「うぉはよ~ござぃまぁ~す……」
ふわあと大あくびしながら、リビングで皆にご挨拶。寝たのがいつもより一時間以上遅いので、自然に起きる時刻もそれ相応なワケで。
「本当に、この子は……」
相変わらず朝が致命的に弱い私に苦笑するお母さん。面目ないデス。
「おねーちゃん、あけましておめでとー!」
お父さんの膝に乗ったアメリが、しゅびっと挙手して新年のご挨拶。お父さんたちに教わったのかな?
「あけましておめでとー」
「このあと、神奈がしゃっきりするのはだいたい一時間後か。そしたら、初詣行こう」
アメリの頭を撫でながら、提案してくるお父さん。「うにゅう」と気の抜けたおなじみの声を上げるアメリ。いやはや、すっかり孫扱いだね~。良き哉良き哉。
「とりあえず、ごはん食べてきま~す」
ダイニングでおせちの残りで一人飯。寂しいけど、私のペースに合わせてもらうわけにもいかないものねえ。好きなだけ寝るのと、トレードオフなのです。
◆ ◆ ◆
というわけで、私の着替えとメイクを待ってから四人でお出かけ。
混雑が予想される上に、近くの駐車場が小さいため、バスに揺られてゆらゆらり。
いやはや、すでにこの段階で人が多い。福井駅を中継し、これまたA山の麓にある毛谷黄龍神社に到着~! うわあ~。例年に漏れず、すごい人だかり!
「雨子ちゃーん、手離しちゃだめよ~! 迷子になっちゃうからねー!」
「お、おお~!」
一家でおしくらまんじゅうされながら、お手水で清め、参列に戻る。いやはや、この混雑ぶりじゃ鳥居に一礼してから参道の端っこ通るなんて言うマナー、とても守るの無理! ……って、お父さんたちとはぐれちゃった! やだもう、これじゃ私が迷子だよ。
行列がじわじわ進み、なんとかお賽銭箱に到着!
「雨子ちゃんも、私の真似をして心の中でお願いしてね」
「おお~!」
二礼した後、奮発して五百円入れ、パンパンと柏手を打つ。
(昨年も、無事……アメリのことも無事のうちだよね、過ごせました。ありがとうございます。今年も、一家健康に暮らせますように)
鈴を荒らした後もう一礼して、アメリの手を引いて、脇へと逸れる。
LIZEを見ると、二人はもう鳥居の向かって左手にいるらしいので、そちらに向かう。
「あー、いたいた!」
手を振り、近づく。
「お参り済んだかな?」
「なんとかー。一家の健康を願いました」
「僕は商売繁盛、お母さんは家内安全だったよ」
ここ、毛谷黄龍神社は商売繁盛の神様が祀られている。営業部のお父さんにぴったりなので、毎年ここにお参りしている次第。
「じゃあ、おみくじでも引こうか」
「さんせーい」
というわけで、お父さんの提案でおみくじを引く。がらがら……小吉。
なんともフツー。まあ、私らしくていいよね。
「おお~? これ、なーに?」
なんと、アメリは大吉。わお!
「一番いいやつだよ、それー。おみくじは結び所に結ぶことが多いけど、それだけいいのなら持って帰ってお守りにするといいんじゃないかな?」
「わかった!」
しゅびっと挙手。
お父さんは中吉、お母さんは末吉。凶がでなくて良かったー。
アメリを除く私たちは、おみくじを結び所に結ぶ。
続いて昨年の破魔矢を返却し、今年のものをいただく。
「じゃあ、出店でも見て回る?」
「らじゃー!」
お母さんの提案に、アメリよろしくしゅびっと挙手して賛成。
まずは、甘酒をいただく。くはあ、あったまるう~。
「あ、イカ焼きだ。雨子ちゃん、これ食べよ~」
「おお!? そめごろう、焼かれちゃった……」
イカになんともいえない視線を送るアメリ。そめごろうも大変だなー。
でも、このイカはそめごろうではないので、美味しくいただくことに。あー、美味し。
お父さんたちも、私たちと一緒にイカを食むことにしたようだ。
今、時刻はお昼過ぎ。せっかくだから、焼きとうもろこしなんかも買っちゃおう。この香ばしさ、大好き!
こうして、初詣も無事終了。一度帰宅することに。
「さて! 良い子で可愛いアメリちゃんに、とても素敵なプレゼントがあります」
リビングで大人三人横並びになり、アメリと対座。
「はい、お年玉~」
ポチ袋を同時に渡す。
「おお? お年玉?」
「子供がね、お正月にもらえるお小遣いだよ。開けてごらん」
言われるままに三袋開けると、中から英世先生が三人登場~!
「おお? 何これ?」
「お金について教えたとき、お札についてもちょっと教えたでしょ? それ千円札っていってね、五百円玉二つぶんの価値があるの」
「お、おおおおおお……っ!? あああ、ああ、ありがとう……っ!!」
アメリ基準あまりの大金に、震えだす彼女。
「大事に使ってね。じゃあ、年始回り行く?」
「そうしようか」
というわけで、夢見心地なアメリと一緒にご近所を回り、新年のご挨拶。私の懐が軽くなる一方、アメリの懐がどんどん豊かになっていく。そのたびに、千円という大金に驚愕するアメリ。
「それ、皆さんの思いやりだからね。本当に、大事に使うんだよ?」
「おお、おおおお……わかった!」
むしろ、こんな大金を持ってしまっていいのかとばかりに、ビビりモード全開な彼女。このぶんなら、逆に無駄遣いの心配はないかな?
夕食はブリしゃぶ。いやー、豪華ですなあ。美味しくいただき、歯磨き、ストレッチ、入浴を済ませて一家団らん。
三日後にはもう帰宅かー。寂しいけど、まりあさんやかくてるの皆さん、白部さんたちもまた恋しい。皆さん今頃、どんな元日を送っているのかな。今年もいい年になりますように。
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