神奈さんとアメリちゃん

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第二百四十六話 アメリシェフ、頑張る

公開日時: 2021年5月28日(金) 21:01
文字数:2,415

 懸念された「お昼寝のせいで夜眠れない」ということも特になく、アメリは九時、私は十一時といういつもの時間に寝ることができ、とても良い寝覚め! ……アメリは。


 ワタクシは、今日もぼーっとしながら朝食のトーストをもっそもっそとかじっています。どうして私は、余分に一時間寝ててもこう……。


 パンと牛乳をとっくにいただき終わってしまい、子供向け番組を楽しみ暇つぶしするアメリをぼーっと眺めながら、ゆっくりパンを咀嚼そしゃくするのでした。ふわあ。


 さて、八時になるとどーにかこーにかしゃっきりしてきましたよ。


「今日は何しよっか、アメリ」


「ノーラと遊びたい!」


 ほむ。例によって二人揃ってお招きするほうがいいかしらね? あとで白部さんに打診してみましょ。



 ◆ ◆ ◆



「おはようございます」


 白部さんにスマホで朝のご挨拶をすると、ご挨拶が返ってくる。


「実は、アメリがノーラちゃんと遊びたいと言っていまして……。よろしければ、お昼もご一緒にいかがですか?」


「お申し出、ありがとうございます。ノーラちゃんも、ちょうど一緒に遊びたいと昨日言っていたところで。ただ、お昼をいただくのは恐縮ですねえ」


「いえいえ。簡素なお昼ですから、身構えずにいただいてください。むしろ、こんな簡素なので申し訳ないなって思うほどで」


 と、善意の押し問答が少し続いたけれど、「クッキーのお礼と思っていただければ」と言うと、「そうおっしゃるなら……」と、合意してくださいました。


 さーて、寝室きれいにしてお出迎えしないと!



 ◆ ◆ ◆



 ルビ振りをしながらお待ちしていると、お昼少し手前にインタホンが鳴りました!


 応対に出ると、白部さん。さっそく、門にお迎えに行きます。アメリは気楽な部屋着姿=しっぽ出し状態なのでお留守番。


「こんにちは」


 三者互いに挨拶を交わし、中にお招きすると、アメリがとてとて走ってきて、「ノーラー、せんせー! こんにちはー!!」とお陽様笑顔でご挨拶。


 白部さんたちもご挨拶を返し、四人でキッチンへ。


「こちら、お菓子と飲み物です」


「ありがとうございます。今日は、本当に適当料理で恐縮なのですけど」


 白部さんから贈り物を受け取り、入れ替わりにキャベツ、卵、ハム、トマトを用意。ごはんは白部さんの来訪に合わせ、すでに炊いてある。


「じゃ、作ろうか……と言いたいとこだけど、一人で作って白部さんに見ていただくチャレンジしてみる?」


「おおー! やってみたい!」


 しゅびっと挙手。元気ですねえ。


「あら、じゃあお手並み拝見しようかしら」


 白部さんも興味津々。


「すげーなアメリ、全部自分で作れんの!?」


「多分、できると思う!」


 おお、自信あふれるオーラ! アメリシェフ、やる気まんまんですねえ!


「アメリちゃん、ハムエッグの作り方は教えなくてもわかる?」


「なんとかなると思う! どーしてもわからなかったら、おねーちゃんに聞く!」


 おお。良い心がけです。


「じゃあ、アメリが教えてって言うまで黙ってるからね」


「うん!」


 かくして調理開始! 今回私は観戦だけど、そこは気分ということで、三分でクッキングする脳内BGMを流してましょー。


 アメリシェフ、初手キャベツの千切り。


「いいよー、上手上手!」


 アメリの意志を尊重して手は貸さないけど声援は飛ばす。


「アメリ、四人ぶんだからいつもと量違うのに気をつけてね」


「おおー」


 黙っていると言ったけど、この程度のヒントを出すぐらいはいいでしょう。


 リズミカル、とはいかずざくっざくっという感じだけど、千切り完成!


「お上手!」


 パチパチと拍手。白部さんも一緒に拍手される。ノーラちゃんは「すげー!」と感心。


「さあ、次はどうするんだったかな?」


「んーと、トマト!」


 トマトを八つにカットするシェフ。またも拍手が上がる。


「さ。もう一息だよー!」


「頑張る!」


 フライパンにオリーブオイルを引き、点火。火加減がちょっと強いかな? でも、あえて口を出さないでおく。


 ハム、卵の順にフライパンに入れ、塩胡椒して蓋をするシェフ。その量だと少し薄味かなー。でも、お口にチャック。


 黄身に白い膜がかかったので、火を止める。おお、ちゃんと私のやり方見てますねえ!


 そして、フライ返しで取り出す。これを繰り返すこと四人前。


「はーい、お疲れ様ー。ごはんとお茶は私が用意しとくね」


 アメリが「どーぞー」と言いながら配膳しているので、私はごはんとお茶を担当。マヨのほか、塩が足りないのがわかっているので、お塩と胡椒をテーブルの中央に置いておく。


「それじゃあ、いただきますしましょうか。お言葉をどうぞ、アメリシェフ」


「おおー! いただきます!」


 シェフの音頭取りで、皆でいただきますを言う。


 白部さんが、「差し出がましいですが、ケチャップを頂いてよろしいでしょうか」と遠慮がちに尋ねてくるので、冷蔵庫から引っ張り出してくる。


「ありがとうございます。アメリちゃんには悪いんですけど、私、目玉焼きにはケチャップなもので……」


「おお~……」


 としょんぼりするシェフ。


「まあまあ。目玉焼きにかけるものって、結構人によって分かれるのよ。ソースとか、お醤油とか」


 そんなアメリを慰める。


「ああ、ごめんねアメリちゃん。これは単に、私の好みだから」


 白部さんも慌ててフォロー。ノーラちゃんは無言で塩を振っている。適量振った後は、「うめー!」連呼でパクパクモード。


 お野菜の方は、特に問題なく皆で好みの量のマヨをかけ回して美味しくいただきました。


「千切りよくできてるよ、アメリちゃん」


 と白部さんが笑顔を向けると、「おおー! ありがとー、せんせー!」とキラキラ瞳を輝かせるアメリちゃん。


「アメリちゃん、すごいですねー。もう、一人で簡単な料理作れちゃうんですねえ」


「ありがとうございます。自慢の娘です」


 ひとしきり感心する白部さんに、にこやかな笑顔を返す。


 こうして、アメリシェフ単独による調理と食事会は無事終わりました。


 後片付けは私が引き受け、お茶を持っていくことにし、三人には先に寝室へと向かってもらいました。

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