神奈さんとアメリちゃん

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第四百二十九話 一触即発!?

公開日時: 2021年12月8日(水) 21:01
文字数:2,999

 七月突入!


 国会も閉会済みでございます。人権法は未だ成立せず。九月の臨時会に期待だねー。


 そんな考え事をしながら、プロットをカタカタ執筆なう。


 国会で現在までに決まった方針は、以下の通り。


・誕生確認後、保護者が二週間以内に姓名・性別を戸籍へ記載すること。


・誕生確認日を誕生日とし、満八歳として扱い、満二十歳をもって成人とする。


・暫定的に令和五年まで、引き続き無償にて研究機関、および提携医療機関で検診・治療を行う。


・上記に拒否権はあるが、その場合自費診療となる。


 ……こんなとこ。


 とりあえず、無難なラインから埋まっていきました。医療費関係が期間短めの暫定扱いなのは、今後どのぐらいの勢いで猫耳人間が増えるか、わからないからだね。


 極端な話、一気に一億人増えたら、医療費がパンクしてしまう。


 で、未だ難航してるのが、私待望の学校関係。


 転生したてのアメリを思い出すに、あの状態で学校に入れたら、たしかに色々と困難が伴うのは必至。


 なので、現時点では絶対数が少ないこともあって、特別学級的な、猫耳人間専門のクラスを設けたら良いのではないかというのが現在出てる案。


 アメリには人間のお友達をいっぱい作って欲しいけど、それはすぐにはやっぱり難しいよね。あんなに人懐っこい子なのに。


 そんな事を考え、今日もベッドに腰掛けて読書に励む愛娘を見る。


 こんなに勉強熱心な子なんだ、やっぱり学校に行かせてあげたいよ。


 窓の外を見ると、今日も曇り空。どうにも天気さんも、空気読んじゃってますね。今は曇っているけど、午後から雨になるそうで。ヤンナルネ。


 そういえば、猫耳人間の保護者会を立ち上げようって話も送り送りになってるなあ。


 この情報化社会で、「保護者かどうか証明してください」なんて証拠写真求めるとかやったら、大問題になりそう。立場をひっくり返して考えたら、猫耳人間の保護者かもわからない管理人に、それを求められたら困るものね。


 なんだか色々、ムツカシーですねー。


 学校といえば、今日も午後に子供たちが集まって、勉強会を開く予定。入学の目処が立たない以上、自力でやるしかないからね。


 それに、こうして私たちが行っている勉強会自体が、いつか叶うであろう正式な教育へのフィードバックになっていると、白部さんはおっしゃってました。



 ◆ ◆ ◆



「アメリ、調子はどう?」


 勉強会の休憩時間、お茶菓子を出して、私も場に混ざる。今日のお茶請けは、よもぎ、黒糖、酒蒸しの小さな三種のおまんじゅう。


「倍数と約数っていうの教わってる!」


 おお、そこまで来ましたか。


「猫崎さん。私びっくりしまして」


 白部さんが、目をまんまるにして語りかけてくる。はて、なんでしょう?


「アメリちゃん、約分と通分。あと、分母違いでの足し算引き算ができるんですね」


「あ、はい。分数を教えるときに、ついでに教えまして。……何かまずかったでしょうか?」


「いえ、それ小五で覚える内容なんですよ。ほんと、びっくりしちゃって」


 なんと。一足飛びに、そこまで教えていたのか!


「あー、すみません。どんな順序で習ったかとか、さすがに二十年弱前のこととなると、よく覚えていませんで……」


「いえいえ! すごいですよ、これは! CH研には世界中の猫耳人間のデータが集まりますけど、天才かもしれません!」


 そこまで!?


「え、ええ……? アメリ、すごいすごいとは思ってましたけど……。そんなにすごいんですか?」


「あの。お二人さえよろしければ、CH研で特別カリキュラムを考案させていただけませんか?」


 えええー!? なんか、すっごい大事おおごとになってるぅ!?


