「おわったあああああああああああ~っ!!」
日は過ぎ去り、二十八日。PCの時計を見ると三時頃。ついに、原稿がはけました! さっそく、真留さんに送信する。
いつもだったらハイテンションでアメリにじゃれついてる私も、今回は脱力感のほうが勝り、椅子の上でぐったり。
リテイク来ないでよー……?
「おねーちゃん、何が終わったの?」
「んー? お仕事~。つーかーれーたー」
首を反らすと、背後に立っていたアメリを見上げる形になる。
「おお~! おねーちゃん頑張った! 偉い偉い」
アメリに頭を撫で撫でされ、「うにゅう~」という気抜け声を上げる。ふふ、立場逆転。
そうやってダラダラ過ごしていると、真留さんから「原稿いただきました。問題ありません。お疲れ様でした。良いお年を」というメールが届く。
「よっしゃあああっ!!」
拳を突き上げる。そのままくるりと振り返り、アメリを抱き寄せた。
「アメリちゃーん! やったよ、やりましたよ~! 無事、原稿通過ですよ~」
そのまま膝に乗せ後頭部に頬ずりする。
「おお~。良かったねー」
アメリも、頭を預けてくる。そうして、いちゃつくことしばし。
「そうだ! 今日は久々に手料理作っちゃおうねえ~。ここしばらく、アメリにまともなごはん作ってあげられなくて欲求不満だったのよ」
彼女の右肩に顎を乗せ、ほっぺたを密着させる。ぷにぷに、すべすべでいい感触。
「おおー! おねーちゃんの料理、久しぶり! 楽しみ!」
「よっし。それじゃあ、いつものスーパー行こうか! と、その前に……」
アシさんに「原稿通りました! お疲れ様でした。良いお年を!」とLIZEでお辞儀猫スタンプとともに送信する。
明日の帰郷が確定したので、新幹線と特急の指定席もキャンセルしないで済む。良き哉良き哉。
それじゃあお着替えして、ルンルン気分でスーパーにれっつらご~!
◆ ◆ ◆
お馴染み、いつもの店内BGM。こんな晴れ晴れした気分で聞くのも、久々だなあ。最近、昼夕は店屋物で済ませてばっかだったものね。朝はシリアル続きだったし。
明日から帰郷だけど、燃えるゴミの回収は今朝で、次出せるのは帰宅後。なので、生ゴミは出したくない。そして、分量は今回の夕食で使い切れるだけのものか、保存食。……意外と条件厳しいな。
とりあえず、チラシから着想を得てみますか。
やっぱりというか何というか、セール対象はお正月用品がメイン。うーん、これはヒントにならない。
じゃあ、ノーヒントでいってみよう。まずは、最近食べたもので引き算しようかな。ピザ、鍋焼きうどん、「マスト」の宅配ハンバーグランチ、「クマドナドル」の宅配フィッシュバーガーセットなど……やっぱり、こってりしたのが多かったな。
となると、あっさりめでいってみたい。そういえば、ちょうどお正月用品セールなので、お餅が安い。で、こないだうどんは食べたから、わかめ力蕎麦なんていいんじゃないかしら?
うん、これでいってみよう!
個別パックのお餅、乾燥わかめ、お蕎麦の乾麺、冷凍刻みネギ、香味のつゆを購入。あとは、明日の朝食になる卵とツナの袋入りサンドイッチ二つと、おなじみコーラとマスペ。うん、これ以上は要らないね。でも、飴ぐらいついでに買っていってもいいかな。
では、お会計~。
◆ ◆ ◆
帰宅後は、久々にアメリに勉強を教えながら、夕飯どきまで過ごす。ちなみに、学習内容は小二向けの漢字。もう小一向けはマスターしちゃってて、ほんとすごい。
おっと、六時となりました。さあさあ! お久しぶりの三分でクッキングする脳内BGMをスイッチオン!
まずは秘密兵器、お餅焼き器! これに乗せてレンチンすると、お餅がくっつかず簡単にはがせるというスグレモノ!
