神奈さんとアメリちゃん

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第三百四十一話 シェフのおまかせ ―前編―

公開日時: 2021年9月4日(土) 21:01
更新日時: 2021年10月7日(木) 18:28
文字数:2,280

 というわけで、いつものスーパーにやって来ました! ただし、今日はちょっと遅くなったので車で。いい加減陽も高くなってきたから、自転車でも良かったかなあ?


 ま、来ちゃったもんはしょーがない。


「おねーちゃん、今日は何を買うの?」


 スマホをいじっていると愛娘からそんな声をかけられ、ふとひらめきました。


「ねえ、今日はアメリの思うがままに作ってみる?」


「おお!?」


 瞳を星のように輝かせ、好感触。


「もちろん、あまりにも変な組み合わせとかになるようだったら止めるし、逆に訊かれればアドバイスはするよ。どう?」


「やる!」


 一も二もなく快諾。


「じゃあ、気の向くままにスーパーを回ってみようか」


「はーい!」


 かくして、何が出来上がるか不明なショッピングターイム! が始まった次第です。



 ◆ ◆ ◆



「あ、そうそう。一つ言い忘れてました」


 不意に切り出すと、「うにゅ?」と首を傾げるシェフ。


「昨日、きびなごの唐揚げ作ったでしょう。あのとき、ほんとはお豆腐も使う予定だったんだけど、あれもこれもやらせるのは難しいだろうなと思って、言わずにいたんだ。なので、できればなんだけど、お豆腐を使う料理がありがたいかな」


「おお? お豆腐使う料理ってどんなの?」


「色々あるよー。おなじみのお味噌汁に、一月だったかな? 麻婆豆腐作ったでしょ。あとはー……」


 と言いかけて、主導権を奪いかけてることにはっとなる。いかんいかーん!


「まあ、いざとなったらお味噌汁とか冷奴にしちゃえばいいから、あまり気にしないで」


 慌てて訂正。ふう、危ない危ない。


「おお~? どっち? どっちにすればいい?」


 困り顔のアメリちゃん。しまったな。


「えっと、気にしないほうで!」


「らじゃー!」


 ビシッと敬礼される。気を取り直して、お買い物を続けましょ。


 シェフがまず立ち止まったのは、青果コーナー。店の構造上、基本的に一番最初に立ち寄ることになる場所だ。


 ここでシェフ、おもむろにプチトマトとブロッコリーをかごへ。初手、好物からいきましたか。


 その後、しばらくうろうろしていたものの、ピンとくるのがなかったのか、お隣の鮮魚コーナーへ。


 そして、しばらく鮮魚コーナーと精肉コーナーを行ったり来たり。お魚かお肉かで、決めかねてるみたいね。


 そんなアメリちゃんに気長に付き合い、私も行ったり来たり。


 やがてシェフ、意を決して鶏むね肉を手に取りました。ほうほう。そういや、鶏肉も久々な気がするね。


 その後、いろんなコーナーをうろうろするアメリシェフ。すると、香辛料コーナーで足を止めました。


「たんどりーちきん……ってなーに?」


 美味しそうなタンドリーチキンの写真が描かれた小袋を手に取り、見せてくるアメリちゃん。


「インドって国の鶏肉料理だね。美味しいよ」


 今度は正式に問われたので答えると、「おお~!」とかごに入れました。


 そして、役得とばかりにコラ・コーラをかごに入れるシェフ。これで、コーラ煮とか作ったらびっくりだけど。


 あとは、いつもの私を真似してか、三種の神器をかごに入れる。牛乳は結構お高いの選びましたね。まあ、この銘柄美味しいから、たまにはいいか。


 コーラと牛乳がぬるくなってしまうと考えてか、アメリちゃんはそのまま一直線にレジへ向かいました。ほいきた、お会計ですね~。意外と、おかしなチョイスにはならなかったな。良きかな良きかな


 でも、せっかく車で来たから、シェフにはお会計をちょっと待ってもらって、かさばる日用品とお米でもさくっと買っていきましょう~。


 ヨシ!


 では、るんたったと帰宅~。



 ◆ ◆ ◆



 たっだいま~!


「アメリちゃん。お米を炊くのもやりますか?」


「うん!」


「じゃあ、お願いね」


 私は私で、買い物を冷蔵庫や戸棚、トイレなどに置いていく。ふう、重かった。上京して間もない頃、車のなかった時代は、そりゃこういうのを運ぶのに苦労したもんです。


 自家用車って素晴らしいわ。


 そういえば、徒歩勢のまりあさんは、宅配をよく利用されているそうで。以前、彼女が寝込んでお世話したときも、それで随分助かりました。


 さて、部屋着に着替えてメイクも落とし、リラックスモードになったはいいけれど。お仕事しなきゃですねー。


 あ、そうだ! ぎりぎり間に合うな。今のうちにあれやっとこう。


 実家近くのお花屋さんに、カーネーションをのフラワーギフトをネットで宅配注文する。うん、間に合うね。あとは、メッセージカードを作って、当日LIZEで画像を飛ばそう。


「おねーちゃん、お仕事大変そうだねー」


 いたわるような視線で、見つめてくるアメリちゃん。


「ありがとう。でも、実は今別件でね。母の日の贈り物を用意してたのよ」


「母の日?」


 首を傾げる。


「うん。今年は明後日でね。お母さんに贈り物をする日なの。贈り物はカーネーションが一般的ね」


「おお~! アメリもおねーちゃんに贈り物する!」


 拳を突き上げるお嬢様。


「あら、ありがとう。嬉しいなー」


「カーネーションって何? どこで手に入る!?」


「カーネーションくれるの? じゃあ、ちょっとこっち来て」


 とてとてとやって来たので、検索してカーネーションの画像を出す。


「こんなお花でね。いつものスーパーでも売り出すんじゃないかな?」


 例のスーパーには、生花コーナーがあったりする。


「アメリのお小遣いで買えるかな……?」


「一輪なら、そんな高くないよ。大丈夫。嬉しいなあ。アメリから母の日の贈り物もらえるんだ~」


 にんまりと締りのない顔をしてしまう。


「そうだ。せっかく来たんだから」


 椅子をひねって膝をポンポン叩くと、ちょこんと腰掛けてくる。


 お仕事しなきゃだけど、ちょっとぐらいいいよね。


 十分じゅっぷんだけこうしたら、お仕事を始めよう。

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