神奈さんとアメリちゃん

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第四百三十五話 ついに「アレ」を買います!

公開日時: 2021年12月15日(水) 21:01
更新日時: 2021年12月16日(木) 23:01
文字数:2,196

「おねーちゃん。なんで鳥って空を飛べるの?」


 今日も今日とてニュースやLIZEのチェックを終えて仕事に取り掛かろうとしたとき、鳥類図鑑を読んでいたアメリちゃんから、唐突に質問されました。


「へ? そりゃまあ、翼を上下させると、空気が下に行くよね?」


 しかし愛娘、この回答に満足せず、首を横に振ります。


「それだと、上に行く空気と下に行く空気がおんなじだから、飛べないと思うの。なんでだろ?」


 その発想はなかった。たしかに言われてみれば、不思議な話だ。うちわを扇いだら、うちわが浮いてしまったという話は聞かない。


「ちょっと調べてみるね」


 検索エンジンで調べると、ちょうど鳥が飛べる仕組みについて書かれたエッセイが。へー、上に翼をあげるときは「へ」の字に上げて、打ち下ろすときは伸ばしたまま下ろすから、下に行く空気のほうが多くなって飛べるんだって。


 アメリ博士にそのことを説明する。


「おお~! すごい! おねーちゃん、すごい!」


 いやー、今どきの検索エンジンはほんと便利で、さくっと欲しい回答がもらえるからねえ。ちょっと検索ワード入れただけなのに、褒められると照れちゃうな~。


 しかしアメリちゃん、その後も何かと疑問が浮かぶたびに質問してくるじゃないですか。たとえば、なんで鶏は飛べないの? とか。


 そのたびに検索しては伝えるわけだけど……。さすがに十度目ともなると、仕事が手につかなくて困る。


 かといって、愛娘の知的好奇心は満たしてあげたいし……。


 う~む……。


 うう~む……。


 よし! これもいい機会だ! アレ・・を買ってあげようじゃないの!


「アメリちゃん、今日はいいものを買ってあげます。十一時近くになったら着替えて、駅前に行きましょう」


「おお? なんだろ? 楽しみ!」


 ふっふっふっ。楽しみにしててちょーだいね!



 ◆ ◆ ◆



 あいにくの雨だけど、市営駐車場に車を停めると、さっそく「シャンデリアイタリアンファミレス」さんへ。混み合う前に、お昼済ませちゃいたいからね。


 エスカルゴ教の教祖・アメリ様は、なんとメインディッシュ抜きでエスカルゴとフォカッチャを二皿ずつ頼むという極端な行為に出ました。


 それじゃあ足りなすぎるでしょうということで、私のランチセットの、コーン、ポテト、チキン、ライスを少しずつ分けてあげることに。


 アメリにあげたぶん、目減りしてしまったので、私もエスカルゴを追加で頼みました。ほんとおいしいよね、これ。アメリちゃんがお熱なのわかるわ。


 食後は、いよいよメイン目的ですよ!



 ◆ ◆ ◆




 スマホでいっぱいの、こぢんまりした店内を珍しそうにキョロキョロ見るアメリ。スマホショップにやって来ました!


「これ、おねーちゃんが使ってる電話だよね?」


「そだよー。スマホね。今日はよい子のアメリちゃんに、スマホを買ってあげちゃいまーす」


「おおお~!」


 瞳をキラキラさせて、私を見上げる。


「いらっしゃいませ。本日はどういったご用件でしょうか」


 受付のお姉さんが、立ち上がり頭を下げてご挨拶。


 なんというか、この街の人たち、もうあまり猫耳人間で騒がなくなってるというか。うちの子らは、「出会えたらラッキーな、幸運の象徴」的な扱いを受けてるらしい。


 もっとも、このお姉さんもプロだから、驚きの類はおくびにも出してないってのもあるだろうけど。


「ええと、この子のためのスマホを買ってあげたいんですけど、この子本人証明書類がないもので、私の二台目として買おうかと思うんですよ」


「かしこまりました。性能では、何ギガあたりを……」


 彼女と、条件を詰めていく。たとえば、ペアレントコントロールを入れたい旨とか、データ通信が主になるであろうこととか、様々なオプションについても。


「でしたら、こちらなどいかがでしょう?」


 お姉さんが手にしたのは、一つ二つ前のモデル。なかなかお安い。


「これって、薄紫のありません? アメリ、薄紫がいいよね?」


「おおー。そだねー」


「でしたら……こちらはいかがでしょう?」


 ちょっとモデル違いの、別製品を出す彼女。ちゃんと薄紫だ。


「おお! これがいい!」


「じゃあ、決まりね。同じような色のケースもありませんか?」


「ございますよ」


 というわけで、トントン拍子に話はまとまりお買い上げ。名義は私だけど、アメリちゃんのスマホが爆誕!


「おおお~!」


「使うのは、帰ってからねー。セッティングとか、色々しなきゃいけないから」


「おおお……楽しみです!」


 アメリ、緊張しすぎ。内心苦笑してしまう。でも、それだけ憧れてたのね。買ってあげてよかったな。


 というわけで、スマホの入った箱を手に退店。


「アメリちゃん、もう一軒寄るところがあるですよ」


 南に歩いていき、「亀池堂和菓子屋」さんへ。


 真留さんに、しょーもないことでお電話して、お仕事の邪魔しちゃったからね。せめてもの誠意を見せようという。


 入店すると、相変わらず「THE・和菓子屋」と言った趣の、渋い雰囲気。


 さて、何買っていきましょうね。日持ちするのだと、おせんべいだけど……お詫びの気持ちがおせんべいってのもちょっとなあ。湿気っても困るし。


 お団子は、冷やすと固くなっちゃうし……。やはりここは、鮎最中か。冷蔵庫に入れとけば、持つでしょう。


「すみませーん、鮎最中一箱くださーい」


「はーい、ありがとうございます」


 というわけで、八個入りなりの鮎最中箱を買ったですよ。


「あとは……本でも買う?」


「うん!」


 こうして、駅ビルまで戻り、「天気のふしぎ」という本を買って帰ったのでした。

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