神奈さんとアメリちゃん

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第九話 オムライスと「いただきます」と「ごちそうさま」

公開日時: 2021年4月16日(金) 19:01
文字数:2,003

四階をちょっと歩き、目的のオムライス屋さん「パルの木々」にやってきました!


 店員さんに案内されて、着席。


「あ~、疲れたあ~!」


 危うく「よっこいしょ」などと言いそうになったけど、それはまだ三十前の女としては言ってはいけないワードだと思うのだ。しかし、パジャマ二着、靴下三足、靴二足というのは結構重い。


 私の生業なりわいは漫画家なので、体力などなきに等しい。下手すると、アメリより体力ないかも。いや、さすがにそれはないか。


「この中でどれが美味しそうに見える?」


 メニューを広げて見せる。


 オーソドックスなケチャップソースのものから、ドミグラスソース、明太マヨ、クリームソースなどの変わり種もある。


「これ!」


 アメリが指差したのは鶏肉とほうれん草のクリームソースのもの。グラタンの影響かな?


「じゃあ、これをSSサイズで頼もうね。私は何にしよっかなー……シンプルにケチャップでもいいんだけど、せっかくこういう店に来たんだからドミグラスにしようかな」


 店員さんを呼んで、SSサイズのクリームソースのものと、Sサイズのドミグラスのレディースセットを頼む。ちなみに、この店ではSが標準サイズ。レディースセットにはドリンクとサラダが付いてくるので、アイスミルクティーをお願いする。ちなみに、こんな名前だけど男の人も頼んでいいらしい。


 アメリに車中で尋ねられた様々なものについて教えながら時間を潰していると、オムライスが到着! 「おお~!」と、お馴染みの感心の声を上げるアメリ。


 彼女がさっそく食べようとするが、思うところがあって制止する。


「アメリ、これからは食べる前に『いただきます』って言うようにしよう」


「いただきます?」


「うん。食べ物とか、作った人へのありがとうって言葉」


 私も一人暮らしが長くて習慣が失せていたけど、二人で暮らしていくならこういうのはしっかりしたほうがいいよね。


「いただきます。アメリも」


「いただきます!」


 というわけで、改めてスプーンでオムライスをすくう私たち。


「おいしい!」


 アメリもさっそくオムライスが気に入ったようだ。


 彼女もだいぶスプーンに慣れてきて、人並みの早さで食べられるようになっている。今度フォークを使わせてみてもいいかな。


 サラダを食べていると、手を止めてじっとアメリがその様子を見つめる。


「食べたいの?」


 こくこくとうなずく彼女。


SSサイズそれをきちんと全部食べられたら、ひと口分けてあげるね。アメリのお腹だと、それでも結構量多いから」


 慌てて食事を再開するアメリ。急がなくてもいいのに。あ、ドミグラスこっちもひと口食べたいっていうかも。これも、ちょっと残しておこう。


「食べ終わった!」


 おしゃべりする間も惜しんで、アメリが無事完食! でも、ちょっと苦しそう。サラダのお皿を差し出してみるけど、やはり箸ならぬスプーンが進まないようだ。


「やっぱり、もうそれ以上食べられないよね」


「がんばる……!」


「いやいや、食べ過ぎるとゲーしちゃうよ? また今度来たときにしよう」


 しょんぼりする彼女に苦笑を向ける。切ない表情を浮かべるアメリには可哀想だけど、残りのサラダとオムライスを食べてしまう。


「また今度、食べに来ようね。じゃあね、食べ終わったときは『ごちそうさま』って言おう。これも、ありがとうって気持ちのこもった言葉なんだよ。はい、ごちそうさま」


「ごちそーさま……」


 口の周りを拭いてあげて、わかりやすいぐらい落ち込むアメリの頭をキャスケット越しに撫でて慰め、お会計。


「次は、百均行こうか」


「ひゃっきん?」


「色んな物がね、安く売ってるの。気分は宝探し!」


 安いとか高いの感覚はまだわからないだろうけど、宝探しという言葉に目を輝かせる。さっきまで、あんなにしょげてたのに。気分屋さんだねえ。


 エスカレーターで三階へ移動。百貨店と違い、明確に何々の階と区切られているわけでもないので、ある程度のまとまりはありつつも、階ごとにテナントはバラバラだったりする。


 というわけで、百均ショップ「CANDY」に入店。豊富かつ雑多なアイテム群に、アメリが「おお~!」と感心の声を上げる。もはや、おなじみのリアクション。


 店内を回り、スパゲッティーとミートソース、布、子供用歯ブラシ、子供向けのプラスチックカップ、プラ製のフォークとナイフ、それとプラ箸をかごに入れる。布は、今晩早速パジャマの改造に使うため。


 あとは……思うところがあってカナルタイプの長いイヤホンもIN。


「ごしゅ、おねーちゃん! これ!」


 アメリがぬいぐるみの棚からイカのぬいぐるみを取り出す。なんと珍妙な代物……。可愛いけど。


「欲しいの?」


 こくこくとうなずく彼女。ほんと魚介類好きね。五百円するけど、これだけ色々買っといて今更よね。OKしてかごに入れる。


 さて、こんなもんかな。お会計~。おお、さすが百均! 色々買ってもお安いわあ。


 しかし、実はまだまだ買うものがある。


「じゃあ、最後は地下のおもちゃ屋さんに行こうか!」

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