神奈さんとアメリちゃん

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第四百十九話 お買い物に行こう! ―前編―

公開日時: 2021年11月27日(土) 21:01
更新日時: 2022年2月27日(日) 10:44
文字数:2,635

 今日は土曜。アメリの親友である三人娘がいないわけで、どうしましょうかね。外は相変わらずの雨だし。ヤンナルネ。


 このまま原稿描くのが筋合いだけど、今週は月曜にT総行ったぐらいで、あとは食材や日用品しか買ってないや。


 するってーと、どうにも気分が塞がる。


「アメリちゃんや。今日は駅前にお買い物でも行きますか?」


 起立状態で腰に手を当て、ぐいーんと反らし愛娘に問う。


「おお!? 行きたい!」


 キラキラお目々をこちらに向けてくる。よし、仕事もなんとか遅れてないし、今日は羽根を伸ばそう!


 あ、そうだ。せっかくだから……。スマホを手に取る。


「もしもし」


「おはようございます。これから駅前にお買い物に行こうと思うのですけど、ご一緒にいかがでしょうか」


 お相手は近井さん。旅は道連れ、世は情け。お誘いしてみましょう。


「いいですね! 友美も喜ぶと思います。では、バスで向かいますので……」


「あ、よろしければ私の車でお迎えに上がりますよ」


 彼女も、非自家用車勢か。


「すみません、チャイルドシート、持ってないんです」


 あや。それは困ったな。


「でしたら、私もバスで行きますので」


「すみません、お手数かけます」


 というわけで、十一時にバス停で合流することとなりました。着替えとメイクだけ済ませて、ギリギリまで原稿描いてましょ。



 ◆ ◆ ◆



「そういえば明後日、角照さんのおうちにお邪魔することになってまして」


 降車後、まずは食事しましょうということになり、「るるる」に向かいながら雑談を交わしていると、近井さんからそんな話が飛び出しました。


「皆さん、きっと喜びますよー。それぞれタイプが違うけど、みんないい人たちです。特に、斎藤久美さんっていう小柄な方が、すごく子供好きでしてね。間違いなく大歓迎されますよ」


 ニコニコと、微笑みながら応える。「楽しみです」と、彼女も楽しそう。


 アメリとともちゃんは、猫について話してる模様。猫についてレクチャーする猫耳幼女……シュール。


「そういえば、近井さんは何か動物を飼われた経験は、おありですか?」


 信号待ちで、ふと子供たちの会話で気になったことを問う。


「我が家……実家のほうですけど、セキセイインコ飼いなんですよ。ただ、結婚したのと友美が生まれましたから、実家を離れて以来は特に飼ってないですね」


「なるほど。これは素直に興味から伺うんですけど、小鳥の魅力ってなんですか?」


 信号が変わったので、横断歩道を渡る。


「小鳥、小さくて表情もよくわからないじゃないですか。それなのに、ちゃんと一羽一羽、個性や感情があるんですよ! 多分、小鳥の魅力って飼ってみないと、わかりづらいんじゃないかなって思います」


「そんなに個性的なんですか」


「それはもう!」


 おお、自信に満ち溢れたお声。そんなにかー。


「うちの亡くなった子たちも、鳥人間になって生き返ってくれたらなあって思います。どの子も思い出深くて」


 一転して、ちょっと寂しそう。


「なんだかすみません」


「いえいえ! 猫崎さんが謝るようなことでは!」


 慌ててフォローする彼女。


 でも、猫だけアメリたちのように生き返るってのも、ほかの動物の飼育者にとっては切ない話だろう。女神様にも、専門分野みたいのがあるのかな。やっぱり、ちょっと申し訳ない気分になる。


「セキセイってことは、やっぱりよくおしゃべりするんですよね?」


「あー、うち多頭飼いでしたから、男の子でもあまり喋らなかったんです」


 へー。多頭飼いすると喋らないのか。


「インコの世界も奥深いですねえ」


「ですです。本当に、奥深いですよ」


 そんなインコトークを繰り広げているうちに、四階に到着!


 おなじみ、「パルの木々オムライス屋さん」へ。


 思えば、アメリと初めて外食したのもここだっけ。あれから、もう一年近く経ったんだ。ここで、私も一人暮らしが長すぎて忘れていた、「いただきます」と「ごちそうさま」を教えたんだよね。


 アメリちゃん、ドミグラスソースオムライスひと口と、サラダが食べられなくて、後日別の店でリベンジしたんだっけ。


 すごく懐かしいような、つい昨日のことのような。そんな不思議な感覚になる。


 SSサイズで満腹になっていたアメリ。あれからずいぶん大きくなったな。こないだT総で測ったところ、身長が百三十三センチちょいになっていた。転生したての頃は、百三十センチもなかったのに。


「近井さん、子供の成長って早いですねえ」


「ええ、本当に」


 互いに、我が子の成長の記録を話し合う。


「おねーちゃん、頼んでいい?」


 あ、いけない。ついおしゃべりに夢中で注文のこと忘れてた。


「いいよー。何にする?」


 自分でもメニューを眺めながら、愛娘に問う。


「ドミグラスソース!」


「りょーかい。SSでいいよね? 足りなかったらちょっと分けてあげるから。私はオーソドックスにケチャップSのレディースセットにしようかな」


 多分、アメリも昔みたいにSSではギブアップしないだろうからね。少し多めにセットでいこう。


 近井さんたちも、同じのに決めたようです。おそろっていいね!


 店員さんに、さっそく注文。飲み物は、私はアイスコーヒー、近井さんはアイスティーに決定。


 オムライスを待つ間、再度おしゃべりに興じることに。ともちゃんは幼稚園や保育園に行ってなかったけど、来年の春から、ピカピカの小学一年生になるそうで。近井さんは独自にひらがな・カタカナや数字、ハサミなどの使い方を教えているそうです。


 「やはり、幼稚園や保育園に預けるべきだったでしょうか」と不安がる彼女。それに対し、「大丈夫ですよ」と笑顔で請け負う。根拠があるわけではないけれど、これだけ社交的な子なら、上手くやっていけるはずだ。


 逆に私は、亀の歩みの人権法について、不安を話す。「大丈夫ですよ」と、同じく笑顔で返してくる。彼女も私と同じく、楽天家なのかな。でも、ありがたいお言葉だ。


 署名を集めるという話なんかに発展した場合は、協力していただける旨もおっしゃってくださった。


 そうこうしているうちに、オムライス到着。みんなでいただきますを言い、美味しく食べるのでした。


 やはりというか、アメリがサラダとオムライスを一口ずつおねだりしてきたので、プレゼント。ふふ、元気元気。よく食べて、大きく育ってね!


 ゆっくり食後のドリンクを飲んでいると、店が混みだしてきました。お昼回っちゃったか。


「そろそろ退散したほうが良さそうですね?」


「そうですね。早く飲んじゃいましょう」


 急いでドリンクを片付け、完食。ごちそうさまを言い、お会計を済ませ、とりあえず外に出るのでした。

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