神奈さんとアメリちゃん

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第百二十四話 お餅を焼くのはお正月にしましょう

公開日時: 2021年4月24日(土) 11:31
文字数:2,485

「アメリ、アメリ、アメリ~」


 日曜日。今日は、ノーラちゃん、ミケちゃん、クロちゃんが遊びに来ています。ノーラちゃんはまだ数字が読めないので、トランプで遊ぼうという話は立ち消えになったようで、ノーラちゃんがアメリにべたべたくっついてスキンシップの嵐。あら~。


 ちなみに私は、特にやることもないのでいつものデスクチェアで四人の様子をのほほんと眺めています。


「おお~。ノーラ、あったかいなー」


 されるがままのアメリ。うーん、自然体。ただ、そんな二人を見るミケちゃんとクロちゃんの視線が何やら……?


「ねえ、アメリ。ノーラばっかりじゃなく、ミケともお話しましょうよ」


「おお?」


 アメリの手を取り握るミケちゃん。おやおや?


「あの、アメリ。ボクもアメリと……その……」


「おおお?」


 最後、ごにょごにょと言葉になっていないけど、クロちゃんもアメリの手を取る。


 あらあら、これはこれは。アメリモテモテねえ。焼きもちかあ。


「えー、ミケはおねーちゃんなんだろー。譲れよー」


 不平をこぼすノーラちゃん。まあ、この三人の中で一番慣れてるのがアメリだから気持ちはわかるけど、ちょっと。うーん。


「む……それを言われると、うう、困るわね……」


 しょんぼりして手を引くミケちゃん。うう~ん。


「クロも、今までアメリと仲良くしてきたんだろー? だったらちょっとぐらいいだろー?」


「う……ごめん」


 これまた手を引っ込めてしまう気弱なクロちゃん。うーん、これはちょっとあれだな。


「はーい、みんなちょっといいかなー」


 パンパン手を叩くと、四人が注視する。


「アメリが人気なのはわかりました。でもね、ノーラちゃん。もっと他人の気持ちを考えなきゃダメよ。そんなだと、アメリに嫌われちゃうよ?」


 びくっとなるノーラちゃん。


「たしかに、ミケちゃんやクロちゃんより出会いが短いから、独占したくなっちゃう気持ちはわかるんだけどね。でも、アメリはみんなと仲良くしたいの。ね?」


「おお~! みんな大切なお友だちだよー!」


「というわけで、ルールを決めましょう」


 ベッド横のサイドテーブルから時計を持ってきて、折りたたみ机の上に置く。


「アメリと手をつなぐのは、一人十分じゅっぷんを右回りで。えーと、ノーラちゃん。右っていうのはこっちの手の側ね。で、最初の一人はくじ引きで決めよう」


 コピー用紙を切って、即席のくじを作る。


「丸が付いてる人が最初ね。はい、どうぞ」


 当たりを引いたのはミケちゃん。


「やったー!」


 腕をぶんがぶんが振る。ほほえま!


「えー……? ミケ、譲ってよー」


「ダメだよ、ノーラちゃん。ルールを守ることを覚えよう。人間の社会はね、いろんなルールがあるの。人を傷つけてはいけません、とかね。それを守ることで、みんなが幸せに生活できるんだよ」


 不平そうなノーラちゃん。ふむ、もうひと押しいくか。


「たとえばね、ミケちゃんがずーっとアメリを独り占めしてたらノーラちゃん悲しいよね?」


「うん」


「ミケちゃんやクロちゃんもおんなじなんだよ。わかるよね?」


「うん……」


 元気がなくなっていく。


「あー、怒ってるんじゃないからね。ただ、思いやりの気持ちを持って欲しいだけなの。これから白部さんと生活していく上でも、いろんな思いやりやルールを守ることが求められるよ。その練習だと思おう」


 笑顔で微笑みかけると、少し考え込んだ末、「わかった……」と、小声で承諾してくれた。


「おまたせ。じゃあ、ミケちゃんからね」


「はーい。アメリー、ミケね……」


 アメリの手を握り、嬉しそうにしゃべり始めるミケちゃん。


 「手を握る」のが右回りのルールだったのに、何かしゃべる順番も右回りになっていたけど、ややすると四人で会話を交わすようになりました。良きかな良きかな


「そういえばね、二十三日がさつき、二十五日が久美の誕生日なのよ」


「あら、そうなの?」


 唐突にミケちゃんの口から出てきたお二人の名前に、思わず会話に割り込んでしまう。


「そうよ? 聞いてなかった?」


「今、確認してみるね」


 PCに向き直りLIZEのメッセージを飛ばすと、バンザイ猫スタンプとともに、さつきさんから「そっすよー!」とのメッセージ。


「お誕生日、近いんですね」


「ういっす。年に二日だけ、姉さんと同い年になれるんっす~」


 ウキウキなのが文面から伝わってくる。


「誕生日かー……」


 久美さんも会話に入ってきた。ただ、何かテンション低いな?


「テンション低いですね?」


「いやまあ、嬉しいは嬉しいんだけどさ。クリスマスと一緒じゃん? だからさ、子供のときプレゼントまとめて一つしかもらったことねーのよ」


 がっくり猫スタンプ。


「じゃあ、私から二つプレゼント贈りますよ!」


「え? 催促したみたいで悪いじゃん。いいよ」


「まあまあ。ご遠慮なさらずに」


 サムズアップ猫スタンプとともに送る。


「そっすよ姉さん。厚意は素直に受け取ろうって、優輝ちゃんも言ってたじゃないっすか」


「うーん、わかった。ありがとうございます、神奈サン」


 お辞儀猫スタンプ。


「お、なんだか楽しそうな話してますねえ?」


 そう言って入ってきたのは、イベント大好きガール優輝さん。


「そういえば、神奈さんたちにお伝えするの忘れてましたね、二人の誕生日。あたしとしたことが、ぬかりました」


 がっくり猫スタンプ。イベント大好きガールの名がすたるって感じなのかしら。


「でも。Wプレゼントはいいですね! 通常の誕生プレゼントを久美さんに渡して、さらにプレゼント交換会もしましょう!」


 そして、サムズアップ猫スタンプ。


「わりーな、優輝」


「イベント命ですからね! 二十三日と二十五日、楽しくやりましょう!」


 バンザイ猫スタンプ。


「わたしも、腕によりをかけてケーキ焼きますね」


 由香里さんも会話に入ってきた。


「お、由香里が作ってくれんの? 楽しみだな」


 久美さんもバンザイ猫スタンプ。ゆかりさんの手作りかー。楽しみ!


「そうと決まれば、まりあさんと白部さんもお誘いしないと!」


 と、優輝さん。招待メッセージ打ち込んでるのかな?


 再び四人娘の様子を見ると、和気あいあいとルールを守っておしゃべりを楽しんでいる模様。うん、あっちもいい感じだね。


 隔日でパーティーかー。楽しみだね!

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