「せんせー。それやると、みんなと勉強できなくなっちゃうの……?」


 白部先生に、不安の眼差しを向ける愛娘。勉強は楽しいけど、みんなといるのはもっと楽しい。アメリはそんな子だ。


「うーん、詳しくは会議で決めてみないとわからないかなー。でも、意見としてちゃんと取り入れるからね」


 はー……天才ときましたか。すごい子だ、すごい子だとは思っていたけれど、こっちがびっくりとしかいいようがない。


 すると、横から唸り声が。声の主はミケちゃん。机に顎を乗せて、じとーっとアメリを見てる。


「う~……妹に負けるなんて……。ミケだって、勉強を楽しめさえすれば、できる子なのよ!?」


 あら~。例によって、プライドを刺激されてしまっている。


「ミケちゃん。前も言ったけど、人には得手不得手があるのよ。ミケちゃんは、ダンスとお歌がとても上手でしょう?」


 白部さんが困った顔で応える。


「そのつもりだけど……。その手の大会で、優勝したことないのよ?」


「ごめん……」


 しょんぼりして、頭を下げるうちの子。歌謡コンテストの地雷踏んだァー!


「あ、ちがっ……! アメリは全然悪くないの! あれは、ミケが無理にターン入れたのがいけなくって……」


 しどろもどろでフォローするミケちゃん。あちゃー、気まずい空気に。白部さん、「失敗したー」とばかりに頭を抱えてらっしゃる。


 クロちゃんも悪化した空気に落ち着きを失ってるし、当時を知らないノーラちゃんは、「何のハナシだー?」と掘り下げようとする。困った。


「すとーっぷ! ストップ、ストップ二人とも!」


 パンパン手を打つ。一回、空気を沈静化させないと。


「歌謡コンテストは過ぎた話。互いに、自分の失敗だったと思ってるようだけど、たしかに反省は大事です。でも、前を見るのはもっと大事。反省は活かすものであって、囚われるものではないのよ」


 両者の顔を交互に見て、言い聞かせる。


「それとミケちゃん。誇り高いのもいいけど、嫉妬はしないほうがいいよ? これはアメリをかばってるのではなくて、ミケちゃんがこの先、生きづらくなるから」


 どんな感情で聞いているのだろうか。うつむき、黙って聞く彼女。


「お姉ちゃんはね、別に妹に対して何でも完璧じゃなくていいのよ。私はアメリの姉でもある身だけど、朝がめちゃくちゃ弱いから、朝ごはん代わりに作ってもらったりしてる有様だもの」


 目をまんまるにして、私の顔を見るミケちゃん。


「ほんとは私がやらなきゃいけないのに、どうしても朝の弱さだけは、子供の頃から克服できなくてね。ほんとアメリには、申し訳ないと思ってます」


 アメリに、深々と頭を下げる。


「おねーちゃん、気にしないで! 朝ごはん作るの楽しいよ!」


 驚いてフォローする愛娘。


「ありがとう。というわけでね、ミケちゃん。あとアメリも。失敗を悔やむより、励まし合ったり、助け合ったりしよう?」


 顔を見合わせる二人。


「アメリ、ゴメンね。アメリが勉強できること、素直に喜んであげられないようじゃ、お姉ちゃん失格だわ」


 深々と頭を下げるミケちゃん。


「だいじょーぶ! アメリね、ミケはすごいアイドルになるって信じてるよ!」


 胸元に両拳を当て、励ます愛娘。


 互いに、照れくさそうにはにかむ。白部さん、クロちゃんも、ほっと一息。ノーラちゃんだけ相変わらず歌謡ショーを掘り下げようとするので、「後でね」と白部さんが釘を刺す。


 彼女は当時、まだこの近所にいなかったけど、ヒアリングの一環として、あのことを伝えてある。


 白部さんのことだから、悪いようには話さないでしょう。


 一件落着かな? 一時はどうなることかと思ったけど、終わりよければすべてヨシ!


 ミケちゃん用の歌、早くできるといいね。力になれないのが、相変わらずもどかしい。


 しかし、特別カリキュラムかー。アメリの意思を尊重するつもりだけど、どうなることでしょう?

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