久々の使用なので、一度きっちりと洗う。同時に、二つのお鍋で湯沸かし。
お湯が湧いたら、お蕎麦二百五十グラムを片方の鍋に投入~。キッチンタイマーをセット!
続いてお餅をレンチン。あまり加熱するととろけすぎちゃうから、時間指定が難しい。
先にお餅が完成。とりあえずそのままにしておき、茹で上がったお蕎麦を一度ザルに空けて流水で締める。
あとは、もう片方のお鍋につゆを注ぎ、味を調整。うん、いいお味!
丼二つにお蕎麦を百グラムと百五十グラムに目分量で入れ分け、つゆを注ぎ、お餅、わかめ、ねぎを載せたら完成~!
「久しぶりの手料理だよ~、アメリちゃ~ん!」
「おお~!」
何か手伝いたそうにしていたものの、特にできることがないので調理を見守っていたアメリに呼びかける。そろそろ、電子レンジやコンロの使い方も教えてあげようかなあ。
お茶と一緒に配膳してエプロンを外し、彼女の正面に着席。
「それじゃあ、いただきます!」
「いただきます! ……おお~!? にゅ~って伸びる!」
「それ、喉に詰まっちゃうと大変だからゆっくり食べてねー」
「わかった!」というアメリと一緒に、お餅から攻略を始める。うーん、お餅も久々に食べると美味しいねえ!
ふふ。アメリったら、お餅がどこまで伸びるかチャレンジしてる。ほほえま。
続いてつゆをひと口。そして、ネギとわかめでビタミン補給。それぞれサクサク、コリコリしてて美味しい。
そして、メインのお蕎麦。ずずず……。うーん、美味し~い! 温まるう~!
「おねーちゃんの作る料理、ほんと美味しい! アメリも早く、色々作れるようになりたい!」
キラキラした瞳を向けてくる。良き哉良き哉。微笑みでもって、彼女に返答する。
ふう、ごちそうさまでした。アメリもほぼ同時に食べ終わり、ごちそうさまを言う。
さて、後片付けをしたら、明日の用意だ!
◆ ◆ ◆
冷蔵庫の中身をチェック! ……うん、とくに日持ちしないものはなし! 強いて言えば明日食べる予定のサンドイッチぐらい。コーラとマスペも冷やし中。 コンロのガスの元栓も閉めておく。
続いて、キャリーケースに着替えを詰め込む。私の服は実家に多少残っているけど、アメリのがあるはずもなく。かといって、滞在予定の六日ぶん持って行ったら大荷物だ。
ここは、私の着替えを一日分。アメリのを三日ぶん詰め込もう。アメリの服は、向こうで洗いながら変えればよし!
アメリが、「みどりん」と名付けたポトスに水やりをさせておく。ただ、六日持つかと言うと怪しいので、底部の受け皿に根腐れを起こさない程度に水を張らせる。これぐらいのお世話でも大丈夫なのがポトスのいいところよね。
あとは、みどりんをキッチンのフロストガラスから陽が差す場所に置いておけば、オッケー!
戸締まり確認。よし!
では、ストレッチ~。……ふう、あとはお風呂に入って、と。
「おねーちゃん、ケイティちゃんとそめごろうたち持っていきたい……」
お風呂場に行こうとすると、アメリが懇願してくる。でも、うーん。
「このケースに入れたら、ケイティちゃんもそめごろうもきっと潰れちゃうよ?」
「うにゅう……」と、残念気抜け声を上げるアメリ。よしよしと、頭を撫でて慰める。
かくして、我が家で今年最後の入浴。ふう、いいお湯でした。
アメリがぬいぐるみたちに未練タラタラなので、できる限りぬいぐるみ遊びに付き合ってあげる。
そうこうするうちにもう九時。アメリを就寝させ、皆さんと帰省予定についてスマホ用LIZEのメッセージで語り合う。やはりというか、皆さんも実家に戻る模様。
寝過ごすといけない。アラームをセットして、私も早めに就寝しましょ。
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