神奈さんとアメリちゃん

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第四百九十五話 断捨離と、向井さんご一家

公開日時: 2022年2月13日(日) 21:01
文字数:2,846

「さーて、始めますかー」


 九時。頭もしゃっきりしたところで、庭に面した廊下に積まれているダンボールを見ながら、気合を入れる。


 外では、お父さんがDIYに励んでいます。あれは、サイドボードかな?


 それはそうと、これ全部、私が送った本。大型連休におサボりしたから、一年ぶん以上ありますねえ。


「おねーちゃん。アメリ、何お手伝いすればいい?」


「んー? そうねえ。こっちは大丈夫だから、お母さんのお手伝いしてあげてくれる?」


「らじゃー!」


 とことこと、リビングに向かうアメリちゃん。私の本の仕分けじゃあ、やれることないもんね。


 いざ、開封の儀~。やあやあ、久しぶりですねえ、君たち。


 一冊一冊取り出し、要・不要を判断していく。


 まず不要なのは、古いファッション誌だ。


 資料として買うわけだけど、たとえば去年のものなんかは、もう使い道がない。


 昔を懐かしんで読み返す……なんてことも、とくにないしねえ。


 あとは、家具とか建築の本も断捨離。このへんも、流行変わるしね。


 不要な本は、廃棄用のダンボールに移し替えていく。


 ここに入れたものは、馴染みの古本屋さんや、新古書店に売ったり、フリマでお母さんに捌いてもらったり、それでも売れなきゃ図書館に寄贈したり、さらにそれでダメなら古紙として回収に出すわけです。


 お次。これが一番悩むんだ。漫画たち~。


 何度も読み直したくなる漫画かどうかを吟味しながら、仕分けしていく。これがとにかく、溜まりがちなんだわ。


 一度読めば十分じゅうぷんだったなと思ったら、容赦なく廃棄箱に入れてしまうのが、整理のコツ。未練が湧くと、キリがないからね。


 思い切って、電子書籍に移行したほうがいいのかしら。でも、紙とインクの匂い、好きなのよねえ。あとは、現物があるとやっぱり落ち着く。まあ、こうして処分するわけですけど……。


 これ、読むかなあ……。うん、読まないな。こういう感想を抱く時点で、多分読まない。もし、もう一度読みたくなったら、買い直すなり、漫喫なりで。


 こんな感じで、次々選別していく。


 うーん、疲れたあ……。休憩しーましょ。


「あら、神奈。もう終わったの?」


「おおー! おねーちゃん。アメリ、お手伝い頑張ってるよ!」


「休憩~。アメリちゃん、偉いですねえ。マスペある~?」


 愛娘の頭を撫でつつ、冷蔵庫を開けると、愛しのマスペくんが、ドア側に鎮座しておりました。


「おお~! ジス・イズ・マイトレジャー!」


「お宝とか、大げさねえ」


 苦笑するお母さん。


「だって、大好きなんだもーん。買っといてくれて、ありがとうねー」


 テーブルに座り、テレビを見ながらごくごく。効くぅ~!


