とうとう! とうとう、この日がやってまいりました!
アメリちゃんの特別授業、初日です! もう、色んな意味で、ドッキドキですよ。
ちなみに、現在プロットの執筆中。これ、今日中に真留さんに提出しないと、諸々アウツです。
でもね、魔の三ヶ月を乗り越えたんですよ! 一週間ぐらい遊びたいじゃないですか!
とまあ、脳内で言い訳しつつ、速記しております。今月の原稿は、だいたい構想してあるからなんとかなりそうだけど。
ことによると、「あめりにっき」は次々号で終了させなければいけないので、継続でも終了でも、どっちでも行けそうな話にしてあります。
よっし、できたァ! 送信! 続いて、真留さんのお返事を待たずに、ネーム執筆!
だって、こうしないと間に合わないんだもん。明日打ち合わせと同時にネーム提出しないと、実家から帰ってくる十七日まで、作業がストップしてしまう。さすがにそれでは間に合わないので、頑張っています。
切符も、帰省のチャンスも失いたくないもんね!
なにより失いたくないのが、真留さんの信頼だ。原稿を落としたことがないのが、私の自慢!
バリバリと書き進めていると、チャイムが。時計を見ると、ピッタリ一時。いらっしゃいましたか。
「はい、どちら様でしょう?」
「こんにちは、押江です。お隣のお子さんもご一緒です」
「今行きまーす」
ぱたぱたと、アメリと一緒に門へGO!
押江先生に加え、ミケちゃんが、ちょこなんと隣に立っていました。とりあえず、互いに「こんにちは」とご挨拶。
「改めまして、アメリさんの授業を受け持つことになりました、押江です。よろしくお願いします」
お辞儀する彼女。
「こちらこそ、よろしくお願いします。ちょっと今、仕事で立て込んでいまして。とりあえず、中へどうぞ」
というわけで、ささっとお通しする。
ただ、いくら忙しいといってもお茶ぐらい出さないのは失礼よね。
先にアメリに寝室に案内してもらい、アイスティーを作ります。
「お待たせしました」
「ありがとうございます」
三人からお礼を言われたので、「どういたしまして」とお辞儀を返す。
名刺を受け取った後、「失礼ながら、お話は仕事しながら伺いますので」と断りを入れ、執筆再開!
「神奈おねーさん、忙しそうねー」
ミケちゃんが、言葉をかける。
「うん、超忙しい! 自業自得だけど」
喋りながら、バリバリ書き進めます。
「では簡単に、これからやることを説明させていただきますね。アメリさんには、ギフテッド向け教育を受けていただきます。日本式の、ゼネラリストを是とする教育ではなく、アメリさんが本当に興味の向く授業だけ受けてもらうのです」
押江先生が、レクチャーを始めるので、筆を走らせつつ傾聴する。
「まずは、学力を見るため、各教科のテストを受けてもらいます。続いて、アメリさんが興味ある科目を教えてもらい、それを伸ばしていきます」
「そういうのは、アメリカでは一般的なんですか?」
「はい。みんなと同じでなければいけないという、日本式教育の、強迫観念めいた思想はないです」
ほへー。
「ちなみに、芸術に適正があれば、そちらの支援もします。では、テストを始めさせていただきます。アメリさん、わからないところは飛ばしていいですからね」
「はーい」
「調べ三協いないけど、ミケちゃんはどうするの?」
「自習~。クロも来るわよ」
ほー。というわけで、アメリと押江先生の、マンツーマン授業が始まりました。
少しして、チャイムが。クロちゃんだな。
「失礼します」と中座して、応対。果たしてクロちゃんだったので、中に通し、アイス緑茶を淹れる。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
ぺこりとお辞儀するクロちゃん。アメリは、今のところ苦戦する様子もなく、テストに励んでいる模様。
見守っていたいけど、そうもいかないので、お仕事再開。
お、LIZEに着信が。真留さん、いつものように、明日の二時にいらっしゃるようです。
三十分ごとにテストは終了し、先のものになってくると、「おお?」とか、「う~ん?」などと、アメリちゃん苦戦の様子が伝わってきます。クリアするごとに、難しくしていってるんだね。
◆ ◆ ◆
「では、十分休憩にしましょう」
そう押江先生の声が聞こえ、アメリがぷはーっと、息を吐く。
「あ、お菓子持ってきますね」
「ありがとうございます」
「ありがとー」
押江さんとアメリから、感謝の言葉をいただく。
「ボクたちも、休憩にしようか」
「さんせーい」
クロちゃんたちも休憩宣言。お疲れ様。
キッチンで新しいお茶とクッキーを用意し、寝室へ。クロちゃんは、もちろん濃い目の緑茶。
皆がお礼とともに受け取り、しばしの休息を愉しみます。私も輪に混ざりたいけれど、突貫工事しないとねえ。
デスクに自分の取り分を手に戻り、お仕事再開!
「そういえば、押江先生は何科が専門なんですか?」
筆を走らせつつ、素朴な疑問を尋ねる。
「ああ……申し遅れてました。私、アメリカの天才児向け特別支援学級で教えていた、教師なんです」
あれ! お医者さんじゃなかったんだ!
「今回、アメリさんの件で招聘されまして、帰国した次第でして」
ほえ~。
「アメリのために、そこまでなさってくださるなんて……」
「お気になさらないでください。今までいろんな子を教えてきましたけど、さすがに猫耳人間というのは初で、ぜひにと、むしろお願いしたぐらいでして」
彼女の情熱もすごいけど、ここまでしてくれるCH研も大したものです。
「アメリカ万歳というわけでもないですけど、日本の教育は、天才には息苦しいですね。今後の課題だと思います」
うーん……。私は、アメリを学校に通わせるのが、この子の幸せと考えていたけど、なんだかそういう気持ちが揺らぐな……。
「押江せんせー、アメリ大丈夫かな?」
「大丈夫。絶対、悪いようにはしないからね。今回は、『どこまでできるか』を見るだけだから」
難問に突き当たり、自信喪失するアメリに、安心させる言葉を投げかける押江先生。
アメリが、遠い世界へ行ってしまうようで若干寂しいけれど、私が一番応援しなくちゃね!
それはそれとして、お仕事も頑張りまっしょい!
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