「おねーちゃん! おねーちゃん!」
……ん。今日はもみもみではなく、ゆさゆさで起こされた。
「これ!」
アメリが、ケイティちゃんの入った箱を抱えて興奮している。
「あー、きっとサンタさんのプレゼントだねー……良かったねー」
横になったまま、頭を撫でる。残念ながら、朝の私は極めてテンションが低い。ごめんねー、アメリ。
「おお~……! ありがとう、サンタさん!」
上を見上げて、キラキラ瞳を輝かせるアメリ。お布団を被り、ふふと微笑む。これだけ喜んでくれると、贈ったかいがあるね。
「それじゃー、朝ごはんにしようか」
「おお~!」
そろそろ、日持ちしないものは計算して片していかなければいけない。パンは凍らせてしまえばいいけど、牛乳なんかはきっちり使い切らないとね。
◆ ◆ ◆
原稿もバリバリ進み、もうすぐパーティーの時間。では、おめかししましょー!
というわけで、ドレスアップ&メイクアップしてかくてるハウスへ!
今日は、久美さんが出迎えてくれました。おや、今度は私たちが一番最後みたい。
「こんばんはー」とご挨拶すると、皆さんもご挨拶を返してくれました。リビングには、オーナメントと電飾で飾られたモミの木が置かれている。凝ってるなー。アメリが興味深げにそれを眺めて、「おお~……」と感心。
談笑していると、ダイニング出入り口からさつきさんが「皆さん、こんばんはっすー! 用意ができたっすよー!」と声をかけてきたので、一同ダイニングへ移動。
テーブルの上には、二十六本のろうそくと、「Happy Birthday kumi!」「Merry Christmas!」とチョコペンで書かれたホワイトチョコが二枚立った、ブッシュ・ド・ノエルが置かれていました。うーん、実にクリスマス。
「今日は、料理の方もガッツリですよー。由香里とさつきとの三人がかりで作りました!」
自信ありげに微笑む優輝さん。何が出てくるんだろう、楽しみ!
「そんじゃ、着席しましょうっす。姉さん、挨拶よろしくっす!」
さつきさんがろうそくに点火し、一同着席。起立している久美さんに、皆から拍手が送られる。
「えー、本日はウチの誕生パーティーとクリスマスパーティーの同時開催ということで、ダブルでおめでたいといいますか……あー、調子出ねーな! いつもの感じでいかせてもらうぜ。皆さん、集まってくれてありがとな! ウチも、一昨日に続いて、持ってる中で最高のシャンパンを出したぜ! だから、今日は思う存分飲み、食い、歌おう! 以上!」
久美さんが深くお辞儀すると、再度拍手が送られる。
「それじゃ、いくぜー……!」
ふーっと、ろうそくを吹き消す久美さん。すべての火が消えると、一同から「ハッピーバースデー、久美さん!」という言葉とともに、三度目の拍手が送られる。
久美さんがケーキを切り分け、皆に配膳。
「じゃー、いただくとしよう! 乾杯! いただきます!」
一昨日のように、一同グラスを掲げ、隣の人と打ち鳴らし合う。
まずは、お酒をひと口……。おお~、前のも素晴らしかったけど、今日のもまた素晴らしい逸品だわ! ああ、これはいくらでも飲んでしまいそう……。
次にケーキ。これもチョコのほろ苦さと甘さ、スポンジのふかふか具合がお見事! これも由香里さんの作かな? 相変わらず、見事なお点前で。
一同がケーキを食べ終わると、「じゃあ、本命の登場といきましょうか!」と、優輝さんがカウンター側のオーブンを操作する。ややすると、香ばしいいい匂いが立ち込めてきた。
少しして、ミトンをはめて中身を取り出すと……おお~! チキンの丸焼き! 一同からも、「おお~!」とか「すごいですね!」とか声が上がる。
「いやー、ほんとはターキーにしたかったんですけど、さすがに手に入らなくて」
切り分けながら、恐縮気味な優輝さん。いやいや、十分すごいです。
チキンはお腹にハーブを詰めていたようで、彼女がお腹を切り開くと、ふわあっと爽やかな薫りが漂ってくる。
そして、切り終わると皆に配膳して回る優輝さん。いやー、これは美味しそう。ケーキ食べたばかりなのに、よだれ出ちゃいそうだわ。
「いただきます!」
一同、フォークをつける。あら~! 香ばしくて、とってもジューシィ! 美味しい、これはひたすら美味しい!!
