神奈さんとアメリちゃん

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第四百八十四話 平和で、平和で、本当に平和で

公開日時: 2022年2月2日(水) 21:01
文字数:2,442

 今日は暑いけれど、最近アメリを外であんまり遊ばせてあげられなかったので、ノーラちゃんと一緒に、公園に遊びに行くことにしました。


 もちろん、公園といえば、近井さんご一家も一緒です。


「砂いじりは初めてだなー」


 アメリ、ともちゃんと共同作業で、山とトンネルを作っていくノーラちゃん。


「確かに、いつも運動器具で遊んでるものねー」


「今日は、クミ姉がいねーからな。クミ姉がいたら、色々運動のコツ、教えてもらうんだけどさ」


「私が、スポーツ医学でも修めてたら良かったんだけどね」


 白部姉妹と、そんな雑談を交わす。


「友美も、どんどんお友達が増えて、親としては嬉しいですよ」


 と、良夫さん。今日は、ご一緒されています。


「ともちゃん、いい子ですからね。本当に、アメリと仲良くしてくださって、ありがとうございます」


 深々とお辞儀すると、「こちらこそ」と、ご夫妻からお辞儀を返される。


「「こんにちはー」」


 お。お友達の話をしていたら、エイイチくんとミコちゃんにご挨拶されました。みんなでご挨拶返し。


 さっそく、工事現場に混ざる兄妹。


「そういえば、エイイチくんとミコちゃんって、どんな字書くのかな?」


 前々から抱いていた、素朴な疑問をぶつけてみる。


「おれは、英雄の英に、一」


「わたしは、美しいに、子~」


「いい名前だねー」


 屈んで、微笑む。


 工事は中盤戦。トンネルが、五本に増えようという難工事にパワーアップ。さあ、無事完成するでしょうか!?


「英一は、サッカーとかやらねーの?」


「サッカーっていうか、運動があんま得意じゃなくて……」


 ノーラちゃんの何気ない質問に、しょんぼりする英一くん。


「おお~。じゃあ、アメリたちと今度お勉強する?」


「アメリは学校行ってるの?」


「行けないんだ……。でもね、おねーちゃんや白部せんせーたちが教えてくれて、小数の掛け算覚えてる最中!」


 「小数?」と首を傾げる英一くん。たしか、彼は小三で……まだ、小数の概念に触れてないのか。


「よくわかんないけど、アメリちゃんは難しいことやってるんだね」


 美子ちゃんも、同様によくわからないようだ。


「アタシは分数の勉強中だぞ! ブンレッツ使って、覚えてる!」


「エレメントレンジャー好きなの?」


 興味深そうに尋ねる英一くん。ノーラちゃん、初めてエレメントレンジャーの話ができるお友達が、現れた感じかしら?


「大好きだぞー! ファイアレンジャーとゴッドレンジャーは、アタシのタマシイだ!」


「すげー! 女子でエレメントレンジャーの話、できる子いるなんて……。ズンバ・ラリンと、ライトレンジャーの一騎打ち、かっこよかったよね!」


「わかる! かっこよかったなー!」


 あらあら、すっかり意気投合。ノーラちゃんが、たまたまお砂遊びしようって思わなかったら、この展開はなかったのだから、運命的ねえ。


「美子ちゃんは、好きなことある?」


「わたしは、絵を描くのが好き~」


「おおー! うちのおねーちゃん、漫画家さんなんだよ!」


 アメリとのやり取りで、「ええー!」と驚いた後、尊敬の眼差しを向けてくる美子ちゃん。そんな純真な瞳で見られると、照れちゃうな。


「まあ、超有名作家ってほどじゃないけど、そこそこ人気です。『ねこきっく』って知ってる?」


 首を横に振る彼女。


「まあ、その本で、『あめりにっき』っていう漫画描いてるんだ。猫だった頃の、アメリが主人公なんだよ」


「アメリちゃん、猫ちゃんだったの!?」


「猫!?」


 これには、美子ちゃん、そして英一くんもびっくり。子供だし、ニュースとか見ないよね。


「うん。アメリも、ノーラちゃんも、猫の生まれ変わりなんだ」


 ポカーンとする二人。


「すごい! 漫画みたい!」


「ほんとにね」


 興奮する美子ちゃんに、ふふと微笑む。


「猫だった頃の、アメリ見てみる?」


「「見たい、見たい!」」


 スマホを操作し、「じゃーん」と、当時の写真を見せる。ベロを出して、寝てるものだ。こんな感じに、特にお気に入りの写真は、猫アメリ、今アメリともに、スマホにも残してある。


「可愛い~。ベロ出てる~」


「アメリ、こんなだったんだー……」


 興味津々な二人。当のアメリは、「うにゅう~」と、ちょっとこっ恥ずかしそう。


 雑談しながらも、五人は手を動かしているけれど、やはり五本トンネルは無理があったか、崩落! あらら。


「ああ~……」


 残念そうに、声を上げる五人。


「トンネル係と、飾り係に分かれようよ!」


 ここで、将来有望な仕切りガール、ともちゃんが提案。


 それじゃあと、英一くんとノーラちゃんが穴掘り隊、残りの三人がオブジェ作り隊になりました。


 再度盛られ直した山に、トンネルが開通していく中、山頂に作られていく謎の物体。なぜアメリがオブジェ作りに絡むと、ほかに二人いても、前衛アートになってしまうのかしら。


「できたー!」


 トンネル山の山頂に、謎のオブジェが建立され、完成宣言。


「この……ええと、像? は何かな?」


 どんな設定が飛び出すのやらと、オブジェ組に尋ねてみる。


「おお? どうしよっか」


「アメリちゃん、決めていーよー」


「わたしもー」


 アメリに一任されました。腕組みして、しばし考え込む我が子。


「『ゆどん』! お蕎麦作ってる! 『しょこらん』のお友達!」


 ええと、しょこらんって、うどん屋さんだっけ。ゆどんのほうが、うどんっぽい名前なのに……。


 さすが、アメリちゃんセンス。


 こうして、五人でしばらく遊んでました。



 ◆ ◆ ◆



「またねー」


 栄一くんと美子ちゃんが帰っていき、その後は三人で遊んでいたけれど、ともちゃんが、疲れてしまったようです。まだ五歳だもんね。


「では、お先に失礼しますね」


「今日は、ありがとうございました」


「ばいばーい!」


 お辞儀して、家路につく近井さんご一家。


「アメリー。砂いじりも飽きたし、ブランコしよーぜー」


「いいよー」


 ノーラちゃんの提案に、同意するアメリ。


「じゃあ、お姉ちゃんが押してあげるね」


「私も、頑張っちゃいましょう」


 ブランコに移動し、白部さんと、それぞれ我が子の背中を押す。


 平和で、平和で、本当に平和で。


 この幸せが、いつまでも続きますように。

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