さあさあ、いつもの店内BGMと涼しい空気の中、例によってスマホでチラシを確認なう。
えーと、今日は挽き肉の割引セール、あとニラと卵……ほか、細々と色々。
挽き肉か。またハンバーグでもいいけど、アメリにはもっと色んな料理を体験させてあげたい。今までやってないので、挽き肉、挽き肉……。あっ!
ポンとひらめき、まずは豚挽き肉とニラと卵、そしてカット済みキャベツをかごへイン。さらに、にんにくチューブ、生姜チューブ、片栗粉、ごま油、顆粒の鶏ガラスープも入れる。そして、肝心の餃子の皮。
晩ごはんは餃子を作りま~す! なにげに中華って初めてよね、アメリ。
本日は自転車につき、何か飲食しながら帰るのは無理なので、コーラとマスペはなし。代わりといっては何だけど、中華だしゴマ団子と烏龍茶でも買っていこうかな。
では、これにてお会計!
◆ ◆ ◆
安全確認に注意を払いつつ、きこきこと自転車を漕いで帰宅~!
「自転車、どうだった?」
「楽しかった!」
「そっかそっか、じゃあ今度もうちょっと色んな所へいってみようねー」
ただいまとドアを開けて中に入った後、キャスケットを取って頭を撫でると、「うにゅう」と気の抜けた声を上げる。可愛いなあ。
「今日は、餃子とニラ玉スープを作ります。アメリも少し手伝ってね」
と言うと、「はーい!」という元気な返事。餃子にスープと、火をバリバリに使うのでお風呂は後回し。
ではでは。三分でクッキングするいつものBGMが脳内で鳴り響く中、炊飯器のスイッチを入れてスマホを調理台に立てかけ、レシピを見ながら調理開始~。
洗わずにすぐ使えるキャベツを粗めのみじん切りにしまーす。ニラも洗った後、三分の一束ほどをこれまた粗めのみじん切りに。みじん切りにしなかったぶんは三センチぐらいの長さに切り、みじん切りコンビと分けて別々の深皿に。
続いて、挽き肉に塩胡椒を適量に加えた後、粘り気が出るまでぐにゅぐにゅと揉み込む。粘り気が出たら、先ほどのみじん切りコンビを混ぜこねる。
これで、タネは完成!
「さー。出番だよ、アメリー」
傍らで様子を見守っていたアメリに声をかけると、「おお~!」と拳を突き上げて威勢よく応える。
「こうやって、お肉をこの丸い皮の真ん中に置いて、片側のへりに水を塗って……こう、折り目をつけながら折りたたんでいってね。で、でき上がったら下の方にこの片栗粉をまぶしてね」
まずはお手本を見せる。「やってみる!」と、真似する彼女。正直、ちょっと残念な感じだけど、「初めてにしては上手だよ! 次はもっと上手にやってみよう! 時間はかかってもいいから、もう少し丁寧にやってみようか」と、褒めつつも指導する。
そんなこんなで、計二十五個の餃子が完成! ふう、疲れた。でもまだまだ前半戦!
お次はニラ玉スープ。中ぐらいの鍋にお湯を沸かし、顆粒の鶏ガラスープと三センチのほうのニラ、とき卵を入れる。あとは味見をしつつ塩を加えていき、最後に胡椒とごま油で味を整えて完成!
そして、また別の中鍋にごま油をなじませ、メインディッシュの餃子を強火でジュウジュウと焼きまーす。底面にいい感じで焼き目が付いたら、水を入れ、ガラス蓋をして弱火で五分から十分ぐらい蒸し焼きに。
中まで火が通ったようなら、蓋を外して再度強火で仕上げ!
こんな感じのことを繰り返して、全部焼き上がったらついに餃子も完成!
「さーあ、できたよ~」
私のお皿には五つ、アメリのお皿には四つの餃子を載せ、小皿にポン酢を垂らす。お椀にニラ玉スープも注ぎレンゲを添えて、お茶碗にごはんもよそう。ゴマ団子を二個ずつ小皿に乗せ、コップに烏龍茶を注いだら配膳完了!
うん、ちょっと豪華な感じでいいんじゃない? アメリも手伝ってくれたし、これは絶対美味しい!
「アメリ、そのスプーンのお化けみたいのはレンゲっていうのね。おかゆのときと、使い方はほぼ一緒だから」
「おお~!」
着席しながら、レンゲを持ち上げまじまじと見る彼女。
「で、餃子……さっき、アメリと一緒に包んだのは、そのポン酢につけて食べてね。じゃあ、いただきます!」
「いただきます!」
苦戦しながら、小皿のポン酢に餃子をつけるアメリ。頑張れー!
アメリの奮闘を見守りながら、自分も食を進める。
うん、美味しい美味しい! これ、アメリが作った餃子だね。アメリの愛と努力を感じる!
「アメリの作った餃子、とっても美味しいよ!」
と褒めると、「えへへー」と頭を掻いて照れる。あーもう、なんて愛らしいんでしょう!
そしてニラ玉スープ。私にはちょうどいい辛さと塩加減だけど、アメリにはどうなんだろう?
「スープ、味大丈夫? しょっぱかったり、薄すぎたりしない? あと、辛かったりとか」
促され、ひと口飲む彼女。
「美味しいよ!」
お陽様のような笑顔を向けてくる。ふう。大人の舌の感覚で作ると、こういうとこ心配なのよね。良き哉良き哉。
「ありがとう。アメリにそう言ってもらえると、本当に作りがいがあるよ」
平穏で幸福な時間。私は、本当に幸せ者だ。
食後のデザートに、ゴマ団子をぱくっ。うん。香ばしくて、甘くて、もちもちしていて。多分、中華デザートでこれが一番好き。
そして烏龍茶で流すと、後味もスッキリ!
対面のアメリも餃子とスープを食べ終わり、ゴマ団子を食べて「おお~!」と、感心の声を上げる。
烏龍茶も気に入ったのか、おかわりを求められたので注ぐと、それをよいしょよいしょと飲む。実に可愛い。
かくして二人とも食べ終わり、「ごちそうさまでした!」で締め。残りの餃子とスープは、明日食べよう。
歯を磨いてお風呂に入った後は、アメリはベッドで文字のお勉強。私はいつものように、コーヒー牛乳を傍らにお仕事に励むのでした。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!