ノーラちゃんが自転車に乗れないので、今日は久しぶりに徒歩でスーパーへ。
後ろを振り返ると、手をつないで仲良くおしゃべりしており、少し悶着があったけどやっぱり仲良しさんなようでひと安心。
久しぶりの徒歩、ちょっとしんどいけどこれも運動の一環よね。
というわけで無事とうちゃーく!
店内に入ると、おなじみのBGMとノーラちゃんの「あれ何?」アタックが耳に入る。
あれ何? のほうはアメリが自ずと引き受けてくれたので、こちらはチラシチェーック!
ふーむ、缶詰、卵、きゅうり、トマトがお安いです、と。これだけでお昼は大決定だけど、一応尋ねておこう。
「ノーラちゃん、今朝は何食べたの?」
「えーっと、炒飯とかいうやつ!」
ほむほむ。白部さん、よく朝に炒飯作る時間あったなあ。冷食かな?
「じゃあ、お昼はツナサンドと卵のサンドイッチにしよう。ノーラちゃん、サンドイッチわかる?」
「わかんねー!」
「おーけー。じゃあ、出来上がりをお楽しみにね」
ツナ缶、卵、きゅうり、トマトをかごにイン。途中、ノーラちゃんが走り出そうとするので、慌てて止めたり。あとは……。
「ノーラちゃん、何か飲みたいものある?」
「リンゴジュース!」
ふむ。ピザのとき飲んだのが気に入ったのかな? では、五百ミリパックのを入れましょう。
「アメリはコラ・コーラでいいよね?」
「うん!」
というわけで、コーラもかごへ。私はマスペを、我慢の子……。
あ、そうだ。白部さん今日も帰りが遅いだろうから、夕食のぶんも買っておかないと。
ノーラちゃんが使えるのはスプーンまで。結構チョイスが限られるなあ。よし、久しぶりにツナカレーを作りますか!
というわけで、玉ねぎと人参、コーン、ルウ、そしてらっきょうもイン! ふむ、こんなもんかな?
では、お会計~。
◆ ◆ ◆
「なーなー。アタシもそれやってみたいー」
サンドイッチ用の野菜カットをアメリに手伝ってもらっていると、テーブルで肘をついて暇そうなノーラちゃんが話しかけてきた。
「うーん、ノーラちゃんはもっと道具の使い方を色々覚えてからね。アメリもまだ、こうやって横で見守ってないと危ないし」
「ちぇー」と不満げなノーラちゃん。うーん、一人で手持ち無沙汰なのはわかるんだけど。
「アメリ。後は私がやるから、ノーラちゃんの話し相手になってあげてくれる?」
「わかった!」
手を洗い、テーブルに隣り合って腰掛け、おしゃべりを始めるアメリ。
正直私一人のほうがまだ作業が早いので、ささっと昼食完成!
「はーい、出来ましたよー」
飲み物と一緒に配膳する。私は、砂糖抜きのダージリン。
「じゃあ、いただきますしようか。いただきます!」
エプロンを外して二人の対面に着席し、いただきますを言う。
「なー、これどう食べるんだー?」
「これはねー。こうやって、がぶっ! ……って食べるのよ」
実践してみせると、「おもしれー!」とノーラちゃんも勢いよく食べ始める。途中喉につかえてしまい、慌ててジュースで流し込んだり。
「誰も取ったりしないから、ゆっくり食べようねー」
私もアメリも、マイペースで食む。ああ、いいなあ。こういう時間。
一足先に食べ終わってしまったノーラちゃんが、上半身をゆらゆら揺らしながら、アメリに色々話しかける。平和な光景だなあ。
こうしてごはんも食べ終わり、洗面所で歯磨きタイム。順番に、洗面台を使っていく。
◆ ◆ ◆
晩ごはんも食べ終わり、ブロック遊びしている二人を背にお仕事をしていると、七時頃に「今、帰りのバスの中です。一時間ぐらいで帰れると思います。ノーラちゃんの処遇については、そのときに」と白部さんからメッセージが届く。
「了解しました。お疲れ様です」と返事し、お仕事再開。そして、約一時間後、インタホンの呼び鈴が鳴る。
「はーい、どちら様でしょう?」
「白部です。ただいま戻りました」
「今出まーす」
というわけで、三人で門へ。
「こんばんはー」
「こんばんは。ノーラちゃん、いい子にしてた?」
ちょっとお疲れ気味な白部さん。ノーラちゃんが、「う……」と言葉に詰まる。
「うーん、ご迷惑かけちゃったかー。すみませんね、猫崎さん」
「いえいえ。今朝も言いましたけど、これからですから。そういえば、お夕飯まだでしょうか?」
「これからいただこうかと」
コンビニの袋を掲げる彼女。
「それ、すぐに食べなくていいものでしたら、うちでカレーでもいかがですか? 積もる話もありますし」
「おにぎりなので、たしかに明日に回してもいいものですけど……。悪くないでしょうか」
恐縮する白部さん。
「いえいえ。ノーラちゃんが今日、どんなものを食べたかというのをお伝えしたいですし。ご遠慮なさらず」
「うーん、そう仰るのでしたら。では、ありがたくいただきます」
彼女を、家の中に招く。
カレーをとごはんを温め直す間、テーブルについて、ノーラちゃんの良いことも悪いことも、今後の参考のために隠さず話す。
「ノーラちゃん。ダメでしょ、猫崎さんやアメリちゃんに迷惑かけちゃ」
「ごめん、ルリ姉……」
しゅんとするノーラちゃん。
「まあまあ、長い目で見ていきましょう。アメリも、ノーラちゃんと仲良しさんだもんねー?」
「おおー!」
アメリが元気良く返事すると、ノーラちゃんの表情に明るさが戻る。
そんな話をしていると、カレーが温まったので「失礼します」と中座し、よそってお出ししました。
「子供向けに甘口にしたので、お口に合うわかりませんけど……」
「いえいえ、ありがとうございます。……美味しいです」
本当に。美味しそうに食べてくれる白部さん。
「美味しかったです。ノーラちゃん、美味しいカレー食べさせてもらってよかったね」
彼女がノーラちゃんの頭を撫でると、ノーラちゃんが「ふへへ~」と、とろけそうな顔をする。
「ああ、そうだ。ノーラちゃんの処遇なのですが」
「はい」
「託児施設で他の子と一緒にするわけにもいかず、かといって仕事場に置いておくわけにもいかずという話になりまして。明日から、在宅ワークとしてノーラちゃんの報告をすることになりました」
「あら、そうなんですか!」
「はい。毎日レポートを出す必要はありますけれど。これで、皆さんとご一緒に活動しやすくなりました。あと何より、ずっとノーラちゃんといられるのが嬉しくて」
微笑む彼女。
「そういえば、ケージや猫グッズはいかがされるのでしょうか?」
「そうですね。トイレなんかは猫崎さんにお返ししようかと思うのですけど……いかがでしょう?」
「うーん。といっても、当面猫をお迎えする予定ないですし、一度差し上げたものですから、白部さんのお好きなようにしていただければ」
「では、ケージや給餌器あたりはネットで買い取ってもらうとして、アメリちゃんがもともと使っていたものはお返しします。見ての通り、我が家は狭いもので……」
「わかりました」
家屋事情なら仕方ないね。まあ、アメリがそのうち「猫飼いたい」とか言い出すかもだし。
ともかくも、こうして白部さんも私たち在宅ワーク組の仲間入り。これからさらに、お付き合いが密となることでしょう。楽しみだね!
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