神奈さんとアメリちゃん

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第三百六十二話 ナポリタンとピュアランド

公開日時: 2021年9月25日(土) 21:01
文字数:2,302

 今日も今日とて、仕事を進めるワタクシ。なるべく早く下書きを終え、佐武さぶさんに回したいところ。


 佐武さんというのは、主に読み切り執筆時に助っ人をお願いしている、もう一人アシスタントさん。


 私の読み切り執筆が年一回だから、芦田さんに比べるとあまり交流は深くないけれど、芦田さんが何らかの理由で私の仕事を受けられないときは、ピンチヒッターをお願いすることもある。


 佐武さんは和歌山の人で、芦田さんといい、遠隔地の方にアシスタントを頼めるのがデジタル派のいいところです。何より、仕事場が狭くて済む。


 それにしても、アメリちゃんの朝ごはん美味しかった~。思わず味覚を反芻。娘の手料理をいただくなんて、親冥利に尽きますなあ。


 おっと、アラームが。朝食に思いを馳せてたら、昼食の時間が来ましたよ。早いですねえ。


「アメリちゃーん、お昼ごはんを作りに行きますよー」


「おお? 早いね、本に夢中になってた!」


 相変わらず科学読本がお気に入りのようで、今日も引き続き読んでいたようです。


「じゃ、行こうか~」


 立ち上がって、「う~ん」と腰を反らし、凝りをほぐす。


 ふう。椅子だけはほんといいの使ってるけど、それでも限界ってあるなあ。



 ◆ ◆ ◆



「さて、アメリちゃん。今日はナポリタンを教えちゃいますよ!」


「おお~。何度か食べたことあるね!」


 たしか、お子様ランチかなんかが最初でしたかね。あとは、まりあさんが倒れたとき、かくてるハウスで四人娘に振る舞ったり。


 ただ、アメリが料理を手伝うようになってからは、なんだかんだ一緒に作る機会がなくて、彼女はレシピを知らない状態。


 ま、難しい料理じゃなし、さくっと教えていきましょう!


 とりあえず、おなじみの脳内BGMオン!


「ではアメリちゃん。まずは玉ねぎの残りを薄切りにしましょう」


「はーい」


 手慣れた手付きで、昨日残った玉ねぎを切っていく娘。いやはや、大したもんだねえ。


「できたかな? 次は、ピーマンを種抜きした後、輪切りにしてね」


「らじゃー!」


 こちらも難なくこなす。


「あとは、ハムをほら、ピザトースト作ったでしょ? あのときぐらいの大きさに」


「うん!」


 ほんと、さくさく作ってくなあ。器用ですこと。


「じゃ、スパゲッティー茹でよう。やり方は、乾麺のうどんとかと同じだからできるかな?」


「任せて!」


 ぐつぐつ。二人で様子を見ながら茹でること三分。早ゆでできるタイプって便利ねえ。


「じゃ、お湯を切ってザルに揚げてー……そうそう。じゃあ、フライパンに油引いて、中火で玉ねぎを炒めましょう~」


「おおー!」


 気合を入れて、じゅうじゅう炒める愛娘。


「しんなりしてきたね。ハムとピーマンも炒めましょう~」


 さらに具材が追加される。良い手付きですよ、アメリちゃん。


「いいね! じゃあ、チューブにんにくと、ケチャップとお塩をそれぞれ『ストップ』って言うまで入れてね」


 シェフが調味料を投入していくので、それぞれにストップをかけていく。


「よし、具と一緒にさらに炒めてね。……うん、OK。あとは、スパゲティーを入れて絡めて。……はーい、完成でーす!」


「おおー! 頑張った!」


「頑張ったねー。偉い、偉い!」


 頭をなでなで。


「じゃ、盛り付けてくださいな。シェフ」


「はーい」


 私はその間に、紅茶を用意する。


 こうして、ナポリタンが食卓に並びました!


「いつもの~」


 ハイタッチの構え。


「「いえーい!」」


 パチン!


 揃って対面に着席。


「じゃ、音頭取りお願いします」


「らじゃー! いただきます!」


「はい、いただきます!」


 くるくるくる……ぱくっ。うん、ちゃんと出来てる! さっすがアメリシェフ!


「バッチリですよ、アメリちゃん。とっても美味しい!」


「ほんと!? えへへ~」


 後頭部を撫でて照れる我が娘。ほほえま~。


「ちなみに、本当はハムじゃなくてソーセージ使うことが多いんだ。まあ、そのときあるほうでやってみてね。ベーコンでも美味しいよ」


「へー。わかった!」


 うんうん、良きかな良きかな


 こうして、美味しくごちそうさま。また、アメリシェフのレパートリーが増えました。めでたしめでたし。


 食後は後片付けし、歯磨き。


 寝室に戻り、アメリに小四向け漢字の教材を渡す。


「じゃあ、これ覚えてみてね」


「はーい」


 書き取りを始めるアメリちゃん。私もお仕事再開です。


 しばし仕事に打ち込んでいると、スマホに着信が。どなたでしょ? ……優輝さんだ。


「こんにちはー。どうされました?」


「こんにちは! アメリちゃんって、ケイティちゃん好きですよね?」


「ええ」


「じゃあ、今度みんなで『ピュアランド』行きませんか? せっかくの行楽シーズンですし」


 ピュアランドは、ケイティちゃんなど、多数のマスコットキャラを生み出したメーカーの運営するテーマパーク。F市の南のT市にある。


「あら、いいですねえ。アメリ、喜ぶと思います」


 ケイティちゃんのきぐるみにはしゃぐアメリが目に浮かぶようだ。


「でしょう? じゃあ、OKということで都合の良さそうな日時ってあります?」


「土日とか、絶対混みますよねー。……用意もありますし、二十日かその翌日あたりでどうでしょう?」


「了解です! その線で白部さんとまりあさんにも打診してみますね! それでは、手短ですが失礼します!」


 おおう、疾風のように通話終了。パワフルガール。


「アメリちゃん、優輝さんがピュアランド行きましょうって誘ってきたよ」


「おお? 何それ?」


「ケイティちゃんとか、いろんなマスコットがいる遊園地~」


 すると、瞳がみるみる輝きを帯びる。


「行きたい、行きたい!」


「うん。来週辺り行きましょうって提案しといたよ」


 「おお~」と、感動の声を上げるアメリちゃん。良きかな良きかな


 ピュアランド、楽しみだなー。お天気に恵まれますように!

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