神奈さんとアメリちゃん

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第百二十八話 お見事、白部さん!

公開日時: 2021年4月24日(土) 13:31
文字数:2,556

保護者会の翌日、今日は真留さんがいつもの時間二時に、完成したプロット確認のためうちへ来ています。


 アメリにまとわりつかれながら、真剣な表情でノートPCを操作してスクロールしていく真留さん。私も緊張状態で、喉がからから。紅茶をひと口飲む。


「これ、史実・・をどれぐらいいじってます?」


「結構ですね。本来はF駅で偶然出会ったんですけど、直接越してきたときに出会うように変えました」


 不意に真留さんから質問が飛んで来たので、かくてるハウスの残り三人、久美さんの変名・美空《みく》、さつきさんの変名・やよい、由香里さんの変名・百合花《ゆりか》との出会いを変更したことを説明する。


 「ふむ」と下唇に親指を当て、天井を仰ぎ考え込む真留さん。ややあってこちらを向き、口を開く。


「ねこきっくですから、ミキちゃんの出番は削れないので、由加の出番を削れませんか? マジックナンバー的にギリギリなので」


 なるほど。そこを考えていたのか。


「では、こんな感じでどうですか?」


 プロットを素早く手直しし、由加は用事で外出中という形にする。再度画面を真留さんに向けると、またも真剣な表情で確認していく。


「……いいと思います。ええ、これでいきましょう」


 一息ついて紅茶を飲み、空いた手でアメリの頭を撫でる彼女。アメリが、「うにゅう」という気の抜けた声を出す。


「ネームも直に確認しに来たいのですけど、構いませんか?」


「はい。では、そのように」


 チャレンジに対し、石橋を叩いて渡る真留さん。ほんと、慎重派よねー。きっと、学生時代もテスト前に一夜漬けなんかしないで、毎日きっちり予習復習してたんだろーなー。


「紅茶、ごちそうさまでした。じゃあ、アメリちゃん。また今度ね」


 カップに付いた口紅を拭い、アメリの頭を再度撫でる。


「うにゅう……真留おねーさんと、もっと遊びたいなあ……」


「ごめんね、こういうときしか来れないから。では猫崎先生、失礼します」


「はい、門までお送りしますね」


 というわけで、お見送り。互いに深く礼をして、別れを告げる。


 うう、寒っ! もう秋物じゃダメだねー。冬物出さないと。


 リビングのカップを片付けながら時計を見ると三時。ちょっと早いけど、今からネームを切るのもなんか半端な感じだし、晩ごはんのお買い物でも行こうかな。


「アメリー、お買い物行きましょー。今日から服を冬物にするからねー」


 「おお~!」とテンションアップするアメリを背に、冬物を出していく。


 私の冬装備は、ベージュのコートと黒のタイツ。そして、赤い毛糸の手袋とマフラー。これらはお母さんが編んでくれて、上京する年に贈ってもらったもの。未だに愛用しています。……よし、完璧!


「アメリはどうかなー?」


「ちょっと待ってー」


 マフラーの巻き方がよくわからないみたいなので、手伝ってあげる。


「よし! アメリちゃんも完全武装だね! じゃあ、れっつらごー!」


「おお~!」


 というわけで、おなじみのスーパーへ。



 ◆ ◆ ◆



 いつもの店内BGMに迎えられ、チラシチェーック!


 えーと? 今日は日用品、ひき肉、キャベツなんかがお安いです、と。ふむふむ。


 こう寒いと、温かいものを食べたいよねー。よし、今日はロールキャベツにしますか!


 ひき肉とキャベツ。まずこの二つは必須。あとは、トマトスープとコンソメスープ、どっちにしようかな? ……よし、トマトにしよう!


 アメリが、もうすぐ十二月のお小遣いだということで最後の封印を解き、コラ・コーラをかごに入れてくる。おっけー。


 さて、あとは主食にロールパンを買って、と。明日の朝食のぶんも買っとこ。たまには、フランスパンとオリーブオイルとか面白いかな。あとは細々した日用品を……。


 よし、こんなもんでしょう。お会計~。



 ◆ ◆ ◆



 ただいまーっとゴールイン。手洗いとうがいをして冷蔵庫に材料を入れたあとは、部屋着になってお仕事開始!


 しばらくネームをかりかり書いていると、不意にインタホンの音が鳴る。はて、どなたでしょう?


「はーい、どちら様ですかー?」


「こんにちは、白部です。今、よろしいでしょうか?」


「はーい、今出ますねー」


 門に出ると、こちらも冬物をまとった白部さんとノーラちゃんが立っていました。


「どうされました?」


「すみません。ノーラちゃんが、どうしてもアメリちゃんと遊びたいというもので……。お忙しい、ですよね?」


「仕事中なのであまりお構いできませんけど、それでよろしければ全然構いませんよ」


「そうですか? すみません。では、お言葉に甘えさせていただきますね。私もご一緒してよろしいでしょうか?」


 見れば、ノートPCを抱えている。


「あー、お仕事ですね。わかりました。どうぞどうぞ」


「ありがとうございます。じゃあ、お邪魔させていただきましょう、ノーラちゃん」


「おー! カン姉よろしくなー!」


 というわけで、寝室にお通しする。お構いできないとは言ったけど、何もお出ししないのもあれなので、さしあたって紅茶だけ用意。


 紅茶を折りたたみ机に配膳すると、白部さんが「ありがとうございます」とお礼を述べる。ノーラちゃんにもお礼を促し、彼女からも「ありがとー!」とお礼をもらう。


「では、私は仕事してますので、何かあったら呼んでくださいね」


 デスクチェアに座り、仕事を再開する。私の飲み物は、おなじみコーヒー牛乳。


「キックだー! ゴッドレンジャー!」


 持参したロボットで、また男の子チックな遊びを行おうとするノーラちゃん。


ひらたさんマンボウいじめちゃダメー!」


 そして、相変わらず悲鳴を上げるアメリ。ふむ、またブロックの出番ですかと立ち上がろうとしたところ、白部さんが「なるほど、そうやって遊ぼうとしてたのね」と、言葉を挟む。


「ねえ、ノーラちゃん。ゴッドレンジャーは正義の味方よね。だったら、ひらたさんを悪者から守ってあげるべきなんじゃないかな?」


「お、おー……。そーだな!」


 白部さん上手い! そう言い聞かせれば良かったのか!


「なので……じゃーん! デビルハンド登場~! さあ、悪の手先デビルハンドから、ひらたさんを守ってあげよう~!」


「おおー! 助けてー! ゴッドレンジャー!」


「おー! 任せろー!」


 手袋をはめて、指をわしわしする白部さん。すごいなー。二人の溝を、あっという間に埋めちゃった。お見事!


 二人のことは、白部さんにお任せして大丈夫かな。お仕事に集中しましょっと。

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