今日は暑いけれど、最近アメリを外であんまり遊ばせてあげられなかったので、ノーラちゃんと一緒に、公園に遊びに行くことにしました。
もちろん、公園といえば、近井さんご一家も一緒です。
「砂いじりは初めてだなー」
アメリ、ともちゃんと共同作業で、山とトンネルを作っていくノーラちゃん。
「確かに、いつも運動器具で遊んでるものねー」
「今日は、クミ姉がいねーからな。クミ姉がいたら、色々運動のコツ、教えてもらうんだけどさ」
「私が、スポーツ医学でも修めてたら良かったんだけどね」
白部姉妹と、そんな雑談を交わす。
「友美も、どんどんお友達が増えて、親としては嬉しいですよ」
と、良夫さん。今日は、ご一緒されています。
「ともちゃん、いい子ですからね。本当に、アメリと仲良くしてくださって、ありがとうございます」
深々とお辞儀すると、「こちらこそ」と、ご夫妻からお辞儀を返される。
「「こんにちはー」」
お。お友達の話をしていたら、エイイチくんとミコちゃんにご挨拶されました。みんなでご挨拶返し。
さっそく、工事現場に混ざる兄妹。
「そういえば、エイイチくんとミコちゃんって、どんな字書くのかな?」
前々から抱いていた、素朴な疑問をぶつけてみる。
「おれは、英雄の英に、一」
「わたしは、美しいに、子~」
「いい名前だねー」
屈んで、微笑む。
工事は中盤戦。トンネルが、五本に増えようという難工事にパワーアップ。さあ、無事完成するでしょうか!?
「英一は、サッカーとかやらねーの?」
「サッカーっていうか、運動があんま得意じゃなくて……」
ノーラちゃんの何気ない質問に、しょんぼりする英一くん。
「おお~。じゃあ、アメリたちと今度お勉強する?」
「アメリは学校行ってるの?」
「行けないんだ……。でもね、おねーちゃんや白部せんせーたちが教えてくれて、小数の掛け算覚えてる最中!」
「小数?」と首を傾げる英一くん。たしか、彼は小三で……まだ、小数の概念に触れてないのか。
「よくわかんないけど、アメリちゃんは難しいことやってるんだね」
美子ちゃんも、同様によくわからないようだ。
「アタシは分数の勉強中だぞ! ブンレッツ使って、覚えてる!」
「エレメントレンジャー好きなの?」
興味深そうに尋ねる英一くん。ノーラちゃん、初めてエレメントレンジャーの話ができるお友達が、現れた感じかしら?
「大好きだぞー! ファイアレンジャーとゴッドレンジャーは、アタシのタマシイだ!」
「すげー! 女子でエレメントレンジャーの話、できる子いるなんて……。ズンバ・ラリンと、ライトレンジャーの一騎打ち、かっこよかったよね!」
「わかる! かっこよかったなー!」
あらあら、すっかり意気投合。ノーラちゃんが、たまたまお砂遊びしようって思わなかったら、この展開はなかったのだから、運命的ねえ。
「美子ちゃんは、好きなことある?」
「わたしは、絵を描くのが好き~」
「おおー! うちのおねーちゃん、漫画家さんなんだよ!」
アメリとのやり取りで、「ええー!」と驚いた後、尊敬の眼差しを向けてくる美子ちゃん。そんな純真な瞳で見られると、照れちゃうな。
「まあ、超有名作家ってほどじゃないけど、そこそこ人気です。『ねこきっく』って知ってる?」
首を横に振る彼女。
「まあ、その本で、『あめりにっき』っていう漫画描いてるんだ。猫だった頃の、アメリが主人公なんだよ」
「アメリちゃん、猫ちゃんだったの!?」
「猫!?」
これには、美子ちゃん、そして英一くんもびっくり。子供だし、ニュースとか見ないよね。
「うん。アメリも、ノーラちゃんも、猫の生まれ変わりなんだ」
ポカーンとする二人。
「すごい! 漫画みたい!」
「ほんとにね」
興奮する美子ちゃんに、ふふと微笑む。
「猫だった頃の、アメリ見てみる?」
「「見たい、見たい!」」
スマホを操作し、「じゃーん」と、当時の写真を見せる。ベロを出して、寝てるものだ。こんな感じに、特にお気に入りの写真は、猫アメリ、今アメリともに、スマホにも残してある。
「可愛い~。ベロ出てる~」
「アメリ、こんなだったんだー……」
興味津々な二人。当のアメリは、「うにゅう~」と、ちょっとこっ恥ずかしそう。
雑談しながらも、五人は手を動かしているけれど、やはり五本トンネルは無理があったか、崩落! あらら。
「ああ~……」
残念そうに、声を上げる五人。
「トンネル係と、飾り係に分かれようよ!」
ここで、将来有望な仕切りガール、ともちゃんが提案。
それじゃあと、英一くんとノーラちゃんが穴掘り隊、残りの三人がオブジェ作り隊になりました。
再度盛られ直した山に、トンネルが開通していく中、山頂に作られていく謎の物体。なぜアメリがオブジェ作りに絡むと、ほかに二人いても、前衛アートになってしまうのかしら。
「できたー!」
トンネル山の山頂に、謎のオブジェが建立され、完成宣言。
「この……ええと、像? は何かな?」
どんな設定が飛び出すのやらと、オブジェ組に尋ねてみる。
「おお? どうしよっか」
「アメリちゃん、決めていーよー」
「わたしもー」
アメリに一任されました。腕組みして、しばし考え込む我が子。
「『ゆどん』! お蕎麦作ってる! 『しょこらん』のお友達!」
ええと、しょこらんって、うどん屋さんだっけ。ゆどんのほうが、うどんっぽい名前なのに……。
さすが、アメリちゃんセンス。
こうして、五人でしばらく遊んでました。
◆ ◆ ◆
「またねー」
栄一くんと美子ちゃんが帰っていき、その後は三人で遊んでいたけれど、ともちゃんが、疲れてしまったようです。まだ五歳だもんね。
「では、お先に失礼しますね」
「今日は、ありがとうございました」
「ばいばーい!」
お辞儀して、家路につく近井さんご一家。
「アメリー。砂いじりも飽きたし、ブランコしよーぜー」
「いいよー」
ノーラちゃんの提案に、同意するアメリ。
「じゃあ、お姉ちゃんが押してあげるね」
「私も、頑張っちゃいましょう」
ブランコに移動し、白部さんと、それぞれ我が子の背中を押す。
平和で、平和で、本当に平和で。
この幸せが、いつまでも続きますように。
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