お、アラームが鳴った~。ごはんが炊けましたねえ。それじゃあ、行きまっしょい!
「アメリちゃん。レバニラ作りに行きますよー」
「はーい」
二人で、ててくてくとキッチンへ!
◆ ◆ ◆
「さて、下準備は私がだいたい済ませちゃったので、後は割とお手軽。じゃ、やっていこーか」
「おー!」
いつものように拳を突き上げるお嬢様。
「では、アメリシェフにはこのニラを半分にして、片方は三センチ幅、もう片方は五センチ幅に切ってもらいたいと思います」
「任せて!」
トン、トン、と切り始めるアメリちゃん。一方私は、お米を切った後レバーを洗い、キッチンペーパーで水気を拭き取り塩胡椒。
続いてもやしも洗い、水気をよく切る。
「できた!」
「はーい、ありがとー。それぞれ別のボウルに入れといてね」
ニラレバとはいうけれど、ニラひと束は多すぎる。なので、半分ぐらいニラ玉スープにしてしまうため、鍋にお湯を沸かす。
「アメリちゃんにはスープをお願いしようかな。鶏ガラスープの素を小さじ二杯と、お塩を小さじ三分の一杯お湯に入れて、混ぜてくれるかな?」
アメリが使う前に、素早くレバニラ用の調味液を調合。その分量、水大さじ三杯、お醤油大さじ二杯、料理酒、お砂糖、オイスターソース大さじ一杯ずつ、鶏ガラスープの素と片栗粉を小さじ半分ずつ。
「はーい」
おさじと調味料を受け取り軽量・投入し、おたまでかき回すアメリちゃん。
「次に、卵二個を割って、溶き卵にしてくれる?」
「こう?」
まだ両手式だけど器用に卵を割り、溶き卵を作る。
「オッケーです。お湯が沸騰したね。その卵を入れながら、おたまでかき混ぜてくれる? あ、卵を入れるときは回し入れてね」
「こうかな?」
言われた通りにこなす彼女。
「お上手! じゃあ、ちょっと待っててね」
サラダ油を引いたフライパンを熱し、片栗粉をまぶしたレバーを投入! 両面焼き~。
「卵がいい感じになったね。じゃあ、三センチのほうのニラを入れてくれるかな?」
ボウルからニラが投入される。
「かき回しながら火を通してね」
私のほうは、一度レバーを取り出し、チューブにんにくとチューブしょうがを炒め、香りが立ってきたら五センチニラともやしを投入~。
アメリちゃんのほうも、「おお~」と言いながらお鍋をかき回している。
「オッケーです。私がいいって言うまで胡椒を振って。……いいよ、そこまで! あとは、ごま油を小さじニ杯入れてね。それで完成だよ」
私もレバーを再投入して炒め、調味液をかけ混ぜてフィニッシュ!
「はーい、一緒に完成したね! お疲れ様でした~。じゃ、よそいましょう。これは私がやるね」
レバニラを盛り付け、スープとごはんをよそい、中華のお供・烏龍茶を注いで配膳。
エプロンを外し対面に腰掛け、いつもの状態に。
「それじゃあ、いただきます!」
「いただきます!」
まずはレバニラから~。うーん、美味しい! ビタミン・鉄分も豊富で、健康の味方!
「アメリ、レバーはどう?」
「結構、美味しいと思う!」
お、気に入ってくれましたか。良き哉良き哉。
そして、アメリちゃん謹製スープをごくり。うーん、美味しい! 見事なお点前です、アメリシェフ。
「アメリー。スープも美味しいよ~」
「ほんと!?」
嬉しそうに瞳をキラキラ輝かせる。ほほえま~。
「ごちそうさまでした」
合掌。今日も命たちに感謝を。
少し遅れて、アメリもごちそうさま宣言。
「じゃ、片付けたら歯を磨きましょうね」
「はーい」
近いうちに、食洗機の使い方も教えたほうがいいかな? まあ、機会を見て教えましょ。
食休み兼お仕事の後は、おなじみダンスタイム! あーん、ほんと全然勝てない~。若さが羨ましいわ~。それとも、猫耳人間特有の才能みたいなものかしらね? 多分、その両方かな。
そしてお風呂。思うのだけど、ふぐたくんって海産物ファミリーで唯一人お風呂場にぽつんんといて可哀想よね。
「アメリ、ふぐたくんのお友達とか欲しかったりする?」
「おお? 買ってくれるの!?」
「うん。ふぐたくんも寂しいかなーって思って」
「おお~! 良かったね、ふぐたくん!」
赤く染まったふぐたくんを、撫で撫でするアメリちゃん。こんな可愛いムーブもあと一、二年もしたらしなくなっちゃうのかな。それはちょっと寂しいけれど、我が子の成長を喜ばなければね。気が早いか。
ふう、いいお湯でした。交互にお互いの髪をドライヤーで乾かし、キッチンで烏龍茶の残りを呷る。湯上がりの冷たい飲み物はサイコーね!
寝室に戻り、何か来てないだろうかとLIZEを立ち上げると、グループチャットに白部さんが明日、明後日留守にすること、そして個人チャットにりんちゃんからメッセージが。おや、久しぶりね~。しかも、文面が「私たち、もうダメかもしれない……」ときたもんだ。
だいたい、りんちゃんがこういうメッセージをよこしてくるときは、旦那さんと些細なことで揉めたときなんだな。で、互いに少し頭が冷えると、前以上に仲良くなったって知らせてくるのよね。
ガス抜き大事。愚痴を聞いてあげますかー。
「りんちゃん、こんばんは。話聞くよー」
ややあって、メッセージが返ってくる。
「かんちゃん~。私たちもうダメだ~! 今日、美容院行ったのよ。なのに、連夫さんったら、全然気づいてくれないのよ? ひどくなーい? 夫婦の危機だわ!」
思った以上に、しょうもない理由だった! ちなみに、連夫というのは旦那さんの名前。
「あー、それはショックだねー。ところで、仕事したいから通話でいい?」
でもここは、頭ごなしに否定しないのがポイント。で、ついでに通話でいいか打診。
「あ、じゃあ供子から離れるね。もう、寝ちゃったの」
寝る子は育つ。というわけで、ややあってからコールが来ました。
しばらく先ほどの愚痴からさらに細かい日頃の愚痴につながっていき、そして「でもね、休日にはちゃんと供子の面倒見てくれるし、こないだは私の好きなガーベラの花束贈ってくれたんだー」と、旦那自慢にシフトしていくのが毎度のお約束。
りんちゃんの場合、とにかく最初の愚痴部分に心を込めて付き合ってあげることが大事なのだ。そうすると自然に自己解決して落ち着くんだな、この子は。
「ふう。ありがとね、かんちゃん。話したら、もう一度やり直せるかもって思えてきたよ!」
「うんうん。悩みが解決したようで何より! またなんかあったら、話聞くから」
「うん、ありがとう。そういえば、雨子ちゃんだっけ? あの子どうしてるのかな?」
う、覚えてらっしゃいますか……。
「あー、ちょっとわけありで……まだ預かってるんだ」
「そっかー。あんまり事情訊かないほうがいいかな?」
「うん、そうしてもらえると助かるかなー。ごめんね」
「ううん、事情って色々あるものね。じゃあ、また!」
ふう、通話終了。彼女があまり詮索しないタイプで助かる。さすが我が幼馴染。
アメリのこと、公にできる日が来るといいなあ。そんなことを、ベッドに腰掛け読書している愛娘を見て思うのでした。
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