そのまま駅ビル地下にあるスーパー、「桜京ストア」にやって来ました。
私は、車もいつものスーパーもあるのでめったに使う機会はないけれど、まりあさんはバスで駅まで行き来する関係で、飲み物や常温でも平気なものを買うときは、たまに利用するらしい。
今回は車を使って短時間で家まで送れるので、「生鮮食品も買えるので助かります」と感謝されてしまった。いやあ、こんなことならお安い御用ですよ。
私たちももののついでということで、今日の晩ごはんの材料を買うために、再度二手に分かれて店内を巡っていく。
とはいうものの、桜京さんは普段使わないからどうもピンとこないね。車が使えるからって、ちょっとお刺身なんかは心配だし。とりま、スマホでチラシのチェックといきましょ。
あー、おでん関係が安いなあ。チラシに映っているはんぺんを見て、カルチャーショックを受けた経験が蘇る。
上京して間もない頃、コンビニでおでんのはんぺんを頼んだら白い三角の謎の物体が入っていてびっくりしたっけなあ。後に、東京ではこれがはんぺんと呼ばれるもので、私たちがはんぺんと呼んでいるものがこちらではさつま揚げと呼ばれていると知り、大層驚いたものです。ま、今ではいい思い出だけどね。
「アメリ。今日はおでんにしてみる?」
「おでん?」
「これこれ。これをお鍋でつゆと一緒に煮て食べるの」
常温保存可な多種袋入りタイプおでんを見せる。
「おお~! 食べてみたい!」
「じゃあ、今日はおでんだね」
あっさり、今夜のごはんが決定。タコなんかも入れたいけど、持つかなあ? アメリがお腹壊したら大変だし、無難に袋入りのやつと大根だけでいきましょ。
あとは、関西風のおでんつゆの素があるといいんだけど……おお、あった! ラッキー。東京では本当、関西風のお醤油とかつゆが手に入りにくくて困ります。まあ、東京生活七年目ともなると、さすがにこっちの味付けにも慣れたけどね。
せっかくだから、茶飯も作っちゃおう。昆布昆布~。ありました、顆粒タイプの昆布だし! これも買っていきましょう~。さすがに薄口醤油までは置いてないか、残念!
意外と早くこちらの買い物が終わったので、まりあさんと合流しようと店内をうろついていると、くいくいと右袖が引っ張られる。
そちらを見ると、アメリが袖をつまんで私を見上げていた。
「どうしたの?」
「コーラ……いい?」
飲み物の冷蔵棚を指差す彼女。
「いいよー。四本セットで少しお買い得か~。じゃあ、せっかくだから四本買っていこう。でも、今日飲むのは一本だけね? 五百ミリ入りか……飲みきれなかったら、ボトルの蓋閉めて後で飲もうね」
アメリが、こくこくと頷く。
というわけで、四本の五百ミリペットボトル入りのコラ・コーラをかごに入れる。コスパは一.五リットル入りのほうが安いんだけど、一気に飲まないと炭酸抜けちゃうからね。マスペは……残念、桜京さんでは扱ってないのか。まあね、所詮は好き者向け飲料ですよ。一緒に強く生きましょう、斎藤さん……。
店内もこれで結構広いので、いっそLIZEで落ち合う場所決めようかしらなどと思っていると、ちょうど向こうからまりあさんがカートを押しながらやってくるのが見えたので、手を振って位置をアピールする。
「神奈さんは、もうお買い物お済みですか?」
「ええ、これから精算しようかと。まりあさんは?」
「これで終わりです。最後に、クロちゃんと自分用のお茶を買おうかなって思いまして」
かごにはすでに、レンコン、こんにゃく、人参、里芋、キャベツ、卵、醤油せんべい、あとは調味料などが入っていた。
「不躾ですけど、今日は何を作られるんでしょう?」
「煮物にしようと思ってます。キャベツと卵は明日以降に使おうかと」
「いいですねー。うちはもう、適当にこれで」
袋入りおでんと大根を見せる。
「おでんですか。そういえば、もうそんな季節なんですねえ」
まりあさんが、しみじみと頷く。
「これにする……」
「クロちゃん、それにするのね。じゃあ、私も同じのにしようかな」
クロちゃんが手にした緑茶のボトルを受け取り、もう一本同じ物を手に取ってかごに入れるまりあさん。濃い味タイプ……本当に味覚が渋いなあ、クロちゃん。
「では、レジに行きますね」
「じゃあ、私たちも行こうかアメリ」
再度二手に分かれて別々のレジに並び、お会計。
再合流して、るるるへと向かいました。
◆ ◆ ◆
「神奈さん。車内でお茶をいただいてもよろしいでしょうか?」
トランクに荷詰め中、まりあさんから問われる。
「構いませんよ。アメリも、コーラ飲んでいいからね。急に止まったりするから、こぼさないように気をつけるんだよ」
「うん!」
瞳を輝かせるアメリに、コーラのボトルを一本手渡す。こうして、さしあたって飲むもの以外はトランクに収納!
「じゃあ、帰りましょうか」
かくして、一度宇多野家に寄った後、私たちも家に帰り着いた次第。
なお、はんぺんのカルチャーショックエピソードを車中で語ったところ、まりあさんは大層興味深そうに感心してました。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!