「はーい……お、アメリちゃんにノーラちゃん。今開けるね」
門のロックを外すと、入ってくる彼女たちがモニタに映る。
「ミケー。アメリちゃんとノーラちゃん、来たよー」
「今行く! 待って!」
ソファから慌てて立ち上がり、こちらへやってくる我が娘。
一緒に、玄関にアメリちゃんたちを迎えに行く。
「こんにちはー!」
「こんちわー!」
ドアを開けると、二人が元気に挨拶してくるので、あたしたちも挨拶を返し、中に招き入れる。
「クロちゃん、家が遠いからなー。あ、お菓子と飲み物出すね」
「優輝おねーちゃん。アメリ、おやつ済ませちゃってる」
困った様子のアメリちゃん。
「そっかー。ノーラちゃんは?」
「アタシはまだだぞー」
「なるほど。じゃあ、アメリちゃんは……紅茶でいい? それとも、コーラぐらいいっとく?」
最近は神奈さんのうちではなく、我が家に子供たちが集まることが多いので、彼女らの好みの飲み物を常備している。
「紅茶で大丈夫!」
「りょーかい」
飲み物と、適当なおやつを取りに、キッチンへ。
チョコレートと飲み物を手にリビングに戻ると、ミケがスマホで誰かと話していた。
「あ、ちょうど良かった。優輝、クロが近井おかーさんたちとばったり出会ったらしくて、一緒に来てもいいかっていうんだけど」
「うちは、別に構わないよ」
「わかった。あのね、OKだって……」
広い我が家に感謝だね。思い切って、シェアハウスに住んでみて良かったなあ。これで一人頭、家賃六万円は安い。
「お、ちびっこたち。おーっす!」
自室から出てきた久美さんが、子どもたちと挨拶を交わす。
「休憩ですか?」
「あっちのビール切らしたから、取りに来た」
久美さんの自室には小型冷蔵庫があって、そこに色々お酒を常備している。
「でも、せっかくだから、ちびっこたちと戯れるのもいいな。何かして遊ぶか?」
「久美、悪いけど、今日は子供だけで遊ぼうかなって考えてるのよ」
「そっか、残念だな。じゃあ、ウチは酒取ってきたら作曲に戻るわ」
ぺったんぺったんと、キッチンに向かう。
そうこうしているうちに、チャイムが鳴る。
立ち上がろうとするミケを、「三人で話してなよ」と制し応対すると、クロちゃんと近井さんと、ともちゃんだったので、再度門を開け、玄関まで迎えに行く。
「こんにちは」
ぺこりとお辞儀するクロちゃん。
「こんにちはー!」
「こんにちは。すみません、急にお邪魔してしまって」
近井さん親子も、ご挨拶。
「こんにちは。いえいえ、大丈夫ですよ。とりあえず、中へどうぞ」
案内し、「飲み物、持ってきますね」と、再びキッチンへ。
途中、久美さんとすれ違う。
「今度は、コレでいくぜ~」
楽しそうに、ロックグラスとウィスキーを掲げる久美さん。
相変わらず、酒豪ですねえ。ウィスキー飲みながら仕事ができるんだから、大したもんです。
ともかく、飲み物を手にダイニングを出ると、由香里とばったり。
「やあ。飲み物でも取りに?」
「そうだったんだけど、下に降りてみたら、お客さん来てるじゃない? だから、お菓子でも焼こうかなって」
「あー、気が向いたところごめん。さっき、チョコレート出したんだ」
「えー。残念だなあ。よし、じゃあ、お土産に持ってもらおう」
うんうんと、頷く彼女。
「お疲れ。みんな喜ぶと思うよ」
というわけで、リビングへ。クロちゃんが中心となって、みんなで折り紙に勤しんでいる。
「良く出来てるねー」
ともちゃんの「やっこさん」がなかなか上手なので、拍手する。
「クロ、教え方上手いのよね」
アルピス・ソーダをストローで飲みつつ、友人を褒めるミケ。
この子もクロちゃんも、成長したなあ。クロちゃんは今、遊びの輪の中心に。ミケは、そんな友達を素直に立てている。
あたしの紅茶は、少しぬるくなってしまったけど、もったいないのでそのままいただく。
「近井さん、最近どんな映画観られました?」
「今、駅前で上映中の映画なんですけど……」
彼女から、大ヒット御礼な映画のタイトルを聞く。
「いいですねえ。あれ、サブスクに出回ったら見ようと思ってるんですよねー」
何か、あたしといえばB級・Z級映画しか見ないようなイメージを持たれがちなんだけど、普通にA級も見るんだよね。ザ・雑食。
まあ、B級以下のが好きか嫌いかっていったら、大好きなんだけど。
ともかくも、二人の話題が合うのがA級映画なので、無難にそちらのトークを弾ませる。
「こんちわーっす。由香里ちゃん、スマホの応答もないし、部屋にもいないんすけど、どこ行ったか知らないっすか?」
さつきが、頭上からぬっと顔を出す。
「あー、お菓子作るって言ってたから、手が汚れてるとかで、スマホ触れないんじゃない? あとは、上に置いてきちゃったとか」
「そっすか。ありがとうっす」
作画の打ち合わせかな? さつきもいい加減に見えて、仕事熱心だからね。
それにしても、平和だなあ。
ゲームも順調に売れてるし、ありがたいことだね。
近井さんとの映画トークを、さらに弾ませるのでありました。
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