神奈さんとアメリちゃん

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第三百四十九話 しまだくんの真実!

公開日時: 2021年9月12日(日) 21:01
文字数:2,692

 お二人を宇多野邸へ送り届けた後は、私たちも帰宅。


 家に着くと、うちのお姫様がほんと眠たそう。


「もう、おうちですよー。もうちょっとだけ頑張ろー?」


「おお~……。頑張る……」


 落ちそうになるまぶたを何度もこすりながら、屋内に向かうアメリちゃん。手洗いだけ終えさせ、「寝すぎると夜眠れなくなっちゃうから、一時間経ったら起こすからね」と、着の身着のままベッドに横にならせるのでした。


 おなじみの撮影会したいけど、後回しだね、こりゃ。


 とりま、お仕事に打ち込みましょ。タイム・イズ・マネー! ……常盤兼成ときわ・かねなりなんて架空のお侍さん、いつか読み切りで出してみようかしらね。



 ◆ ◆ ◆



 おっと、アラームが鳴りました!


「アメリちゃーん、起きてくださーい。一時間経ちましたよー」


 いい感じに爆睡していた愛娘を、揺すり起こす。ちょっと可哀想だけど、これも昼夜逆転防止のため。ごめんねー。


「ん……おお~……? おはよ……」


 寝ぼけ眼をこすり、ゆっくり起き上がる眠り姫。


「おはよーさん。ごめんね。これ以上寝かせると、夜眠れなくなるからね」


「顔洗ってくる……」


 とぼとぼと廊下の向こうに歩いていくアメリちゃん。まったく、「あと一時間~」とか言ってぐずらないのは偉いわ。どこかの漫画家も見習うべきね。


 自虐はさておき、お仕事再開! あの調子じゃ、まだ撮影会って感じじゃないものね。早く撮りたいなあ。


「ただいまー……」


 のっそのっそと戻ってくる愛娘。くはあ~なんて、猫時代を思い出させる大あくびしちゃって。


「おかえり。また横になっちゃダメよ?」


「はーい」


 とりあえず頭がまだ回らないのか、受動的に楽しめるテレビを見ることにしたようです。そして、たまに大あくび。本当に、朝とそれ以外で対照的ね、私たち。


 こりゃ、撮影会までだいぶかかりそうだね。



 ◆ ◆ ◆



「ん~っ……!!」


 座椅子で、ぐいーんと伸びをするアメリちゃん。もう、声に寝ぼけた感じがないね。


「しゃっきりしましたか」


「うん。もうだいじょぶ~」


「ではアメリちゃん! いつものやつ、いってみよー!」


 じゃん! と、いい笑顔でアメリの夏服とスマホを構える。


 「お、おお~……」と、ちょっと(?)引く愛娘でした。



 ◆ ◆ ◆



「いいよいいよ~!! つぎは、女豹いこう、女豹! 猫耳最強ポーズ!!」


 相変わらず、バーニング専属カメラマンと化すワタクシ。


 アメリちゃんは私の要求に応え、様々なポーズを取っていく。


 ああもう、天使! 妖精! なんかもう、とにかく要らしさの化身!!


「ああッ! へそチラ! へそチラいいわ~!!」


 そういえばもう、アメリのこの愛らしい猫耳もしっぽも隠す必要ないのよね。


 写真展、開こうかしら。……なーんてね。


 でも、いつかツイスターSNSに写真はアップしようかなあ。


 先ほどのタイム・イズ・マネーの精神はどこへやら。心ゆくまで愛娘をフレームに収め、タップ! タップ! タップ!


 アメリが「疲れた~」と音を上げるとやっとこ我に返り、「ごめん。お疲れ様~」と労う。


 撮影会が終わると、お嬢様はさっそく、今日買った図鑑を読み始めました。


 私も、デスクに戻りお仕事再開。


 ややあって……。


「えー!!」


 と、アメリちゃんの大声。


「どしたの!?」


 びっくりして、何ごとかと問う。


「あのね、しまだくんぬいぐるみ、チンアナゴじゃなかった!!」


「えー!!」


 なんですと!?


