よっ! ほっ! とっ!
お昼ができるまで、みんなでダンスゲーム大会。
現在ミケちゃんと対戦中だけど、これがどうにもこうにも大苦戦。
結局、いいとこなしのまま完全敗北してしまいました。とほほ。
「いやー、やっぱミケちゃん上手いわ」
「大丈夫。神奈おねーさんも、前より上達してるわよ」
ううむ、幼女に優しい眼差しで慰められてしまった。
両者の健闘を称える拍手の中、「おねーちゃんのカタキはアメリが取るよー!」と、うちのお嬢様が立候補。どこで覚えたのかしら、そんな言い回し。
アメリは善戦するも、やはり達人ミケ先生には勝てず。それじゃあってんで、優輝さんが姉妹対決を挑むも、健闘惜しく敗北。
「いやー。親バカですけど、やっぱりミケはこういうの天才的ですね」
うんうんと感慨深げに頷く優輝さん。
その後も次々にチャレンジャーが挑むものの、女王ミケちゃんの牙城は崩せず。
そうこうしているうちに「できたぜー」と、久美さんがやってきて声をかけてくる。
結局、大会はミケちゃんのストレート勝ちで終わりました。さすが、アイドル志望。
◆ ◆ ◆
ダイニングに着くと、カレイの煮つけとお味噌汁、カブときゅうりの浅漬け、カブとそぼろのあんかけ、そしてお茶が並べられていました。ただし、一席だけお茶の代わりに小瓶の日本酒とコップが……。
「みんな楽しそうだったから、先に配膳しちゃったよ」とは久美さんの弁。
なんというか、居酒屋みたいなメニューが並ぶと思ってたから、ちょっと意外なラインナップ。
「神奈サン、意外~って顔だね?」
「あ、いいえいいえ! そんなことは!」
「いいっていいって。居酒屋みたいなの想像してたんしょ? ウチ、割と和食党でさ、自分で食いたいの作ったらこうなったんよ」
へー。そういえばお部屋も和室だし、柔道家だし、言われてみれば意外でもないな。あと、優輝さんのピザ連発に苦情を言っていたのも得心がいった。……まあ、優輝さんは優輝さんで、お話聞く限りピザ焼きすぎだと思うけど。
「ま、冷めないうちに食っちゃって」
彼女が着席したので、皆も着席。
「そんじゃー、いただきます!」
久美さんの掛け声で、いただきますの合唱。
まずは、メインのカレイから……。ん、いいお味! 美味しい~。卵がまた、ほろほろしてていいわよね。
続いて、あんかけ。これまた、だしが利いてて滋味深い。和食のお惣菜ならではの、純朴なお味が実にいい。
ここでお味噌汁。こちらは、おネギと薄揚げ。これも実に良い塩梅。人数が多いから、皆の舌に合うように作ってある感じね。
で、お漬物といきたいけれど。
「厚かましくて恐縮ですけど、ごはんのおかわりとかいただいてしまって良いでしょうか?」
おずおずと訊いてみる。
「いいけど、この後チョコ祭りだぜ、神奈サン」
そうでした! 危ない危ない。
「うっかりしてました。お漬物はお茶でいただきますね」
というわけで、お漬物はお茶請けに。うんうん、いい塩加減。これをお茶で流すと、さっぱり&さっぱりの好循環!
「ごちそうさまでした」
美味しすぎて、あっという間に食べ終わってしまった。久美さんは優輝さんと由香里さんがツートップと仰るけれど、謙遜だと思う。かくてるの皆さん、それぞれにお料理が上手だわ。
人心地ついてほかの皆さんも見ると、やはりご満足そう。うちのアメリも、夢中で食べている。
というわけで、全員食べ終わりごちそうさま。「じゃ、また遊んでてちょーだい。食洗機に放り込んだら合流するから」と仰る久美さんを残し、再度リビングへ。
食後に激しい運動もどうかという話になり、優輝さんが「じゃあ、映画見ましょう!」といそいそと二階に上がっていったものの、由香里さんが慌てて後を追いかけ、しばらくして有名な名作映画のBDを手に二人が戻ってきました。不服そうな顔の優輝さん。二人の間に一体何が……。まあ、だいたい察しがつくけど。
その間に久美さんも合流し、映画を楽しむ私たち。テレビでも頻繁に放映されている有名アニメスタジオの映画で、私も子供の頃から何度も見たことがあるもの。クライマックスシーンで、超有名な「滅びの言葉」を合唱する我々大人組。子供たちも、とても楽しんでいるようだ。
そしてエンディング。ふう、名作は何度見ても面白いね。
チョコが固まるまでの残り一時間、何をしていようという話になり、これといっていい案も出なかったので雑談タイムに。
私たちチョコに絵や文字を書く勢はここで一旦別行動。
「じゃあ、猫さんにお顔描いていこうねー」
「おおー!」
拳を突き上げるアメリちゃんに二本めのチョコペンを手渡す。ちなみに、由香里さんもチョコに細工をする模様。
「由香里さんは何を書かれるんですか?」
「花形なので、中心部分を描く感じですね」
なるほど。良き哉良き哉。
「じゃあアメリ、まずは見本を一個作るね」
そう言って、ケイティちゃんの顔を描く。
「おおー! ケイティちゃん!」
「じゃ、一緒に描いていこう~」
一緒に、ケイティちゃんを増やしていく。……ふう、完成!
「お疲れ様! いえーい!」
「いえーい!」
パチンと手を打ち合わせる。
「ふふ、可愛いですね」
「ありがとうございます。ケイティちゃん、可愛いですよね」
「あ、いえ。それも可愛いんですけど、お二人のリアクションが」
うにゅう。つい、家のノリで。急に照れくさくなってしまう。
「わたしは終わりましたので、お先に戻らせていただきますね」
一礼して、由香里さんがリビングへ向かう。
「おねーちゃん、アメリたちも戻ろー」
「あ、うん。最後にちょっとだけやることがあるから、先戻ってて」
「おお? わかったー」
とてとてと去っていくアメリ。さて、上手く書けるといいんだけどな。……よし、上手く書けたかな? 私も戻りましょ。
◆ ◆ ◆
というわけで、雑談を終え、チョコを型から取り出す段に。
「皆さん取り出せましたか? それじゃあ、友チョコ交換会といきましょう!」
優輝さんの音頭取りに一同「はーい」と答え、様々な形のチョコを交換し合う。いやー、小型とはいえチョコ十個はなかなかの量ね!
「はい、アメリにはこれ」
ハート型のチョコを渡す。
「ありがとー! おお? なんか書いてある。ローマ字っぽいけど読めない……。優輝おねーちゃん、読めるー?」
あ、ちょっ! 見せちゃダメぇ!!
「Loving you……あなたを愛していますって意味だよ。いやー、神奈さん愛が深いですね!」
両手で顔を覆う。あーもう、恥ずかしい~!
「おお~! おねーちゃんありがとう! アメリもおねーちゃん愛してる!」
ぎゅっと抱きしめられる。うう、嬉しいけど恥ずかしいよお~。
「ありがとう、アメリ」
努めて平静を装いアメリの頭を撫でると、「うにゅう」ととろけ声を出す。
こんなこっ恥ずかしい出来事があったものの、チョコ作り&交換会は無事終了。
持ち帰るぶんをホイルで包み、帰宅するのでした。
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