神奈さんとアメリちゃん

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第三百三十六話 ケイティせんせいのさんすうきょうしつ

公開日時: 2021年8月30日(月) 21:01
文字数:2,205

 こつこつ、すらすら、すいすい。


 アメリがそばにいてくれるだけで、筆のノリが絶好調になるこのワタクシ、絶賛執筆中ですとも!


「おねーちゃん!」


「ほいっ!?」


 そんな折、当のアメリから突如呼びかけられて、思わず変な声を出してしまう。


「学校ってどういうことするところ?」


 はー、やはり気になりますか、アメリちゃん。


「そうねえ。同じ年頃の子が集まってね、そこで先生にいろんなこと教わるのよ」


「白部せんせーも、学校で教えてるの?」


「いや、白部さんみたいのとはまた違うな。ちょっと言い方変えると、教師とか教諭って呼ばれるんだけど、白部さんはそれじゃないよ」


 「うーん……」と、違いがよくわからないという感じで、腕組みして首を傾げるお嬢様。


「たとえば、真留さんは私のこと『猫崎先生』って呼ぶじゃない? でも、人にものを教えてるわけじゃないじゃない? 白部さんの先生という呼び名は、どっちかというとそういう感じ」


 まあ、白部さんも研究者だから私の先生・・とはまた違うんだけど。難しいこと言ってもアメリを混乱させるだけだからね。


 わかったような、わからないような……といった感じで、下唇に人差し指を当て、ぼーっと天井を眺めて想像を巡らすアメリ。


 うーん、実際見せてあげられたらいいんだけど……そうだ!


 がさごそと、本棚を漁る。私が昔描いた読み切りに、小学校で授業を受ける、人間に化けた化け猫の女の子が出てくる話があったあったはずだ。


 あった! 多分この巻のはず。ページをパラパラめくる。……ビンゴ!


「アメリちゃん。これに学校が描かれてますよ。難しい漢字は読み飛ばしながら読んでみて」


「おおー、おねーちゃんの漫画だ!」


 嬉々として読み始める。


 さて、一段落したところで私は仕事に戻りますか。



 ◆ ◆ ◆



「ありがとー、おねーちゃん。なんとなくわかった! 漫画、戻しておくね」


「どういたしまして。場所は適当でいいよ。後で直しとくから」


 どうやら、学校とはなんぞや? という問題に、一応の理解がいったようです。


「みんなー、算数の授業を始めますよー」


 んん? 突然なんでしょうとそちらをみると、ケイティちゃんぬいぐるみに向かって、海産物ファミリーが整列している。


 ははあ、さっそく学校ごっこですか。


「今日は、足し算について教えまーす」


「はーい」


 ふむふむ、足し算の授業ね。……って、そめごろうイカ、こないだの冒険で通分解いてなかった? ……まあ、基本に立ち返るのも大事よね。いくらなんでも、基本に戻り過ぎな気もするけど。


「ここに、梨が五つあります。これに、先生の体重ぶんの梨を足すといくつでしょう?」


 いや先生! ケイティちゃんの体重が梨五つぶんというのは知る人ぞ知る話だけど! 教師の個人情報を前提にした出題ってどうなの!?


「はい!」


「はい、ひらたマンボウくん」


「十個です!」


「正解です!」


 みんなのぶん、拍手するアメリ校長。いやまあ正解なのはいいけど、先生の体重知ってるひらたさん怖いわあ……。


「では、ほえほえさんくじらさめのすけサメくんの体重を足すと、梨いくつぶんでしょう?」


 いやいやいや、先生! なに生徒の個人情報で出題してるの!? ていうか、ほえほえさんとさめのすけ、体重設定あったの!?


「はい! 九個です!」


「正解です、えびぞうエビくん!」


 またもパチパチ拍手する校長先生。ええ……。クラスメイトの体重把握してるえびぞうって……。しかも、解答が食い気味だし。ていうか、先生の体重の二倍に二人合わせて届かないのか。ほえほえさんもさめのすけも大きいんだけどなあ。


「では、次の問題です。アメリちゃんと神奈おねーさんの体重を足すと、何キロでしょう?」


「ちょっと待ってー!」


 思わずストップをかける。


「おお? どしたの?」


「あのね、おねーちゃんの体重については触れないでくれるとありがたいかなー?」


「ダメなの?」


 きょとんとするアメリ。


「ダメってことないけど……できれば。あと、いきなり梨からキロとか生々しいから!」


「おお~。じゃあ、別の問題にするー」


「ゴメン、そうしてもらえると助かる」


 やれやれ。乙女の秘密は守られましたよ。アラサー女が乙女はキツいというツッコミは受け付けません! 女はいくつになっても、乙女なのデス!


 なんだか、今日の人形劇へのツッコミは疲れるな。筆は進んでるからいいけど。


 ふう。とりあえず、仕事に打ち込みませう。すらすら……。あ、そろそろごはん炊かないと。行ってきーましょ。



 ◆ ◆ ◆



「きーんこーんかーんこーん。授業は終わりでーす」


 波乱の算数教室が終わりましたか。アメリちゃんにとことこ動かされ、教室設定のエリアを出ていくケイティ先生。


「給食の時間だー!」


「今日の献立は何だっけ?」


「オムライスにスパゲッティーにハンバーグよ!」


 給食とは思えぬ構成。まあ、アメリは実際食べたことないから仕方ないか。


 と、アラームが鳴りました! こちらも給食の時間ですね。


「アメリちゃん。興が乗ってるとこ悪いんだけど、ごはん作りに行きますよー」


 うーんと、伸びをする。


「おお? もうそんな時間?」


「うん。遊んでてもいいけど……どうする?」


「作りに行くー! あのね、今日はアメリ一人に作らせて!」


 お母さんの、「いっぱい挑戦と失敗をさせてあげなさい」という言葉が頭をよぎる。


「よっし! じゃあ今日はアメリちゃんに任せちゃおうかな! でも、揚げ物だから隣で見守ってるね」


「はーい!」


 ぬいぐるみを片付け、ひょいと立ち上がる本日のメインシェフ。


 では、参りましょうかー。

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