神奈さんとアメリちゃん

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第百三十二話 かんなせんせいのわりざんきょうしつ

公開日時: 2021年4月24日(土) 15:31
更新日時: 2022年4月4日(月) 21:51
文字数:2,114

今日は、ミケちゃんが遊びに来てます。私は今日も今日とて、お仕事なう。


「アメリは九九、どれぐらいできるようになったの?」


「多分ほとんど!」


「ミケは、もう完っ璧にマスターしたわよ!」


 ミケちゃんの、ドヤ顔ならぬドヤ声が聞こえてくる。


「おお~! すごい! おねーちゃん! アメリもどれぐらいできるようになったか見てー!」


「んー? おっけーおっけー。でも、ちょっとだけ待っててね、あと少しで一区切りつくから」


 首だけ振り向いて応える。


「はーい」


 というわけで、一区切り付けてアメリに九九を出題していく。


「おお! 全問正解です、アメリちゃん!」


「やったー!」


 バンザイするアメリ。バンザイ猫スタンプを思い出してしまった。頭を撫でると、「うにゅう」という気抜け声を上げる。


「せっかくだから、新しいの覚えてみる?」


 二人が「何?」とハモった。


「割り算っていうんだけど、ミケちゃんは知ってるかな?」


 尋ねると、ふるふると首を横に振る。


「りょーかい。じゃ、教えるね。割り算っていうのは……」


 おなじみになった教材、クレヨンを取り出す。もう、だいぶちびてるなあ。新しいの買ってあげないと。


「ある数を、いくつで分けますよーっていうものなのね。ここに、十二本のクレヨンがあるよね?」


 「うん」とうなずく二人。


「これを、三本ずつに分けると、何個のセットになるかな?」


 実際に、やってみる彼女たち。


「四つ!」


 ハモって答える。


「正解です。じゃあ、二本づつに分けると?」


「六つ!」


 ミケちゃんが、実際に分けずに即答。


「はい、大正解! これが割り算。こういうのをね、十二割る三とか、十二割る二って表現するの。字で書くと、こんな感じ」


 コピー用紙に、鉛筆で12÷3、12÷2と書くと、アメリが「おお~!」と感心の声を上げる。ふふ、教えがいがあるなあ。


「考え方としては、掛け算のちょうど逆って考えてもらえるとわかりやすいかな」


 二人が、「おお~」とまたハモる。可愛い。


「で、ゼロに関してだけど、掛け算のときとビミョーに考え方が違ってね。そもそもゼロで割れないのね。一で割ったときは、掛け算と同じ考え方で、その数まんまになるんだけど」


 「なるほど……」と興味津々なミケちゃん。


「あと、もう一個注意なんだけど、引き算と同じで前の数字と後ろの数字を逆にしちゃダメなのね」


「わかった!」


 アメリが、しゅびっと挙手する。


「じゃあ、例題をいくつか出してみようか。ちょっと待っててね」


 PCを操作し、例題集を作って二枚プリントアウトする。


「さあ、やってみようか。クレヨンとかで実際に分けて解いていいからね。ただ、最後の問題だけはちょっと仕掛けがしてあるから、わからなかったすぐに訊いてちょうだい。じゃあ、ちょっとお仕事再開してるから」


 「はーい」と、取り組む二人。それを背に、かりかりと下書きを進めていく。


 ややすると、「あーん、もう! 何これ、わかんない!」とミケちゃんの声。うん、予想通り最後の問題でつまずいたみたいね。


「はいはい。きっと、最後の問題よね?」


「そうよ! 十割る三って、どうやっても一個余っちゃうんだけど!」


 むくれるミケちゃん。


「うん、それでいいの。こういうときはね、三余り一って答えればいいんだよ」


「えっ! それでいいの!?」


「うん。割り切れないときは、こう表現するんだ」


 「なーんだ」と、ミケちゃんががっくり脱力する。


「まあまあ。こうやって、わからないことは素直にわからないって言えるのも世の中大事よ。じゃあ、ミケちゃんはできたみたいだから、採点しようか……うん、うん……。はい、満点です! 花マルプレゼント~!」


 赤ペンで花マルを書いてあげると、「やったー!」と、一気に機嫌が治る。ほほえま!


「おねーちゃん、アメリもできた!」


「はいはい~。……うん、アメリも全問正解! 花マルをどうぞ~」


「おお~! この花マル? とかいうの、かわいい!」


 キラキラ瞳を輝かせるアメリ。良きかな良きかな


「とりあえず、割り算は九九ができればそれほど覚えることないから、次の問題集ではクレヨン使わずに解いてみてね」


 問題集をさらに作り、配布する。


「頑張る!」


「まっかせて!」


 気合充分な二人。さてさて、二人が自習している間、私もお仕事してましょう。



 ◆ ◆ ◆



「ん、もうすぐ四時かー。お買い物行きたいけど、ミケちゃんどうする?」


 お勉強タイムも無事終わり、お絵かきタイムに移行したミケちゃんに問いかける。


「うーん、アメリともうちょっと遊んでたいわ……」


「アメリもー」


「りょうかーい。じゃあ、今日はもっと時間経ってから、車でお買い物行きましょう」


「おおー!」


 しゅびっと挙手するアメリ。


「じゃあ、五時半までね。さすがにそれ以上は優輝さんたちも心配するだろうし、そちらでもごはんの時間でしょう?」


「わかったわ。じゃあ、それまで遊びましょアメリ」


「おお~! ミケー、猫ちゃん描こ~」


 こうして、遊びを再開した二人を背に再度お仕事タイム。あ、コーヒー牛乳だけ作ってこよ。



 ◆ ◆ ◆



「じゃあアメリ、神奈おねーさん、またねー!」


「またねー!」


「はーい、またねー。優輝さんたちによろしくねー」


 かくてるハウスの門前で、手を振るミケちゃんに別れを告げる。


 さーて、今日は晩ごはん何にしようかなー。

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