「どういうこと?」


「これ見て!」


 図鑑を手に、こちらにとてとてとやってくる娘。


 そこには、オレンジと白のしましまの、しまだくんそっくりな魚の写真と……「ニシキアナゴ」の文字!


 な、なんですってー!! 今明かされる、衝撃の事実!


 解説には、「チンアナゴといっしょにいることがありますが、ちがうしゅるいのなかまです」との一文が。


 なんてこと……。今までずっと、チンアナゴだと思ってたのに……。


 これからは、「しまだくんニシキアナゴ」と脳内で呼ばねば……。


「びっくりした!」


「私もデス……」


 いやー、面目ない。今まで娘に、間違った知識を教えていたとは。


 思いがけず、一つ賢くなってしまいました。



 ◆ ◆ ◆



 そんなハプニングから仕事に戻り、筆を走らせていると、スマホのアラーム。アメリちゃんにお料理を教える時間です!


「シェフ。お料理の時間ですよ~」


「おお~、頑張る!」


 というわけで、二人でキッチンへ!


「まずは、簡単なものからできるようになっていきましょう。今日教えるのは、ツナサンドです」


「ツナサンドは、昨日食べたね!」


「ですです。昨日のは一番お手軽なバージョンだったけど、今日はちょっと凝ったのを教えるよ」


「はーい!」


 材料を調理台に並べていく。


「まず、玉ねぎを薄切りにしてもらえるかな?」


 言われた通りに、「目がいたーい」としぱしぱしながら、薄切りにするシェフ。


「次は、きゅうりを斜めの薄切りにしてください」


 これも、難なくこなす。


「あとは、このツナ二缶の油を切って、玉ねぎと一緒にボウルに入れて、胡椒少々とマヨネーズで和えます。やってみて。玉ねぎは全部入れたら入れ過ぎだから、半分ね」


 うんしょうんしょと、混ぜ合わせていく。


「で、ですねー。ここからがポイントなのですよ、アメリシェフ。パン二枚の片側に、バターを薄く、かつ隙間なく塗ってください」


 言われた通りに、左官仕事のように、ナイフでバターを塗っっていくシェフ。


「こうするとですね、野菜の水分をパンが吸ってベショベショになるのを、バターが防いでくれるのですよ」


 「おお~!」と感心するメリちゃん。


「あとは、きゅうりをそっち側のパンに並べて、その上からさっきのツナと玉ねぎ……半分ぐらいね。それをスプーンで塗って、もう片方のパンで挟みます」


 ツナサンド、仮完成!


「あとは、包丁で半分に切ったら完成ね。パンの耳は落としちゃったほうが食感はいいんだけど、めんどくさいからそこまでやらなくていーよ」


「はーい」


 すとん!


「できた!」


 美味しそうなツナサンドが完成!


「はーい、お疲れ様~。残った玉ねぎは、ドレッシングかけるとサラダになるよ。コンソメスープに入れても美味しいけど……また今度だね。じゃあ、残ったツナと玉ねぎで、ツナサンドをもう一個作ろううか」


「はーい!」


 こうして、ツナサンドとオニオンサラダのセットが完成!


「お疲れ様ー。あとは、紅茶れればオッケーだね」


「やるー!」


「では、お任せします」


 こうして紅茶も注がれ、対面に着席。


「じゃあ、いくね! いただきます!」


「いただきます!」


 ぱくっ。うん、美味しい! シンプル故に、食べ飽きない味。これをアメリちゃんが作ってくれたと思うと、美味しさもひとしお。


「美味しいね」


「うん!」


 互いに、お陽様笑顔を向け合う。こうして、アメリシェフは新たなモーニングメニューを覚えたのでした。

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