店員さん二人が具の入った四つのボウルと……なにやらガラス蓋のような物を同数手に戻ってきた。
「すいません、なんですかこれ? 蓋……でしょうか?」
「当店では、焼いている最中にこれをお好み焼きの上に被せることを推奨しています。それと、代わりに焼くサービスも行っていますすが、いかがしますか?」
「あ、大阪風なら自分で焼けますから大丈夫ですよ」
アメリにも、華麗なコテ捌きを見せたいもんね! しかし、蓋を被せるとは珍しい。そういうのはちょっと初めて聞いた。
調味料の容れ物はどれが何やらわからないのでレクチャーを受ける。あと、テーブルの上に砂時計が一つあって、これで片面の焼き時間である四分がわかるのだとか。ふむふむ。
では、レッツ・クッキーング!
まずは、アメリのイカ、タコ、ホタテと私の豚をそれぞれ焼きます。十分火が通ったら、それぞれのボウルに戻して混ぜ混ぜ。いい感じ見混ざったら、鉄板に流し込んでコテで形を整えまして……で、ここで蓋ね。
会話をしながら待つこと四分。蓋を外して華麗なコテ返しを披露! よっと!
「おお~!」
アメリがぱちぱちと拍手する。いや~照れちゃうなあ。
さてさて、またもや蓋をすること四分。できたようなので十字に切る。
「はい、アメリのぶん。じゃあ、海鮮玉少しもらうね」
「おお~。美味しそーだね!」
アメリに割箸を渡す
「じゃあ、その取り皿に取って食べてね。鉄板熱いから気をつけて。むしろ、代わりに取ろうか?」
「お箸頑張る!」
さすが、努力家アメリちゃん。やけどしないように見守っていると……無事取れた! 今度は私が拍手。「えへへ」と微笑むのが、プリチーさMAX!
壺入りのソースをかけてあげて、青のりもぱらぱら~っとね。
「アメリ、マヨネーズはどうする? こってり感が出るけど」
「かけてー」
はいな。ボトルをちゅーっと。
「さあ、召し上がれ」
「いただきまーす……美味しい!」
キラキラ輝く瞳を向けてくる。良き哉良き哉。
「じゃあ、私もいただきま~す……うん、美味しい」
伊達に蓋で蒸したわけじゃないのね。結構なふっくら感。今度うちでもやってみようかなあ。
「クロちゃん。美味しい?」
「うん」
対面の二人も、いただきますの後に食べ始める。クロちゃん、一年前に猫耳人間になったばかりなのにお箸の使い方上手だなあ。でも、アメリはアメリでこないだお箸の使い方覚えたばっかりなのに、落とさないで食べられてるのすごいよね。
クロちゃん、口数こそ少ないけど、表情から美味しそうというのが伝わってくる。ほほえま!
そういえばこのお店、お冷にレモン味がついていて人を選ぶかもしれないけど、私はレモン水好きです。ほかの三人も、特に苦手ではない模様。
そんなこんなでお好み焼きも無事食べ終わり、続いてお買い物タイムです!
◆ ◆ ◆
まずは、やって来ました靴屋さん。アメリが初めて靴を買った、あのお店。
まりあさんたちは同じ店内でウィンドゥショッピング中。……ウィンドゥないけどね。
「すみません、この子の長靴を買ってあげたいんですけれど」
レジで男性店員さんに話しかける。
「こちらです」と案内されたところには、子供用の長靴がた~くさん! どれも可愛いなあ。
「お求めのサイズはおいくつですか?」
「ええと……たしか足は二十一センチで、今履いてる靴は二十一.五センチを勧められました」
「でしたら、二十二センチのものがお勧めですね」
ふむふむ。
アメリは悩んだ末に「これにする!」と、今履いているスニーカーと同じ、薄紫で白い靴底のものを選ぶ。
「これ、二十二センチのあります?」
「はい。こちらになります」
靴の入った箱の群れからうち一つを取り出し、開封して見せてくれる。
「試し履きいいですか?」
「はい。こちらでお履き替えください」
というわけで、椅子に座らせ履き替えさせて歩かせる。
「どう?」
「いいと思う!」
なんか、デジャヴュを感じさせる返事。ともかく、気に入ってくれたようなのでそのまま履いていくことにし、スニーカーはビニール袋へ。
「お待たせしました。すみません」
お会計を済ませた後、まりあさんたちに呼びかける。
「いえいえ。こうして見て回るだけでも楽しいですから」
次は、傘を求めて屋根のかかった高架道を渡り、一路駅ビル「ゆらりと」へ!
「本当は、レインコートも買ってあげたいんですけどねえ」
「わかります、わかります! レインコート着たら絶対可愛いですよね!」
と、まりあさんと共感しあった後、互いにため息を吐く。
問題は猫耳。高さのあるキャスケットならともかく、レインコートはちょっと辛い。どこかが、猫耳レインコートとか出してないかしら。……ないか。
などと雑談してるうちに、雑貨店・ハートマンに到着! 申し訳ないけれど、二人にはまたウィンドゥショッピングをお願いしました。
二階で傘が売っていたので、子供傘を物色。
「どれか気に入ったのある?」
とはいうけれど、こちらはさすがに店内で実際開いてみるわけにもいかないので、せいぜいバンドを外してひだをめくって見るぐらいしかできないけれど。
「ん~……なんかこれ、気になる!」
「どれどれ?」
ちょっとひだを伸ばしてみると、ピンク地に、アメリの自転車のチェーンカバーとかごにプリントされているのと同じ、人気猫キャラクター「ケイティちゃん」がプリントされている。
「これにする! これがいい!」
今にもぴょんぴょん跳ね出しそうな勢いで、催促してくる。
「おっけおっけ。じゃあ、これにしましょ」
というわけでレジに向かうと、そこにはまりあさんたちの姿が。紙袋がレジの棚上にあるってことは、ちょうど買い終わったところかな。
「お二人も、ここで何か買う物があったんですか?」
「ええ。せっかくなので、新しいスケッチブックとクレヨンを買ってあげようかと」
クロちゃん、嬉しそう。お絵かき好きなんだね。
「私たちは、これにしました。アメリがケイティちゃんのプリント見て、一目惚れしたみたいです」
まりあさんが、「いいですね」と笑顔で頷く。
というわけで、私たちも続いてお会計。
いよいよ、まりあさんたちの本命である食料のお買い物へ! 後編に続く!
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