんだけど、ここもやっぱりなかなかよね。
さて、まずはおなじみスマホチェーック!
今日のセールは豚肉と各種お野菜と卵ですって。う~ん、何にしよう。ポークチョップとか悪くないし、生姜焼きもいいなあ。でもこう、なにかあとちょっとパンチが足りない。
ふむ。ここは実物を見て、インスピレーションを得てみよう!
カートを押して精肉コーナーにとうちゃーく!
ロースの薄切りを筆頭に、バラブロックとか色々売ってるねー。
視線をうろうろさせていると、とある物が目に入る。
独特の網で包まれた、チャーシュー用の肩ロース肉だ。
「おお~? 変なお肉……」
初めて見る謎肉に、アメリが物珍しそうな声を上げる。
「気になりますか、アメリちゃん。じゃあ、今日はこれを使ったお料理にしましょう~」
主菜が決まれば、あとはもう流れ作業。
小分け型の冷凍ほうれん草、刻み白ネギ、もやし、メンマ、卵、そして中華そば! 今日の晩ごはんはラーメンでーす!
通常のお野菜も、何かとあると便利で長持ちなキャベツを一玉購入。これで百円は安いよねー。
パンは昨日買ったし、あとは一応中華ってことで烏龍茶でも買っとこう。ほかには、おなじみマスペとコラ・コーラ。それと牛乳。こんなもんかしら?
それでは、お会計~。かーえりーましょーっと。
◆ ◆ ◆
ただいまーっと同時にゴールインして、まずは手を洗う。あとはお風呂を先にするかどうかだけど……絶対汗かくよね。先に食べちゃいましょ。
荷物を一旦冷蔵庫に入れて、チャーシューの準備に取り掛かりまーす。
焼豚、焼豚と皆言うけれど、日本で実際ラーメンの具として人気があるのは煮豚だったりする。というわけで、今回作るのもチャーシューではなく煮豚。
レシピ動画を見ながら下準備~。
えーと、まずお肉をフォークでぷすぷす刺しまくって、味を染みやすくすします。ふむふむ。
続いて網を巻いたまま、焼き色が付くまで焼きます。うんうん。
で、炊飯器にチューブ入りしょうが、醤油、砂糖、料理酒を適量入れ、肉が浸る程度に水を注いで炊飯っと。
おお、お手軽ね!
さて、お次はゆで卵。
お湯を沸かし、卵を一個投入~。このとき、お尻に爪楊枝でちょっと穴を空けておくのがポイント。
あとは、タイマーを八分にセット!
ほうれん草は電子レンジで解凍し、もやしも洗った後、火が通り過ぎない程度に茹でる。
もやしを茹で終わったら、水に通してぐでらないようにした上で、ザルに置いて放置。
解凍の終わったほうれん草も、外に出して冷ます。
「ふう。下準備が終わりましたよ、アメリちゃん」
「おお~? もう終わっちゃった? お手伝いできることない?」
う~ん、まだ包丁使わせるの怖いのよねえ。
「じゃあ、ラーメンができたら具の盛り付けお願いできるかな?」
「おお~! 任せて!」
拳を突き上げ、元気なお返事。良き哉良き哉。
アメリと一緒にスマホで動画を見ていると、キッチンタイマーが卵の茹で上がりを知らせるので、すぐに冷水に浸けて熱を取りつつ、鍋底に叩きつけてヒビを細かく入れていく。こうすると、剥きやすくなるのよね。これで、卵の準備はよし!
煮豚が出来上がるまであと三十分以上あるので、スマホのアラームーをセットして二人で寝室に戻る。
私はお仕事、アメリはテレビに熱中していると、アラームが鳴った。
「アメリちゃーん。煮豚ができましたよ~」
「おお~! 行く~!」
それじゃあ、参りましょうか。
◆ ◆ ◆
さてさて。まずは煮豚くんをアツアツの調味液から揚げて、冷ましまーす。
続いてお湯を沸かして、ラーメンをイン!
粉がまぶされた生麺で、スープ付き。ちなみにお味は、シンプルな醤油味。茹で時間に合わせ、タイマーセット。
ラーメン用丼を用意し、スープを入れておく。
まだちょっと熱いけど、煮豚の余計な脂身を取り除いて輪切りにしていくと、ラーメン屋さんでおなじみの煮豚の切り身が参上!
でも、チャーシュー麺にしたってちょっと数が多いね。残りは明日、別の料理に使いましょ。
あとは、ゆで卵の殻を剥いて縦半分に切って、と。
ラーメンが茹で上がるまでアメリと会話して時間を潰すことしばし。タイマーが鳴ったのでお湯を切り、丼に移してラーメンどんぶりにポットのお湯を注ぐ。
「さあさあ。出番ですよ、アメリ先生! こんな感じに盛り付けてみよー」
「おお~!」
テーブルの両端に材料と丼、そして盛り付け例の映ったスマホを置くと、瞳を輝かせる彼女。
手を洗った後、よいしょよいしょと、チャーシューとメンマをまず置いて、もやしやほうれん草、ネギ、卵なんかを続けて並べていく。私の側にも回ってきて、同様に盛り付け終了!
「おお~! お見事です、先生!」
パチパチと拍手すると、「えへへ」と照れるアメリ。
「じゃあ、いただききますしよっか。早く食べないと、伸びてまずくなっちゃうからね」
というわけで烏龍茶を注ぎ、いただきますの合唱。
私のほうには、ビン入り胡椒を結構振りかける。
「おねーちゃん、なにそれ?」
「んー? 胡椒。ラーメンが美味しくなるの。アメリも使ってみる?」
こくこくと頷く彼女。
「アメリなら、一振りでいいんじゃないかな? かけすぎると辛~くなっちゃうから気をつけてね」
「お、おお~……」
おっかなびっくり胡椒を振りかけると、ミッションコンプリートとばかりに、額の汗を拭う。大げさだけど、ほほえまだなー。
では、いただきましょうかね。
うん、美味しい! いやー、煮豚が多くて実に食べ出があるね! ビバ! 手作り! 具を載っけてくれたアメリの愛も感じるわ!
「美味しい!」
アメリもご満悦。良き哉良き哉。
脳内で、チャルメラの音が鳴る。ああ、素晴らしきかな、ラーメン。
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