「アメリちゃんも、休憩しなさいな。コラ・コーラも買ってあるから」


「おおー。おかーさん、ありがとー」


 アメリもコーラを手に、私の隣に座ります。


「なんか、見たい番組ある?」


 ぽちぽちと、チャンネルを切り替えていく。


「んー……とくにない」


「じゃあ、私の好みで」


 チャンネルを、元に戻す。


「そういえばさ、二人は何してたの?」


 素朴な疑問を尋ねてみる。お昼ごはんには、まだだいぶ早い。


「干ししいたけと、大豆戻してたのよ」


 ほほー。そりゃ、時間かかりますなあ。


「で、アメリちゃんに大豆の選別を教えてね」


 こっちでも、選別の真っ最中でしたか。


「そうだ、神奈」


「はい、何でしょう?」


「明日、お墓参り行くからね」


 あー。お仏壇にはご報告済みだけど、お墓参りもきちんとしないとね。お盆だし。


「りょーかい! さて、私はトイレ行ったら続きするかな。アメリも、お手伝い頑張ってねー」


「はーい」


 テレビを消して、ペットボトルを洗ってゴミ箱に入れ、分別作業に戻るのでした。



 ◆ ◆ ◆



 ふー! 終わったあ! だいぶ減ったなー。残したのは、保管~。


 時を同じくして、お父さんが外から戻ってくる。


「お疲れ様ー。私も、分別作業終わったよー」


 私は、明後日には帰らなければいけない身。なので、後の処分はお父さんたちにお任せです。


「おお、神奈もお疲れ様。そうだ、明日……」


「お墓参りでしょ? さっき、お母さんから聞いた」


「そりゃ話が早い」


 腰を、とんとん叩くお父さん。腰痛持ちとしては、つい辛さを想起してしまいますねえ。


「あ、そうだ。りんちゃん幼馴染、帰省しているかな?」


隣子りんこちゃんなら、八日に会ったよ」


「おー! あとで会いに行こー」


 そろそろお昼なので、さすがに今、突撃する気はない。


供子きょうこちゃん、おっきくなったかなあ。会うの楽しみー」


 母の味を堪能し終わった後は、お向かいさんの向井家へ。インタホンぽちー。


「はーい、どちら様ですかー?」


 おじさまの声だ。


「こんにちはー、神奈です。りんちゃんいますかー?」


「あー、神奈ちゃん! こんにちは、久しぶりだねえ! 隣子、いるよー。今、そっち行かせるから!」


 おお。在宅で良かった。


 ややあって、三ヶ月ぶりに会う親友が、ガラッと引き戸を開けて出てきました。


「かんちゃーん、アメリちゃーん、久しぶりー!」


「オー! マイ・ベストフレンド!」


 ハグ~。


「供子ちゃん、いる?」


「うん。お母さんに遊んでもらってるよ。良かったら、上がる?」


「そうだね。お邪魔しようかな」


 というわけで、向井家にお邪魔~。


「やあ、神奈ちゃん、アメリちゃん、いらっしゃい。いやあ、五月はびっくりしたよ、ほんと」


 お茶の間でくつろいでいたおじさまが、猫耳モードのアメリを見て、改めて所感を述べる。


「あはは、すみません。あ、こちらお土産です」


 「TOKIOばななん」を差し出す。


「ありがとう。しかし、神奈ちゃんのいたずらっぽさは、相変わらずだったねー」


「面目ないです」


 恐縮。つい、こう、ノリでねえ?


「あらー。神奈ちゃん、アメリちゃん、いらっしゃーい」


「お邪魔してます」


 ふすまを開けて入ってきた、おばさまと供子ちゃんに、アメリと一緒にぺこりと頭を下げる。


「供子ちゃん、大きくなった?」


「そりゃそうよ。子供の成長って早いよねー」


 うんうんと、うなずくりんちゃん。


 よちよち歩きの供子ちゃんが近づいてきたので、頭を撫でる。可愛いなあ。


 アメリも、「アメリおねーちゃんだよー。覚えてるー?」と、供子ちゃんの頭を撫で撫で。供子ちゃんは、きゃっきゃと喜んでいます。


「旦那さんとはどう? 最近、愚痴電話かかってこないけど」


「もう~。その呼び方やめてー。仲良くやってるよ」


 二人で笑い合う。仲睦まじいようで、良きかな良きかな


「はじめ兄ちゃんと、継男つぐおくんは留守?」


「うん。映画見に行ってるよ」


 ありゃま。帰ってくるまで、だいぶかかりそうだなあ。


 ともかくも、向井さんご一家と楽しく談笑。


「あー、そろそろ帰ったほうがいいかな。すみませんね、長居して」


 壁掛け時計を見て、だいぶ話し込んでいたことに気づく。


「いいのいいの。また、遊びに来てちょうだいね」


 気さくに応える、りんちゃん。


「明日は、父方、母方、両方のお墓参りに行っちゃうんだ。で、翌日には帰り支度」


「そっか。じゃあ、また電話で話そ」


「うん。それじゃあ、お邪魔しました」


「お邪魔しましたー」


 アメリと一緒に頭を下げ、玄関へ。ご一家に見送られ、自宅に帰るのでした。

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