神奈さんとアメリちゃん

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第三百九十六話 お疲れ様でした、白部さん

公開日時: 2021年11月1日(月) 21:01
更新日時: 2021年11月2日(火) 18:11
文字数:2,423

 失敗したな。ごはん炊いてる時間ないじゃない。


 パンは朝昼と食べたから、麺あたりかなー?


「スパゲッティー、お蕎麦、おうどんだったらどれがいい?」


 子供たちにアンケートを取ってみる。


「お蕎麦!」


「うどん!」


 アメリとノーラちゃんで意見が分かれてしまった。


「うーん、じゃあじゃんけん!」


 ぽん! とやった結果、ノーラちゃんの勝ち。


「じゃあ、おうどんね」


 そんじゃ、おなじみ乾燥わかめでも使って、冷やしわかめうどんでも作りますか。


 鼻歌を歌いながらうどんを茹でていると、スマホに着信が。


 送信者は白部さん。おお、やっと連絡が。


「こんばんはー」


「こんばんは! 遅くなってすみません! あれから、学会員で緊急の会合が入ってしまって、連絡する暇がありませんで……。やっと開放されました」


「お疲れ様です」


 本当に、声がお疲れだなあ。


「ノーラちゃんはどうしてますか?」


「これから晩ごはんです。おうどん茹でてますよ」


 鍋をぐるぐるかき混ぜながら答える。


「ありがとうございます。八時すぎには帰れると思うんですけど、それまで面倒見ていただけますか?」


「はい、うちは大丈夫です。お気をつけてお帰りくださいね」


「お手数をおかけします。では、失礼します」


 通話終了。彼女も大変だなあ。私だったら、周りの時間に振り回されながら動くって無理だろうな。この八年で、すっかり身についたフリーランススタイルよ。


「ノーラちゃん、白部さんから。八時頃お帰りですって」


「おー! ルリ姉にやっと会える!」


 バンザイする彼女。ふふ。アメリ大好きなノーラちゃんだけど、やっぱり白部さんが一番よね。


 タイマーが鳴り、おうどんとわかめが茹であがりました。流水で締めましょー。


「はーい、できあがりでーす。簡単料理だけど、勘弁してね」


 めんつゆとお茶を注ぎ、配膳。いただきます宣言すると、子供たちも続く。


 薬味は、私がわさび、アメリは生姜、ノーラちゃんはなしと、見事にバラバラ。


 おなじみの、「うめー」シャウトをするノーラちゃん。超お手軽料理なのに恐縮です。


「足りなかったら、おかわり茹でるからね」


 ずるずる。こうやって、素朴なおうどんをすするのも、たまにはいいものです。


 二人とも、ダンスゲームでカロリーをだいぶ消費してたのか、さっそくおかわりをお願いしてきました。


 手早く茹でて、二杯目を提供。


 食べ終わるとお腹も完全に膨れたようで、ごちそうさま宣言。ゆっくりお茶を飲んだ後は、歯磨きタイム。


 食休みは、私は引き続きお仕事。二人は読書と雑談。


「そうだ。ルリ姉がさ、なんかアルカリ売買サイト? とかいうので、エレメントレンジャーグッズを集めてくれてるんだ!」


「へー。結構集まるものなの?」


 ノーラちゃんがエレメントレンジャーに言及したので、つい会話に割り入る。


「うん、本とか人形とか! エレメントブレードも買ってもらった!」


 番組が終わって久しいけど、そのぶん持て余しているご家庭もある。こうして、個人売買サイトで、必要としている人のところに行き渡りやすくなったのは、いい世の中ですねえ。


「でさ! 今度、エレメントレンジャーVSコンチュウジャーの映画があるんだ! コンチュウジャーはともかく、エレメントレンジャーにまた会えるの、すっげー嬉しい!!」


「あらー、良かったじゃない。それは嬉しいわねえ。いつ頃やるの?」


「七月! 夏休み? とかいう時期にやるんだって!」


 そっかそっか。夏休みなんて十年前に経験したのが最後だけど、もうすぐそんな時期なんだなあ。


「『るるる』の、あの映画館でやるのかしらね?」


「ルリ姉によると、そーらしい」


 るるる最上階には、結構立派な映画館がある。


「映画かー。私も、たまにはおっきなスクリーンで何か見たいなあ」


 うーんと伸びをして独り言。今はアメリと一緒だから、二人で楽しめるものがいいなあ。


「映画っていえばミケがね、お尻の怪獣の映画見たって言ってた!」


 出たわね、優輝さんコレクション! 言ったらあれだけど、またぞろ悪趣味そうな代物ね……。


 一時間経ち食休みも済んだので、三人でボクササイズ! 二人とも随分踊ったでしょうに、元気元気。


 例によって、私はビリでした。とほほ。まあ、カロリー消費が目的ですからね。くすん。


 そんな感じに夜を過ごしていると、インタホンの呼び鈴が! お、ひょっとしなくても!


「はーい、どちら様でしょう?」


「お待たせしました、白部です!」


「はーい、今出ますねー」


 リビングから寝室に舞い戻る。


「ノーラちゃん! 白部さん戻られたよー。一緒に門に行きましょー」


「おー! やっと帰ってきたー!」


 心の底から嬉しそうなノーラちゃん。良きかな良きかな


 三人で、白部さんを出迎える。


「おかえり、ルリ姉ー!」


「ただいまー! いい子にしてた?」


 抱き締め合う、白部姉妹。


「猫崎さん、今日は本当にお世話になりました」


 ノーラちゃんの頭を撫でながら、お辞儀される。


「いえいえ。ノーラちゃん、ほんとにいい子にしてましたよ。ねー?」


「おー! いい子にしてたぞー!」


「そっかー、偉かったねー。あ、そうだ」


 ノーラちゃんから一度手を離し、紙袋を渡してくる彼女。


「お土産買ってきました。あとで召し上がってください」


「あら、ご丁寧にありがとうございます。いただきますね」


「では、これ以上お邪魔してもいけないので。ご挨拶もそこそこですが、失礼しますね。今日は、本当にありがとうございました」


 深々とお辞儀されるので、こちらも「いえいえ。いつでも頼ってください」とお辞儀を返す。


「じゃ、帰りましょ。失礼しますね」


「おー! またなー!」


 手をぶんぶん振り、白部さんと手を繋いで、向かいに去っていくノーラちゃん。


 私たちも、「またねー!」と手を振り返す。仲良し姉妹は、ドアの向こうへと消えました。


「楽しかったー!」


「そうだね。また遊びに来てほしいね」


 ちょっと名残惜しそうな、愛娘の頭を撫でる。


「さ、アメリちゃんも、もうすぐ寝る時間ですよ。戻りましょ」


「はーい」


 私たちも部屋へと戻り、入眠前のくつろぎタイムを送るのでした。

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