神奈さんとアメリちゃん

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第三百六十五話 クロへの贈り物 ―前編―

公開日時: 2021年9月28日(火) 21:01
文字数:2,134

 朝食のスクランブルエッグとソーセージを美味しくいただき、デスクでニュースを見てからLIZEチェック。


 お、優輝さんが「ピュアランド、二十日にしませんか?」ですって。まりあさん、白部さんもご同意済み。ならば、私からも断る道理はなっしんぐ。というわけで、承諾~。


 移動手段は車にしましょうという話になり、まりあさんとクロちゃんは私がお連れすることを申し出ました。白部さんの軽より一回り車体が大きいので、乗ってて多少楽でしょうって寸法。


 それではお願いしますという話になり、時刻も十一前到着にしましょうとトントン拍子で決定。ちなみに、車だと片道三十分ほどの距離。電車だと倍かかるらしく、まったく自家用車様様です。


 優輝さん、色々ピュアランドの下調べをしておいたらしく、ここは珍しく予約制テーマパークなのだとか。まず、ピュアランドの公式ファンクラブに入会し、さらに事前予約……ヨシ!


 とくに注意すべき点はそれ以外ないようで、スムーズに十一時の予約が取れました。


 ほかにはレストランの数も充実していて、しかもクオリティも高いとのことで、事前に食べておいたり、お弁当を持っていったりなどは必要ないとのこと。さすがイベントガール、気が回ります。ありがたや。


 というわけで、意外なほど事前に用意しておかなければいけないものはないようで。


 ただ、それはそれとして、今日ちょっとやっておきたいことがあります。


 それは、まりあさんへのプレゼントのご用意。三十日の誕生日まであと二週間もないので、そろそろ準備しておきたい。


 しかし、「じゃあ何を贈ったら喜ばれるだろう?」と考えると、意外と彼女のご趣味を知らないことに気付かされる。


 ふむ。これは一度、ご本人に伺ったほうがいいね。


「まりあさん。もうすぐお誕生日ですけど、欲しいプレゼントってありますか? その、お恥ずかしながら、意外とまりあさんの趣味って把握していなくって」


 恐縮猫スタンプとともに送信。


「そうですねえ……わたしの趣味というと、園芸ですとか演歌ですとかになりますけど、そういうのは自分で買ってしまいますし……。うーん……あ、ではへんてこなお願いで恐縮なんですけど、クロちゃんへの贈り物に代えていただいても良いでしょうか? クロちゃんが嬉しいと、わたしも嬉しいので」


 なんとまあ、自分ではなく妹であり娘へのプレゼントを代わりにお願いするとは。つくづく、身近な人の喜びに喜びを感じる方なのだなあ。


 「まりあさん、ほんとにそれでいいんすか?」とさつきさんからも困惑の声が飛ぶけど、「はい。お願いします」という、真に力強いお言葉。そこまでおっしゃるなら、お望みを叶えなければだね。


「とすると、クロちゃんの好みは『和』のものだと思うんですけど、もうこれは必要ないというものはありますか? たとえば、こないだ姫路城のプラモデルを買っていましたから、同じものを贈っても……でしょうし」


「そうですね。たしかにそれは以前買いました。あとは、『日本の名勝百景』『日本陶器百科』、このへんの本も持っています。ほかには、もう将棋に本気で打ち込むようになったので、今育てている盆栽以外の生き物も育てる余裕がないと思います」


 ふむふむ。


 となると、何がいいだろう。お城のプラモデルは腐るものでもなし、将棋の息抜きにちょこちょこ進められそうだ。あとは、子供向けの日本の歴史本とか、日本文学の本とかも良さそう。


 ……どっちにしても、駅前に行く必要がありそうだな。


「ありがとうございます。なんとなく、ビジョンが見えてきました。これから、駅前で見繕ってきたいと思います」


 と送信すると、「だったら、あたしらもご一緒しますよ。ほら、贈り物が被ってもあれですし」と優輝さん。


 白部さんも、「たしかにそうですね。私たちもご一緒します」と、なんだかまりあさんを除く全員で駅前に行く流れに。


「でしたら、駅前で何か食事もしましょう」


 と、私も話に乗っていく。


「まりあさんはどうなさいますか?」


「そうですね……クロちゃんを連れて行ったら、プレゼントのネタバレになってしまいますし、かといって、一人で置いていくわけにもいきませんし。うちで新作の構想でも練りながら過ごしていようと思います」


 ふむ。たしかに、あまりにもサプライズ要素がないのもね。


 こういう計画にはノリノリな優輝さんの取りまとめで、「それじゃあ、行く組は例によって十一時頃に『シャンデリアイタリアンファミレスに集まって食事しましょう」という話に。


 シャンデリア一択なのは、九人入れるレストランがF秋前にほとんどないため。一応同じビルの地下に、「マストファミレス」もあるはあるんだけど。


「アメリちゃーん。今日のお昼は駅前のシャンデリアさんで食べますよー」


 話も一通り済んだので、くるりと椅子を回して漢字の書き取りに打ち込んでいた愛娘に話しかける。


「おお! カタツムリ食べられる!?」


「うん。食べられるよー」


 「おお~……」と、キラキラした瞳を向けてくるお嬢様。ほんとあれ、お気に入りだよね~。シャンデリア一択のもう一つの理由が、うちの子なわけです。エスカルゴスキーだからね。


 十一時までは、あと一時間半ばかり。しばらく、筆を進めておきましょうか。


 食事も楽しみだけど、クロちゃんに何買ってあげましょうねー? 悩むなあ。

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