神奈さんとアメリちゃん

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第五百五話 さあ、考えよう!

公開日時: 2022年2月23日(水) 21:01
文字数:2,638

「全球凍結が地球で起こりましたね。すると溶けたとき、雪解け水と同じく、ミネラルたっぷりの水が海にたっぷり流れ込んでくるんです! それで、生命が大きく、多様化出来たんですね」


「おお~!」


 今日も、ノーラちゃんを除く三人娘と、押江先生の授業。先生、昨日の珍事がまったくなかったかのように、平静です。


「神奈お姉さん、ここ教えてもらえますか?」


「ほいほい。1に0.2掛けるのはね。1を十分の二にしますよーってのと同じ意味なのね」


 クロちゃん、ミケちゃんも、コツコツ自習を進めては、わからないところを訊きに来てくれます。


 私はこの、すでに慣れた環境下で、筆を走らせ中。私、環境の変化に強いタイプだけど、押江先生も、なんか昔からいらしたような気がしてくるわ。


「では、このへんで一旦休憩にしましょう!」


「はーい」


「じゃあ、ミケたちも休憩するわ」


 四人は、休憩タイムに入ったようです。私も一休みしますかー。


「お茶れてきますねー」


 腰を叩きながら、椅子から立つ。


「腰痛そうだから、アメリがやるよー。おねーちゃんは、休んでてだいじょーぶ!


「苦労をかけるねえ。ありがとう」


「行ってきまーす」


 ふう。孝行娘を持って、ありがたいことです。「あたた」なんて言いながら、折りたたみ机に着座。


「腰痛ですか。お辛そうですね」


 心配そうにおっしゃる先生。


「職業病ですねえ。これと、肩こりはどうにも……」


 そう言いながら、左肩を揉みほぐす。


「あとでアメリに、腰を踏んでもらいましょうかねえ」


 これも、いつまでできるのかな。


「お姉ちゃんもデスクワークしてますから、S町の整体、でしたっけ? そこに週一で通ってますよ」


 と、クロちゃん。


「そうなんだ。私も行ってみようかなあ?」


 そんな不健康トークを繰り広げていると、アメリちゃんが戻ってきました。


「はい、どーぞ」


「ありがとう」


 皆でお礼。


「調子はどう?」


 アイスティーを飲みながら、愛娘に尋ねる。


「腰?」


「それは見てて大丈夫そうだけど、お勉強のほう」


「おお! あのね、押江せんせー色々質問してくるんだよ! それが面白い!」


 へー?


「そんな感じで、授業を進めてらっしゃるんですか?」


 今度は、先生に話を振ってみる。どういうことだろう?


「アメリカ式のやり方ですね。日本のは、上意下達といいますか、教師が生徒に一方的に教える感じですけど、アメリカですと、生徒に色々考えさせるんです。生徒同士で話し合いさせられると、ベストなんですけどね」


「あー、なんかそういうの、聞いたことあります」


 二人がそんな感じで授業してるのは気づかなかったな。そこを注目……注耳? して聞いてみよう。いや、待った。


「そうだ、先生。その授業、私も受けてみていいですか? 少しだけ」


「私は構わないですけど、アメリさんはどうかな?」


「おおー! おねーちゃんと一緒、面白そー!」


 アメリちゃんも、ノリノリですね。


「でも、またどうしてですか?」


「そうですねえ。なんでも体験っていうのが、特に最近の考え方になってまして。アメリがどんなことしてるのか、体験してみたかったんです」


「なるほど。そういうことでしたら、ぜひご一緒に!」


 先生もノリがいいですね。良きかな良きかな


 その後も、五人でわちゃわちゃと会話し、休憩終了!


「では、猫崎さんを交えて、やっていきましょう!」


「「はーい」」


 二人で仲良くお返事!


「エディアカラ生物は、防御機能を持っていませんでしたが、カンブリア生物になると、ハルキゲニアのように防御機能を持つ生物が現れました。これにより、弱肉強食が生まれたと考えられています。でも、なぜそのような世界になったと思いますか?」


 うお、いきなり質問来たー!


「お二人で、色々相談してみてください」


「おお。えっとねアノマロカリスみたいに、歯が生えた?」


 困ったな。私、生物取らなかったからなー。


「どうなんでしょう、先生?」


「それを考えていただくんです。思考力のトレーニングです!」


 にこにこと、人差し指を立てる先生。ひょー! ほんとに、きっちり考えさせるんだ。これが、アメリが今やってる勉強法かー。


「うーん、お姉ちゃんは、腕? ほら、アノマロカリスとか、顔になんか付いてるじゃない? ああいうのが、できたからかなって思うんだけど」


「エディアカラ生物にも、たしかふん持ってる生物いたよ?」


 ふん?


「先生、ふんってなんでしょう? うんち……じゃないですよね?」


「それは答えられますね。ざっくり、触手っぽいものとお考えください」


 おお、これは教えてくれるんだ。しかし、相変わらずにこにこしていて、逆に顔色が伺えない……。


 でも、ここで合格宣言が出ないっていうことは、私たちの推理はハズレってことかな?


「それぞれの生物の絵を見てみたいですねえ」


「こちらに、ある程度のものを持ってきてあります」


 すらっと、生物のイラストを広げる先生。


「アメリの図鑑も出す!」


 カンブリア生物図鑑を取り出すアメリちゃん。


 よーし、漫画家の観察眼の見せ所ですよ!


 うーん? ううん?


「アメリ。このオパビニアとかいうの、へんてこな姿だねえ?」


 目が五つあって、口がにょ~んと伸びていて。


「面白いよね! 目が五つもあって、どういう世界が見えてたのかなー?」


 そういえば、昆虫とかも複眼持ちよね。……ん? 目?


 エディアカラ生物と、カンブリア生物のイラストを、よく見比べてみる。


 エディアカラ生物には目らしきものがなくて、カンブリア生物には、持っているものが複数いる!


「先生、ひょっとして、目だったりしません? 目ができたことで、なんかこう……」


「おお! 目で、獲物を追ってる!?」


「いい視点です!」


 両手で、サムズアップする先生。


「これが有力な学説なのですけど、カンブリア生物は目を持ったことで、獲物を捕らえるようになったといわれてるんです!」


「「いえーい!」」


 二人でハイタッチ!


「ふふ。楽しいムーブですね。仲の良さが伺えます。こんな感じで、アメリさんとは授業してるんですよ」


 へえ~。これは面白い!


「では、続けましょうか」


「あ、すみません。私は、仕事に戻らないとですので」


 面白いけど、あんまり本業をサボるわけにもいかない。


「わかりました。またいつでも、おっしゃってくだされば、やりますので!」


「ありがとうございました。とても勉強になりました」


 アメリの頭をひと撫でして、よっこいしょとデスクにつく。


 ふー。面白い体験をしたなあ。こんな授業だったら、私ももっと、勉強に身が入ったのかな。


 まあ、過ぎたことを考えても、せんないよね。これからのために、お仕事頑張りましょー!

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