神奈さんとアメリちゃん

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第三百五十五話 かんなせんせいのおりょうりきょうしつ ―中編―

公開日時: 2021年9月18日(土) 21:01
更新日時: 2021年9月24日(金) 18:16
文字数:2,297

 いつものスーパーにイーン!


 店内BGMに包まれて、今日は子供二人に何を教えようかなあと思案。


 ポイントはミケちゃんだ。たとえば包丁は使えるのか? とか、そういう基本的な技量の有無が問題になってくる。


 みきさんのお話だと、包丁はまず使えなさそうだけど、一応確認をとってみよう。


 一度、店外のひさしの下に出てコール。


「はい、どうされました?」


「あ、すみません。確認したいことが。ミケちゃんって調理道具や技法ってどれぐらい扱えます?」


「包丁はダメですね。コンロも、うちのIHだけです。お菓子は割と作りますから、オーブンや電子レンジの類は使えますよ」


 なるほどなるほど。


「包丁の使い方、指導するのまずいですか? ダメでしたら、包丁を使わないメニューを考えますけど」


「うーん、包丁かー……。そうですね、神奈さんを信頼させていただきます。ミケに、扱いを教えてやってください」


「ありがとうございます。きちんと責任を持って、指導に当たらせていただきます」


 ものがものだけに、少々堅苦しい言葉が飛び交う。


「あとは、彼女ピーマン以外に苦手なものとかありますか?」


「うーん? この世のあらゆる物を食べさせたわけではないですけど、特にピーマン以外に苦手はないようですよ? レバーとかも平気ですし」


「ありがとうございます。いただいた情報を元に、メニューを考えさせていただきますね。それでは、また後ほど」


 通話終了。


 さて。おかげさまでビジョンが浮かんだ。まずは、料理教室用の材料を買ってしまおう。


 ソーセージとサニーレタス。まず、超入門用のを。


 続いて、ちょっと凝ったやつ。


 とろけるチーズ、ハム、玉ねぎ、そしてピーマン。ピーマンはミケちゃんに食べさせないけど、私たち用。


 あとは、パンを多くして三種の神器を。


 お昼はこれでヨシ! 晩ごはんはどうしようかな。


 お昼作るのはパン食。今朝もパン食。昨日の晩ごはんは和食だったから、中華と洒落込みたい。


 ……チラシチェーック!


  豚肉セール! キャベツとおネギもお安い。あらあら、これはこれは。


「神奈、今晩は回鍋肉ホイコーローを作りなさい」


 と、天から謎の声が語りかけてきているようだわ。


 これはもう、決まりね! かごに入れましょう~。


 タレは出来合いのでもいいんだけど、私調合できるからなあ。自作しちゃいましょ。


 お菓子と飲み物は優輝さんが持ってきてくださるからいいとして……。


 こんなもんかな。来るまで来たからって、あんまり一度にあれもこれも買わなきゃいけないって決まりもないし。


「アメリちゃんは、何か欲しい物はありますか? お菓子とジュースは優輝さんが持ってきてくれるよ」


「おお? じゃあ、特にない~」


 ほいほい。それでは、お会計~。



 ◆ ◆ ◆



 ただいまー! の後は、手洗い&うがい。で、荷物を冷蔵庫に入れて……ヨシ!


 あとは、お仕事しながらミケちゃんを待ちましょ~。


 すいすいと筆を走らせてると、インタホンの呼び鈴が。PCの時計を見ると、十二時ちょっと前。


「アメリー。ミケちゃんが来たよー」


「おおー! 一緒に迎えに行く~!」


 念のため応対するとやはり優輝さん。門までさっそく向かう。


「「こんにちはー」」


 優輝さんとミケちゃんが並んで、共に赤い傘を差して佇んでいました。お揃いね。ふふ。


「こんにちは。お待ちしてましたー」


 アメリも、元気に「こんにちはー!」とご挨拶。


「どうもどうも。今日は、ミケをよろしくお願いします。あとこちら、お菓子と飲み物です」


 ずしりと重いビニール袋を手渡し、ぺこりとお辞儀してくる。


「ありがとうございます。こちらこそ、最近あまりアメリを構ってあげられないものですから、助かります」


 こちらもお辞儀返し。


「では、あたしは仕事が待ってますので、手短ですが失礼します」


 再度お辞儀し、「神奈さんたちにご迷惑かけないようにね」と、ミケちゃんの頭をポンポン優しく叩く。


「もーう、心配しなくてダイジョーブよ! ミケはお姉さんよ!?」


「はは、そうだったね。それでは」


 三度目はちょこんと頭を下げて、優輝さんはお隣に戻っていきました。


「じゃ、雨の中立ちんぼもなんだから、お家に入りましょうか」


 ミケちゃんを伴い、三人で屋内へ~。



 ◆ ◆ ◆



「さて、時間も時間だから、さっそく料理教室始めちゃうよ~」


 手洗いを済ませ、エプロンを身につけ、教材・・をテーブルに並べる。


「その、悪いんだけどミケ、正直あまり料理にはキョーミないのよね。優輝がどーしてもっていうから、エプロンだけ持ってきたけど」


 口元に拳を当て、どうしたものかと眉をひそめる彼女。


「そうらしいわね。でもねー、料理できるお姉さんってかっこいいのよー? 優輝さんとか、ほかの皆さんも私が年下だったら、こんなお姉さんがいたらいいなあ~って思っちゃうもの」


 ミケちゃんのしっぽが、ピクと反応する。


「アメリも、料理ができるミケお姉ちゃんかっこいいと思うよねえ?」


「おおー! 料理できるミケ、絶対かっこいい!」


「お姉ちゃんにしたくなっちゃうわよね?」


 こくこく激しくうなずくマイ・ドゥーター。打ち合わせとかしてないのに、欲しいリアクションをくれるあたり、さすがアメリちゃん!


 ミケちゃんを見ると、しっぽがピクピク。これは、興味津々のサインですねえ。


「ふ……ふふん! 料理ぐらい、この天才ミケお姉さんにかかればちょちょいのちょいよ! ミケのお姉さんぶりを見てなさい、アメリ!」


 しっぽがピーン! ふふ、作戦成功!


 優輝さんが今まで説得に失敗したのは、アメリのような持ち上げてくれる妹役がいなかったからなのよね、きっと。


「おお~! さすがミケ!」


 そこに、ナイスアシスト。ほんと、こういうのソツがないわ、うちの子。


 さてさて、心の準備も整ったところで、料理教室開幕です!

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

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