神奈さんとアメリちゃん

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第二百三十話 みんなでチョコ作り! ―後編―

公開日時: 2021年5月11日(火) 22:01
更新日時: 2021年5月22日(土) 06:45
文字数:2,757

 よっ! ほっ! とっ!


 お昼ができるまで、みんなでダンスゲーム大会。


 現在ミケちゃんと対戦中だけど、これがどうにもこうにも大苦戦。


 結局、いいとこなしのまま完全敗北してしまいました。とほほ。


「いやー、やっぱミケちゃん上手いわ」


「大丈夫。神奈おねーさんも、前より上達してるわよ」


 ううむ、幼女に優しい眼差しで慰められてしまった。


 両者の健闘を称える拍手の中、「おねーちゃんのカタキはアメリが取るよー!」と、うちのお嬢様が立候補。どこで覚えたのかしら、そんな言い回し。


 アメリは善戦するも、やはり達人ミケ先生には勝てず。それじゃあってんで、優輝さんが姉妹対決を挑むも、健闘惜しく敗北。


「いやー。親バカですけど、やっぱりミケはこういうの天才的ですね」


 うんうんと感慨深げにうなずく優輝さん。


 その後も次々にチャレンジャーが挑むものの、女王ミケちゃんの牙城は崩せず。


 そうこうしているうちに「できたぜー」と、久美さんがやってきて声をかけてくる。


 結局、大会はミケちゃんのストレート勝ちで終わりました。さすが、アイドル志望。



 ◆ ◆ ◆



 ダイニングに着くと、カレイの煮つけとお味噌汁、カブときゅうりの浅漬け、カブとそぼろのあんかけ、そしてお茶が並べられていました。ただし、一席だけお茶の代わりに小瓶の日本酒とコップが……。


 「みんな楽しそうだったから、先に配膳しちゃったよ」とは久美さんの弁。


 なんというか、居酒屋みたいなメニューが並ぶと思ってたから、ちょっと意外なラインナップ。


「神奈サン、意外~って顔だね?」


「あ、いいえいいえ! そんなことは!」


「いいっていいって。居酒屋みたいなの想像してたんしょ? ウチ、割と和食党でさ、自分で食いたいの作ったらこうなったんよ」


 へー。そういえばお部屋も和室だし、柔道家だし、言われてみれば意外でもないな。あと、優輝さんのピザ連発に苦情を言っていたのも得心がいった。……まあ、優輝さんは優輝さんで、お話聞く限りピザ焼きすぎだと思うけど。


「ま、冷めないうちに食っちゃって」


 彼女が着席したので、皆も着席。


「そんじゃー、いただきます!」


 久美さんの掛け声で、いただきますの合唱。


 まずは、メインのカレイから……。ん、いいお味! 美味しい~。卵がまた、ほろほろしてていいわよね。


 続いて、あんかけ。これまた、だしが利いてて滋味深い。和食のお惣菜ならではの、純朴なお味が実にいい。


 ここでお味噌汁。こちらは、おネギと薄揚げ油揚げ。これも実に良い塩梅。人数が多いから、皆の舌に合うように作ってある感じね。


 で、お漬物といきたいけれど。


「厚かましくて恐縮ですけど、ごはんのおかわりとかいただいてしまって良いでしょうか?」


 おずおずと訊いてみる。


「いいけど、この後チョコ祭りだぜ、神奈サン」


 そうでした! 危ない危ない。


「うっかりしてました。お漬物はお茶でいただきますね」


 というわけで、お漬物はお茶請けに。うんうん、いい塩加減。これをお茶で流すと、さっぱり&さっぱりの好循環!


