神奈さんとアメリちゃん

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第二百三十二話 クロ先生のあやとり教室

公開日時: 2021年5月13日(木) 21:01
更新日時: 2021年5月22日(土) 06:59
文字数:2,187

 下書きは昨夜のうちに完成し、芦田さんに送って詳しい打ち合わせを先ほど終えたところ。さあさあ、作業も終盤、作画ですよ!


 すいすい筆を走らせていると、インタホンの呼び鈴が鳴りました。


 応対に出るとクロちゃんだったので、門までお出迎えに。


「こんにちは。神奈お姉さん。これ、お菓子です」


「こんにちはー。ありがとうね。まりあさんにお礼言っとかなきゃ」


 中に通しダイニングで待っていてもらい、アメリを呼んでくる。


「クロー! こんにちはー!」


「こんにちは。お弁当持ってきたよ」


 可愛らしいピンクの包み布を見せる。なんか、唐草模様とかだったらどうしようかと思った。


「じゃあ、私たちもごはんいただくとしましょうか」


 お茶をれ、私たち用にはお米といかにんじんを配膳して、テーブルを囲む。


「「「いただきます!」」」


 三人で合唱。


「クロのお弁当はどんなのー?」


「こんな感じだよ」


 お弁当箱の中身はがんもと切り干し大根の煮物、しば漬け、サバの塩焼きの切り身、のりたまふりかけのごはんと、相変わらず幼女のお弁当とは思えない渋さ。


「おお~。美味しそうだね! アメリたちは、いかにんじんっていうの食べるの!」


「へえ。たしかに、イカと人参だね」


 そう言い、がんもを食むクロちゃん。わたしたちも食べましょ。


 うーん、酸味と干しイカの旨味、人参の歯ごたえが加わり美味しい! 福島の郷土料理らしくて、日本は狭いなんていわれつつも、食文化が豊かだなあとしみじみ思う。


 アメリも「美味しい!」とご満悦。


「クロも少し食べる?」


「いいの? じゃあ、少しだけ。代わりに、サバ以外なら何か取っていいよ」


 おかずトレード成立。お弁当文化の良きことかな。アメリは切り干し大根を少しもらいました。


「美味しいね!」


「でしょう? お姉ちゃんの作る煮物、本当に美味しいんだ」


 はにかむクロちゃん。相変わらず誰が見ても可愛い。


「いかにんじんも美味しいね。これはお姉さんが?」


「ん? 共同作業で作ったよ。アメリね、ほんとに良くお手伝いしてくれるんだ」


「偉いね、アメリ。ボクも、色々お手伝い頑張ってるよ」


「おおー! クロも偉い!」


 ふふ。子供同士の褒め合い、ほほえまだなあ。


 食事はのどかに進み、ごちそうさま。クロちゃんのお弁当箱もついでに食洗機で洗ってあげることにし、寝室へ向かいました。



 ◆ ◆ ◆



「今日は何して遊ぶー? お手玉?」


「お手玉もいいけど、ちょっと面白いもの持ってきたよ」


 そう言ってクロちゃんが取り出したのは毛糸で作った輪っか。


「今日は、あやとりをしようかなって」


 ほほー。これはまた渋い。国民的漫画の主人公の特技だけど、私自身はやったことないなあ。


「あやとり?」


「輪っかを指で動かしてね、いろんな形を作るの。見てて」


 器用に指を入れたり抜いたりしていく彼女。鮮やかな手練に、つい見入ってしまう。


「できた。東京タワー」


 おお、これはずごい。たしかに、あの鉄骨が交差した感じの塔が出来上がっている!


「すごいすごい!」


 アメリと一緒に拍手すると、ちょっと照れくさそうにうつむく。


「これはちょっと難しいから、もっと簡単なのから教えるね。お姉さんもどうですか?」


「あー……面白そうだけど、お仕事がねー。二人で楽しんでて。たまに様子見るから」


「わかりました。じゃあ、やってみようか。まず、こう腕に巻いてね……」


 指導を始めるクロちゃん。見守っていたいけど、お仕事大事。頑張りまっしょい!


「おねーちゃん、見てー!」


 しばらく原稿に打ち込んでいると、アメリの声。


「んー? どんなのができたのかなー?」


「吊り橋っていうんだって!」


 ほほう、たしかにそんな感じのアートができてますねえ。


「上手上手! すごいじゃない、アメリ!」


 褒めると、「えへへー」と顔を緩める。


「クロちゃんも、教え方が上手なのね」


「いえ、そんな……。アメリの飲み込みが早いんですよ」


 照れてうつむくクロちゃん。ああもう、二人ともリアクション可愛いなあ!


「あやとりにはね、協力して作るのもあるんだよ。今度はそれをやってみようか」


 照れくささを隠すように、アメリに提案する。こうして、二人のあやとり教室は続くのでした。


 その後も、アメリが「ほうき」や「富士山」といった、クロ先生直伝のあやとりアートを見せてくれる。そのたびに、大げさなぐらい二人を褒める私。子供は褒めて伸ばす、これモットー!


 三時になったので、クロちゃんが持ってきてくれたおせんべいをお茶と一緒に出す。二人からお礼を言われるけど、持ってきてくれたのクロちゃんだしね。逆に、クロちゃんにお礼を述べる。私もお相伴に預かり、ぽりっとね。うん、美味しい美味しい。おせんべいと緑茶の組み合わせは一つの美学ね!


 やがて夕方になり、日が暮れると危ないということで、クロちゃんは洗い終わったお弁当箱を手に帰り支度。


「今日はありがとうございました。楽しかったです。アメリ、遊んでくれてありがとう」


「アメリも楽しかったよ! あやとり面白いね! また、一緒にやろうね!」


「クロちゃん、本当にいろんな遊びを知ってるのね。アメリに色々教えてくれてありがとう」


「いえ、大したことは……。それじゃあ、ボクはこれで」


 ぺこりとお辞儀して自転車で去っていく彼女に、手を振って「バイバイ、またねー!」と二人で声をかけるのでした。


 さて、今日は晩ごはん何にしようかな。割と和食が続いたから、洋食か中華か。まあ、いつものように現地スーパーで決めましょうかね。

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