神奈さんとアメリちゃん

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第十話 おもちゃでチャチャチャ!

公開日時: 2021年4月16日(金) 20:01
更新日時: 2021年5月27日(木) 18:04
文字数:2,618

「るるる」の地下一階には、「トイザウるス」という大型玩具店がある。荷物が邪魔くさいので一度エレベーターで地下二階の駐車場に駐めてある車に荷物をしまい、再度エレべーターで目的のおもちゃ屋さんへ向かう。


 店内は親子連れや子供たちのグループで賑わっており、なんだかこちらの気分まで賑やかになってくるなー。


 肝心のアメリはというと、珍しいものだらけできょろきょろとあたりを見回しては、「おお~!」と感心している。


「じゃあ、アメリが気に入りそうなおもちゃがあるか、見ていこうか」


 カートを手に店内を順繰りに回る。まず向かったのはドール売り場。女の子向けのおもちゃといったらまずこれよね。


「こういうのどう?」


 感想を尋ねると、「んー……?」といまいちな反応。お気に召しませんか、お嬢様。


 続いておままごと道具。これもやはり反応が今ひとつ。ううむ、女の子の定番をとことん外すなあ。


 ぬいぐるみ売り場にくると、「これほしい!」と大きなサメのぬいぐるみで大はしゃぎ。よりによってサメって……。ほんっとーに魚介類好きね、キミ。


 まあともかく、アメリが気に入ったなら買いましょう。


「これなーに?」


 道すがらアメリが指差したのはブロック。


「これはねー、組み合わせで色んなものが作れるよ。おうちとか自動車とかね」


「おお~!」


 これは好感触。そうか、この手の知育玩具好きか。ならば!


「こういうのはどうかな?」


 ブロックセットもカートに入れて、続いてひらがなとカタカナと数字を覚えるためのタブレットを見せる。


「なにこれー?」


「これを使うとね、なんと字が読めるようになっちゃうんだよ!」


 彼女は言葉は話せるけど字が読めない。こないだまでただの猫だったのだから、言葉が通じるだけですごいことなんだけど、アメリに公的な教育をさせてあげられない以上、こういったもので楽しく学習させてあげたい。


「すごい! やってみたい!」


 おお、いい食いつきぶり。ではこれもカートへ。


「あとねー……」


 知育玩具売り場を離れ、お風呂用おもちゃのコーナーへ。


「これ、どう?」


 お風呂に浮かべる丸っこくて青い魚のおもちゃを見せると、「おお~!」と目を輝かせる。ふふふ、キミの魚介好きはとっくに把握済みなのだよ。


「気に入ったみたいね。じゃあこれも買おう~」


 あえてこれをプッシュしたのは、お風呂でおもちゃと戯れたらお風呂への苦手意識が改善されるかな~という見込み。私ってば策士ね!


 これ以上、あれもこれも買ってもきりがないというかお財布が厳しいので、肝心のおもちゃ箱をラストに買ってお会計。さらば、諭吉先生~!


 かくして、私たちは「るるる」を後にしたのでした。



 ◆ ◆ ◆



「ただいま~!」


「ただいま~!」


 私が到着の声を上げると、アメリも真似して続く。可愛い。ガレージと家を何度も往復して、おもちゃなど本日の成果物を運び込む。ふう。


「さ、お風呂入ろっか」


 笑顔を向けると、アメリがあからさまに嫌そうな表情をする。うん、わかってた。


「このお魚さんがねー。『お風呂が大好きだから、アメリちゃんと一緒に入りたいよー』って言ってるよー」


 「るるる」で買った丸い魚のおもちゃを見せると、一転して「ほんと!?」と目を輝かせる。わかりやすくて好きよ。


「じゃあ、お風呂へご~!」


「ご……ご~」


 拳を突き上げた私の掛け声に、アメリがおずおずと続く。


 一通り頭と体を洗い終わって、湯船に浸かろうという段階。躊躇ちゅうちょしていたアメリだけれど、お魚さんと一緒に入りたい一心で意を決して湯船にIN。


 すると、アメリと一緒に湯船に入った魚が、比喩ひゆ抜きでみるみる赤くなっていく。


「ご主人様! 赤くなった!」


「おお~!」


 思わず、アメリの決め台詞をパクってしまった。へ~! 自分で選んどいてなんだけど、こんなおもしろギミックがあったのね。


 アメリは大好きなお魚さんと一緒に、お風呂を楽しんでくれました。これからは一安心かな?



 ◆ ◆ ◆



「いいお湯だったねー。晩ごはんはスパゲッティーにしよう」


「すぱげってー?」


「これ。作るのすごく簡単なの」


 乾麺とレトルトを見せる。乾麺と水をレンチンするための容れ物に入れて、あとはミートソースを湯せんするだけ。ほんとお手軽。


 レンジがピーッと鳴る頃にソースも茹で上がったので、湯切り後器に盛る。


「じゃあ、フォーク使ってみよう」


 プラスチックのフォークを一度洗い、アメリに手渡す。手に持ち、不思議そうに色んな角度から見るアメリ。


「お手本見せるね」


 スパゲッティーをくるくると巻き取り、器用に食べてみせる。


「さ、やってみようか」


 不器用ながらもなんとか巻き取るが、食べるときズルズルと音が出てしまう。


「おいしい!」


「お口に合ったようでなにより。まあ、食べ方は最初そんなものよね。スパゲッティーーは、食べるとき音出しちゃダメなの。なるべく気をつけようね」


 晩ごはんもおいしく食べ終わり、いよいよパジャマの大改造ですよ!



 ◆ ◆ ◆



 アメリがおなじみの南海映像を見ながらブロック遊びに興じている最中、パジャマのおしり上部を切り開き、布で補強する。これでアメリもしっぽを出せるね。ついでだから、下着の方も同様の処理をしておこう。


「アメリー。ちょっとお着替えしよう……ってナニソレ?」


 彼女が作り上げていたのはなんとも形容しがたいオブジェ。木のような魚のような……?


「さかなのおうち!!」


 うーん、よくわからん。案外ゲージュツ家の素質があるのかも? まあ、それはさておき。


「パジャマ出来たよー。Tシャツより寝やすいし、下着も穴を開けたからしっぽ出しやすいと思うよ」


「そーなの!? しっぽ困ってた!」


 でしょうね。というわけで、早速お着替えタイム。今の下着とTシャツは着替えたばかりだけど、まあ仕方ないよね。


「天使だ……! 天使がいる……ッ!!」


 猫足柄のパジャマに着替え終わったアメリは、まさにエンジェル。お○ちゃの缶詰が一発で当たりそうなほどのゴールデン・エンジェルぶりですよ!!


「スマホッ!」


 光の速さで仕事机からスマホを取り寄せ激写!! いいわあ……アメリほんといいわあ……。


「いいよいいよー。次はごろにゃんのポーズ取ってみよう!」


 見本として仰向けになり、両手を猫っぽく構え足をZ字に折り曲げると、アメリも「わかった!」と真似する。


「やば! 可愛すぎか! タマリマセンワーッ!! よし、その服でも女豹のポーズしてみよう!」


 この状態になった私に、もはや敵と節度はない。その後、撮影会は例によって一時間以上に及びましたとさ。

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