「それは、アメリちゃん頑張りましたねー」
下書き中、優輝さんと通話することになり、真留さんとのことに話が及びました。
「ええ、親バカで恐縮ですけど、本当にすごいなって」
「ミケはそういうの、イマイチ興味示してくれないんですよねー。お菓子作りは少し興味あるみたいですけど」
「そうなんですか?」
コーヒー牛乳をひと口含む。
「ええ。まあ、強制するようなことでなし、今どき自炊できなくても生きていけますからね。本人の気が向いたら、教えるぐらいのつもりでいます」
相変わらず、おおらかな教育方針ですねえ。
「自炊といえば、今日の晩ごはん何にしようか悩んでまして」
「お。お力になりますよ! 方向性とか教えていただければ」
快い提案をいただいたので、間近に食べたものを挙げていく。
「ふーむ。それだったら……パスタ・プリマヴェーラなんていかがです?」
「聞いたことない料理ですね」
パスタ料理だろうというのは想像がつくけど。
「レシピ、お送りしますよ。ちょっと待ってください」
キーをカチャカチャ叩く音が聞こえるな。しばらくして、PC用LIZEの着信音が鳴ったので、そちらを見てみる。
「……お野菜のスパゲッティーですか?」
「ええ、春野菜のパスタ料理をこう呼ぶみたいです。前にキャンプで振る舞ったら好評で。よろしければ、試してみてください」
「ありがとうございます。今晩はこれにしてみますね」
その後も、下書きを進めながら雑談することしばし。そろそろ買い物時刻となったので、今日は車でおでかけ。早くアメリも補助輪なし自転車乗れるようになるといいのだけど。
◆ ◆ ◆
いつものスーパーにとうちゃーく! やっぱり、このBGMと店内風景は馴染みますねえ!
えーと、優輝さんのレシピによると?
グリンピース八十グラム。これは缶詰でいいかな。アスパラ六本。クリームチーズ六十グラム。粗挽き胡椒。岩塩。粉チーズ。オリーブオイル。ブロッコリースプラウト一パックが必要ですと。
オリーブオイルと粉チーズはうちにあるから、それ以外を買っていけばいっか。
そういや、一応チラシチェックしときますか。お、牛乳と卵が安い! 三種の神器も買っていきましょ~。
明日のお昼のぶんは……明日でいいや。
アメリちゃんは、今日はバルーンガムを買っていくとのこと。ではお会計~。
◆ ◆ ◆
ただいまーっと! さて、スパゲッティーですから、作るのにそれほど時間はかからないね。というわけで、ごはん直前までお仕事なう。アメリちゃんってば最近すっかり本の虫になっちゃって、ずーっとご本を読んでいる。手がかからないのはいいけれど、お姉さん寂しいわ。
「アメリちゃーん。私の膝の上で本読まない?」
「おお、いいの?」
「むしろ、大歓迎!」
椅子をひねって、ぽんぽん膝を叩くと、ちょこちょこ歩いてきて、すとんと腰を下ろす。また少し、重くなった気がするなー。我が子の成長の喜ばしきこと哉。
左手で頭を撫でつつ右手でペンを走らせキーを叩くという器用な真似をしながら、作業を進めていく。
「アメリー。お耳はむはむしていーい?」
「おおー? おねーちゃんが昔よくやってたやつ? いーよー」
猫時代のこと、そういうのはよく覚えてるのね。では遠慮なく。はむっ。
「うにゅっ……」
アメリが変な声を出す。やだ、何かイケナイことしてるみたいじゃない。半年以上ぶりの耳はむも、なんだか気まずくて中断。どうもやっぱり、猫時代とは色々勝手が違うのね……。
そんなことをしているうちに、スマホが「ごはん作ってちょー」と、時刻を知らせてくれました。
「ふう。それじゃ、ごはん作りに行こっか」
「うん!」
本を片し、付いてくるお嬢様。本当に、きちんと片付けのできる子になったなー。お姉さん、嬉しい!
◆ ◆ ◆
さあ、三分でクッキングする脳内BGMを鳴らしつつ、今日も元気に行ってみましょー!
LIZEをセット! 優輝さんからいただいたレシピを表示する。
「さて、アメリちゃん。このお豆さんを、半分スプーンで潰してくれるかな?」
「任せて!」
今日も元気に、しゅびっと挙手!
缶詰のグリンピースを水切りして器に空け、そちらはアメリシェフにお任せ。私は、寸胴鍋でお湯沸かしと、アスパラの下処理を始める。
アスパラさんの皮を剥きましてー。食べやすい大きさにカット~。硬い部分はもったいないけどポイ~。
ブロッコリースプラウトのほうもやっちゃおう。これは、食べやすい大きさにカットすればいいのね。
野菜を切ってるうちにお湯も沸いたし、お塩ひとつまみ入れてスパゲッティーぐつぐつ~。
スパゲッティーをある程度茹でたら、アスパラも一緒に茹でまーす。
「できたよ-」
おっと、アメリシェフ作業を終えましたか。
「はいな。ありがとー。ちょっと置いといてね」
タイマーが鳴り、スパゲッティー&ブロッコリーが茹で上がったので、お湯切り。
ボウルに移し、グリーンピース、クリームチーズも投入! これをよく混ぜまーす。
ラストに、粗挽き胡椒と岩塩で塩胡椒。あとはオリーブオイル、ブロッコリスプラウト、粉チーズをかけて完成~!
「アメリシェフ~、完成ですよ~。いえーい!」
「いえーい!」
ぱちんと手を打ち鳴らす。
「じゃ、紅茶と一緒に配膳しましょうかね」
というわけで配膳し終わり、エプロンを外し着席。
「「いただきます!」」
合唱し、ぱくっと食べる。あら! お野菜のパスタなのに、チーズのおかげでこってり美味しい! これは意外!
「アメリはどう? グリンピース苦手じゃない?」
「平気~。美味しいよ!」
実際、美味しそうに食べてますね。良き哉良き哉。
こうして晩ごはんも美味しく食べ終わり、再度寝室で膝乗せお仕事モードに。そういえば、猫だった頃のアメリってばPCいじってると、よく作業妨害してきたなー。
「おお? どしたの?」
思わずくすっと笑ってしまった私に、不思議そうに問いかけてくる。
「んー? ちょっと、昔のことをね」
微笑み、頭を撫でる。相変わらずいい手触り。
こうして、今日も安穏と猫崎家の夜が更けていくのでした。
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