神奈さんとアメリちゃん

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第三十二話 アメリ、がんばる

公開日時: 2021年4月17日(土) 17:31
更新日時: 2021年5月2日(日) 22:45
文字数:2,609

今夜の晩ごはんは何にしようかなあ、などと思案しながらアメリとお手々繋いで家路を歩む。


 宇多野家周辺には臨時駐車場がなく、先ほどは徒歩でお訪ねしたわけだけど、ついでだから例のスーパーに寄って考えましょうかね。



 ◆ ◆ ◆



 というわけで、スーパーなう。冷房と、いつもの店内BGMがお出迎え~。


 さっき結構な量のお菓子を食べたので、晩は軽く済ませたいな。とりあえず、チラシからアイデアを得よう。


 えーと? オクラ、なめこ、ネギなんかが安いねえ。あ、あと「香味のつゆ」がお買い得。これ、ちょっとお高いけど美味しいのよね。……ひらめいた!


「アメリ、今日はお蕎麦にしよう!」


「おそば?」


「こないだ、角照さんからいただいたでしょ? あれを、食べごたえある感じに調理しちゃいます」


 ふっふーんと、人差し指を立てる。先ほどのものに、長芋と刻み海苔をプラスしてかごにイン。卵はストックあるからいらないかな。


 故郷福井では、大根おろしと鰹節の越前そばが主流だけど、辛味大根を使うのがミソ。なので、アメリにはちょっと早いかなあと、とろろそばをチョイスした次第。


 おやつは、さっきたくさん甘味を食べたので本日はナシ。アメリが、「コーラは?」とちょっと残念そうにしてたけど、また今度ね。私もマスペを我慢するから。



 ◆ ◆ ◆



 ただいまー、と帰宅。今回は火を使うけど、タイマーかけとけばコンロに張り付いてなきゃいけないわけでもないし、お菓子食べてからそれほど時間経ってないしなので、とりあえずお風呂入っちゃいましょ。


 ……というわけで、お風呂から上がってきました。さあ、さっぱりしたところでいざ調理! 毎度おなじみ三分でクッキングする例のBGMを脳内に流しながら、冷蔵庫から本日のお買い物を取り出し、さらに戸棚から角照さんにいただいた乾麺のお蕎麦、そして大根おろし器を用意。手鍋と寸胴鍋でそれぞれお湯を沸かしまーす。


 オクラは、スーパーによく置いてある透明のビニール袋にお塩と一緒に入れて口を閉じ、オクラ同士をこすり合わせーの……これで、産毛の処理はあっさり終了。水で塩を洗い流す。


 なめこは一度洗った後、オクラと一緒に沸いた手鍋のお湯に少しくぐらせ、ざるに空ける。これで、なめこの処理も終了。深皿にイン。オクラの作業工程はまだあるので、再度まな板に。


 長芋は半分に切って片方をピーラーで皮をむいた後、傍らで作業を見守っていたアメリにひと仕事お願いする。


「アメリ、これ大根おろし器でこのお芋さんをこうやってこすってくれるかな? お芋が小さくなってきたら、危ないから私に交代してね。あと、ほっとくと手が痒くなっちゃうから、終わったら手をきちんと洗ってね」


「おおー!」


 気合の乗った掛け声とともに、一所懸命長芋をすりおろし始める。


 ええと、お蕎麦の茹で時間は……四分か。これはオクラとかの処理のほうが先だな。


 オクラのヘタを切り、さらに身を五等分に輪切りにする。これを繰り返すこと二袋ぶん十本。よし! 切り終わったオクラは、なめこと一緒に深皿行き。


 ネギも水洗いし、これも薬味らしい大きさに輪切りに。ちょっと量が多いけど、余りは明日お味噌汁にでもしよう。こちらも、薬味として使うぶんを深皿送りに。残りのネギは冷蔵庫へ。


 寸胴鍋のお湯も沸騰したので、お蕎麦二百五十グラムぶん、百グラムごとの束になっていたから、二本半をお鍋に投入してタイマーを四分にセット!


「アメリー、作業交代だよー」


 お芋はまだ少し長いけど、大変そうなので交代を申し出る。


「まだ頑張るー!」


 おお。ナイス根性です、お嬢様。


「じゃあ、ちょっと横で応援してるね」


 横で頑張れーとか、いいよいいよーとか応援しながら、すりおろし作業を見守る。アメリって、これで案外努力家よね。


 おっと、タイマーのアラームが。お蕎麦をざるに空け、流水で締める。いいねー。百五十グラムを私用に、百グラムをアメリ用に別々の深皿に分割。


 アメリの方を見ると、さすがに作業を続けさせるのは危ないぐらいお芋も小さくなっていたので、満を持して交代。


 お芋を最後まですりおろしたら、出来上がったとろろをオクラとなめこを入れた深皿へ流し入れる。


 最後は、肝心のそばつゆ。「香味つゆ」をお水で割り、小皿にすくって味見。……うん、いい濃さだと思う!


 私とアメリのお蕎麦が入ったお皿にとろろなどの具を注ぎ入れ、蕎麦つゆをかけーの、卵黄を乗せて刻み海苔をまぶしーのしたら完成でーす!


「できたよー! じゃあ、食べようか」


 手を洗ってタオルで拭いていたアメリに声をかけ、テーブルに運ぶ。お水も一緒にね。


 うーん、我ながら美味しそう! なんといっても、アメリも手伝ってくれたしね!


 私のほうは、お寿司のときも活躍したわさびをちょいと入れる。


「おねーちゃん、それ美味しいの?」


「こないだのカレーより辛いよー? 鼻に、ツーンってくるの。アメリにはまだ早いんじゃないかな」


 そう言うと、「お、おお~……」と意気消沈するアメリ。


「さて! 再びお箸の訓練と行きましょう! はい」


 お寿司のとき大活躍した、練習箸くんの再登場~!


「頑張る!」


「お寿司のときとはまた使い方が違うから気をつけてね。お箸は、二本で色んな使い方をするものなの。お手本を見せるね。いただきます」


 卵を崩して、全体を混ぜてからからずずずーっと勢いよくすすると、ぬるぬるした食感とお蕎麦自体ののどごしの良さでするすると喉を通る。うーん、やはり我ながら美味しい。アメリの頑張りも加わり、さらにひとしお。


 アメリもいただきますの後、悪戦苦闘したけどなんとかすすることに成功! やったね!


「すごい! 上手だよ!」


「おねーちゃん。アメリもっと頑張って、お箸きちんと使えるようになるね!」


 そう言って、一所懸命お蕎麦を口に運ぶ。思わず見入ってしまうけど、伸びないうちに自分のも食べないと。


 さすがに伸びてしまうと悲しいので、アメリより先に完食。アメリも残り少し。頑張れ~!


「ごちそーさまでした!」


 そして、ついに完食!


「やったね! すごいすごい!」


 ぱちぱちと拍手すると、「お、おお~」と照れくさそうに頭をかく。ちょっと大げさかな? でも、人って褒められると伸びるものね!


 お蕎麦が伸びるのはノーセンキューだけど、アメリが伸びるのは大歓迎! なんちて。


 食器を片付け歯を磨き、一緒に寝室に入った後は、例によって自家製コーヒー牛乳を傍らに置き、お仕事なう!


 読者の皆様のため、そしてアメリを幸せにするために、私もお仕事頑張るぞー!

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