「ごちそうさまでした」


 美味しすぎて、あっという間に食べ終わってしまった。久美さんは優輝さんと由香里さんがツートップとおっしゃるけれど、謙遜だと思う。かくてるの皆さん、それぞれにお料理が上手だわ。


 人心地ついてほかの皆さんも見ると、やはりご満足そう。うちのアメリも、夢中で食べている。


 というわけで、全員食べ終わりごちそうさま。「じゃ、また遊んでてちょーだい。食洗機に放り込んだら合流するから」とおっしゃる久美さんを残し、再度リビングへ。


 食後に激しい運動ダンスゲームもどうかという話になり、優輝さんが「じゃあ、映画見ましょう!」といそいそと二階に上がっていったものの、由香里さんが慌てて後を追いかけ、しばらくして有名な名作映画のBDを手に二人が戻ってきました。不服そうな顔の優輝さん。二人の間に一体何が……。まあ、だいたい察しがつくけど。


 その間に久美さんも合流し、映画を楽しむ私たち。テレビでも頻繁に放映されている有名アニメスタジオの映画で、私も子供の頃から何度も見たことがあるもの。クライマックスシーンで、超有名な「滅びの言葉」を合唱する我々大人組。子供たちも、とても楽しんでいるようだ。


 そしてエンディング。ふう、名作は何度見ても面白いね。


 チョコが固まるまでの残り一時間、何をしていようという話になり、これといっていい案も出なかったので雑談タイムに。


 私たちチョコに絵や文字を書く勢はここで一旦別行動。


「じゃあ、猫さんにお顔描いていこうねー」


「おおー!」


 拳を突き上げるアメリちゃんに二本めのチョコペンを手渡す。ちなみに、由香里さんもチョコに細工をする模様。


「由香里さんは何を書かれるんですか?」


「花形なので、中心部分を描く感じですね」


 なるほど。良きかな良きかな


「じゃあアメリ、まずは見本を一個作るね」


 そう言って、ケイティちゃんの顔を描く。


「おおー! ケイティちゃん!」


「じゃ、一緒に描いていこう~」


 一緒に、ケイティちゃんを増やしていく。……ふう、完成!


「お疲れ様! いえーい!」


「いえーい!」


 パチンと手を打ち合わせる。


「ふふ、可愛いですね」


「ありがとうございます。ケイティちゃん、可愛いですよね」


「あ、いえ。それも可愛いんですけど、お二人のリアクションが」


 うにゅう。つい、家のノリで。急に照れくさくなってしまう。


「わたしは終わりましたので、お先に戻らせていただきますね」


 一礼して、由香里さんがリビングへ向かう。


「おねーちゃん、アメリたちも戻ろー」


「あ、うん。最後にちょっとだけやることがあるから、先戻ってて」


「おお? わかったー」


 とてとてと去っていくアメリ。さて、上手く書けるといいんだけどな。……よし、上手く書けたかな? 私も戻りましょ。



 ◆ ◆ ◆



 というわけで、雑談を終え、チョコを型から取り出す段に。


「皆さん取り出せましたか? それじゃあ、友チョコ交換会といきましょう!」


 優輝さんの音頭取りに一同「はーい」と答え、様々な形のチョコを交換し合う。いやー、小型とはいえチョコ十個はなかなかの量ね!


「はい、アメリにはこれ」


 ハート型のチョコを渡す。


「ありがとー! おお? なんか書いてある。ローマ字っぽいけど読めない……。優輝おねーちゃん、読めるー?」


 あ、ちょっ! 見せちゃダメぇ!!


Loving youラビン・ユー……あなたを愛していますって意味だよ。いやー、神奈さん愛が深いですね!」


 両手で顔を覆う。あーもう、恥ずかしい~!


「おお~! おねーちゃんありがとう! アメリもおねーちゃん愛してる!」


 ぎゅっと抱きしめられる。うう、嬉しいけど恥ずかしいよお~。


「ありがとう、アメリ」


 努めて平静を装いアメリの頭を撫でると、「うにゅう」ととろけ声を出す。


 こんなこっ恥ずかしい出来事があったものの、チョコ作り&交換会は無事終了。


 持ち帰るぶんをホイルで包み、帰宅するのでした。

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