神奈さんとアメリちゃん

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おまけ編・その二 かくてるハウスの、何ごともない平和な一日

公開日時: 2022年4月20日(水) 21:01
文字数:2,009

「はーい……お、アメリちゃんにノーラちゃん。今開けるね」


 門のロックを外すと、入ってくる彼女たちがモニタに映る。


「ミケー。アメリちゃんとノーラちゃん、来たよー」


「今行く! 待って!」


 ソファから慌てて立ち上がり、こちらへやってくる我が娘。


 一緒に、玄関にアメリちゃんたちを迎えに行く。


「こんにちはー!」


「こんちわー!」


 ドアを開けると、二人が元気に挨拶してくるので、あたしたちも挨拶を返し、中に招き入れる。


「クロちゃん、家が遠いからなー。あ、お菓子と飲み物出すね」


「優輝おねーちゃん。アメリ、おやつ済ませちゃってる」


 困った様子のアメリちゃん。


「そっかー。ノーラちゃんは?」


「アタシはまだだぞー」


「なるほど。じゃあ、アメリちゃんは……紅茶でいい? それとも、コーラぐらいいっとく?」


 最近は神奈さんのうちではなく、我が家に子供たちが集まることが多いので、彼女らの好みの飲み物を常備している。


「紅茶で大丈夫!」


「りょーかい」


 飲み物と、適当なおやつを取りに、キッチンへ。


 チョコレートと飲み物を手にリビングに戻ると、ミケがスマホで誰かと話していた。


「あ、ちょうど良かった。優輝、クロが近井おかーさんたちとばったり出会ったらしくて、一緒に来てもいいかっていうんだけど」


「うちは、別に構わないよ」


「わかった。あのね、OKだって……」


 広い我が家に感謝だね。思い切って、シェアハウスに住んでみて良かったなあ。これで一人頭、家賃六万円は安い。


「お、ちびっこたち。おーっす!」


 自室から出てきた久美さんが、子どもたちと挨拶を交わす。


「休憩ですか?」


「あっちのビール切らしたから、取りに来た」


 久美さんの自室には小型冷蔵庫があって、そこに色々お酒を常備している。


「でも、せっかくだから、ちびっこたちと戯れるのもいいな。何かして遊ぶか?」


「久美、悪いけど、今日は子供だけで遊ぼうかなって考えてるのよ」


「そっか、残念だな。じゃあ、ウチは酒取ってきたら作曲に戻るわ」


 ぺったんぺったんと、キッチンに向かう。


 そうこうしているうちに、チャイムが鳴る。


 立ち上がろうとするミケを、「三人で話してなよ」と制し応対すると、クロちゃんと近井さんと、ともちゃんだったので、再度門を開け、玄関まで迎えに行く。


「こんにちは」


 ぺこりとお辞儀するクロちゃん。


「こんにちはー!」


「こんにちは。すみません、急にお邪魔してしまって」


 近井さん親子も、ご挨拶。


「こんにちは。いえいえ、大丈夫ですよ。とりあえず、中へどうぞ」


 案内し、「飲み物、持ってきますね」と、再びキッチンへ。


 途中、久美さんとすれ違う。


「今度は、コレでいくぜ~」


 楽しそうに、ロックグラスとウィスキーを掲げる久美さん。


 相変わらず、酒豪ですねえ。ウィスキー飲みながら仕事ができるんだから、大したもんです。


 ともかく、飲み物を手にダイニングを出ると、由香里とばったり。


「やあ。飲み物でも取りに?」


「そうだったんだけど、下に降りてみたら、お客さん来てるじゃない? だから、お菓子でも焼こうかなって」


「あー、気が向いたところごめん。さっき、チョコレート出したんだ」


「えー。残念だなあ。よし、じゃあ、お土産に持ってもらおう」


 うんうんと、うなずく彼女。


「お疲れ。みんな喜ぶと思うよ」


 というわけで、リビングへ。クロちゃんが中心となって、みんなで折り紙に勤しんでいる。


「良く出来てるねー」


 ともちゃんの「やっこさん」がなかなか上手なので、拍手する。


「クロ、教え方上手いのよね」


 アルピス・ソーダをストローで飲みつつ、友人を褒めるミケ。


 この子もクロちゃんも、成長したなあ。クロちゃんは今、遊びの輪の中心に。ミケは、そんな友達を素直に立てている。


 あたしの紅茶は、少しぬるくなってしまったけど、もったいないのでそのままいただく。


「近井さん、最近どんな映画観られました?」


「今、駅前で上映中の映画なんですけど……」


 彼女から、大ヒット御礼な映画のタイトルを聞く。


「いいですねえ。あれ、サブスクに出回ったら見ようと思ってるんですよねー」


 何か、あたしといえばB級・Z級映画しか見ないようなイメージを持たれがちなんだけど、普通にA級も見るんだよね。ザ・雑食。


 まあ、B級以下のが好きか嫌いかっていったら、大好きなんだけど。


 ともかくも、二人の話題が合うのがA級映画なので、無難にそちらのトークを弾ませる。


「こんちわーっす。由香里ちゃん、スマホの応答もないし、部屋にもいないんすけど、どこ行ったか知らないっすか?」


 さつきが、頭上からぬっと顔を出す。


「あー、お菓子作るって言ってたから、手が汚れてるとかで、スマホ触れないんじゃない? あとは、上に置いてきちゃったとか」


「そっすか。ありがとうっす」


 作画の打ち合わせかな? さつきもいい加減に見えて、仕事熱心だからね。


 それにしても、平和だなあ。


 ゲームも順調に売れてるし、ありがたいことだね。


 近井さんとの映画トークを、さらに弾ませるのでありました。

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