「すっごく美味しいです!」
賛辞を贈ると、優輝さん、由香里さん、さつきさんが「ありがとうございます」と微笑む。
アメリも、「美味しい、美味しい」と、夢中でむしゃむしゃ食んでいる。ほほえま。
こうして食事会もつつがなく終わり、プレゼントタイムへ。
リビングに移動し、紙袋から袋に包まれた一升瓶を取り出す。すると、大人勢の皆さんもぞろぞろと同じく瓶が入った袋を……。考えることは、皆同じなのね。
それを見た久美さんは、アメリみたいに瞳をキラキラ輝かせている。
「それ、全部酒!? うっはー、ありがてぇ!!」
ともかくも、子供たちからお渡し会を始める。アメリが久美さんに絵を渡すと、「これ、ウチか! もっと長身に描いて欲しかったけど、サンキューな!」とうりうり頭を撫で、「うにゅう」という、例の気抜け声を上げるアメリ。
ほかの子供たちにも、感謝のうりうりをする久美さん。続いて、大人組のプレゼント。とはいえ、かさばるからこれはみんなでテーブルに置いていく。
「私からは、『黄龍』です。故郷の銘酒でも、一番人気のを選びました」
「おー! 神奈サン福井だもんな! これ美味いよなー!」
今にもよだれを垂らしそうな久美さん。他の皆さんも、私と同じ日本酒や、ワイン、焼酎、ウィスキーなど様々なお酒を贈る。
「いやー、嬉しいなあ! 皆さん、ありがとーございます!」
深くお辞儀すると、彼女のポニーテールがぴょこんと跳ねた。
「生まれて初めて、クリスマスと別に誕生プレゼントもらったよ……!」
涙ぐむ久美さん。悲願だったのね。
「良かったですね、久美さん。じゃあ、次はプレゼント交換といきましょうか」
優輝さんがテレビ台からくじの入った筒を持ってくる。
各自くじを引くと、私のには「木下由香里」と書いてあった。
「私、由香里さんでーす」
各自、誰のが当たったのか申請していく。
「では、わたしからはこれをどうぞ」
結構大きめな箱だ。
「開けていいですか?」
「はい」
包み紙を開けると、可愛い猫のぬいぐるみでした。
「あら、可愛い~」
「ふふ、喜んでいただいてよかったです」
逆に私のプレゼントは、クロちゃんに行った模様。
「はい、プレゼント。開けていいよ」
「ありがとうございます。……なんだろう、お薬?」
ああ、漢字が読めないのね。
「洗顔料だよ。顔洗うときに使ってね。詳しい使い方は、まりあさんに教わるといいと思うよ」
「ありがとうございます」
お辞儀して、はにかむクロちゃん。可愛い。
一方アメリはというと、白部さんのプレゼントが当たった模様。
「おお? 葉っぱ?」
「それはポトスの鉢植えだよ、アメリちゃん。大事に育ててね」
「おお~」
キラキラ瞳を輝かせるアメリ。ふむ。こういう形で、一つの命を預かることになりましたか。まあ、ポトスなら育てやすいし大丈夫かな?
そしてアメリのプレゼントは、さつきさんに。
「おー、ケイティちゃんっすか! ありがとっす! どっすか? 似合うっすか?」
私と違って、照れ一つなく笑顔でヘアピンを装着する彼女。強いなあ。
こんな感じで、和やかに交換会も終了。今月二度目の楽しいパーティーは、名残り惜しくもお開きとなりました。
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