今から数日前のこと、「そういえば、神奈さんのお誕生日っていつなんですか?」という由香里さんの素朴な問いかけから、ことは始まりました。
「十一月二十三日ですねー」
勤労感謝の日に、私はおぎゃあと生まれたわけです。
「えっ! もうすぐじゃないですか! 誕生パーティーしましょうよ!」
それを見て、イベント大好きガールの血が騒いだ優輝さんが、バンザイ猫スタンプとともにメッセージを送ってくる。
「いいですね! みんなで神奈さんをお祝いしましょう!」
まりあさんもサムズアップ猫スタンプでノリノリ。素面でテンション高いまりあさんとか珍しい。
というわけで、あれよあれよと話は進んでいき、当日誕生パーティーをかくてるハウスで行うことになったのでした。
◆ ◆ ◆
「本日は、皆様お集まりいただき、ありがとうございます! では、神奈さんからご挨拶を一言!」
かくてるハウスのダイニングキッチン。パーティースタイルで出席している皆さんの前、優輝さんが手を広げて私に挨拶を促す。今日は祝日ということで、いつものメンバーに加え白部さんもご出席しています。
ちなみに、テーブルも十二人掛けのものに買い換えられていました。
「本日は私のためにお集まりいただき、誠にありがとうございます。こんなに多くの方に誕生日を祝っていただけるなんて、本当に嬉しいです。ありがとうございます!」
深くお辞儀。我ながらちょっと固いかな、とも思うご挨拶も無事終了。皆さんから、ぱちぱちと拍手が飛んでくる。
「じゃあ、ろうそくに火を点けますねー」
そう言って、ケーキのろうそくにライターで火を灯していく由香里さん。
計二十八本かー。色々あった人生だけど、今のアメリと暮らすようになり皆さんとも知り合えた今年が、一番充実していた気がする。
万感の思いを込めて吹き消すと、再度拍手が起こる。
「ハッピーバースデー、神奈さん!」
皆さんから口々に祝福の言葉が述べられ、少々照れくさい。
「では、切り分けますね」
由香里さんがケーキにナイフを入れていく。こちら由香里さんの手作りで、大型ピザ焼きオーブンの賜物か非常に大きい。何しろ、十人ぶんだもんね。
「いただきます!」
めいめいいただきますを言い、口にする。あら、美味しい! さすが由香里さん、女子力五十三万!
「美味しいです、由香里さん」
「ありがとうございます。腕によりをかけて作ったかいがあります」
嬉しそうに微笑む彼女。
「おお~! ケーキ美味しいね!」
アメリもキラキラと瞳を輝かせている。良き哉良き哉。
おしゃべりを楽しみながら、和やかにパーティーは進行。みんなケーキを完食!
「じゃあ、そろそろあたしの手料理も楽しんでいただきましょうか。温め直しますね」
そう言って、冷蔵庫から取り出しエビと思しき料理を、電子レンジに何度かに分けて入れていく優輝さん。
お出しされたのは、大ぶりなエビを開き、ホワイトソースやチーズなどをかけて焼いたもの。えっとたしか、テルミドールとかいう料理だったかな。それが三尾ずつ、子供には二尾ずつ配られる。
「いやー、ピザにしようかとも思ったんですけど、由香里がケーキ焼きに大型オーブン使っちゃうのと、久美さんから猛反対されまして」
まりあさんと由香里さんを除く大人たちに白ワインを注ぎながら、苦笑する優輝さん。まりあさんと由香里さん、そして子供たちには好みのソフトドリンクを配っていく。
「では、いただきましょう! いただきます!」
皆もいただきますを言い、テルミドールをいただく。あら、これまた美味しい!
「こちらも美味しいです、優輝さん!」
「ありがとうございます。喜んでいただけて良かったです」
笑顔で返す優輝さん。
こうしてパーティーは楽しく進行していき、リビングでプレゼントお渡しタイムに。
皆さんからプレゼントをいただいたら、紙袋二つぶんぐらいの量になってしまいました。
「ありがとうございます。家に帰ったら、開けさせていただきますね」
深くお辞儀し、パーティーはお開きとなりました。
◆ ◆ ◆
「楽しかったねー、おねーちゃん」
「だね。来年の九月三日になったら、アメリのお誕生会もしようね」
九月三日は猫アメリの命日であると同時に、今のアメリの誕生日。
では、プレゼントを開封していきましょうか。
ひとつめは、ディープレッドの落ち着いた色合いのスカーフ。メッセージカードは、まりあさんのものだ。まりあさんらしい、柔らかいセンスの贈り物ね。
次の小箱には折り鶴。クロちゃんから、「こんなのしかおくれなくてすみません」と恐縮のメッセージ。大丈夫よ、クロちゃん。贈り物は心が大事だから。
こちらは……アメショの置物。優輝さんからだ。ありがとうございます。
由香里さんからは、金色の花型ブローチ。由香里さんらしい、おしゃれな感じ。
さつきさんは、猫耳美少女のフィギュア。これまた、さつきさんらしいな。
久美さんの贈り物は、ダイエット用のお茶セット。「ダイエット頑張ってな!」とのお言葉。
ミケちゃんからは……CD? 「ミケのうたを、クミにろく音してもらったわ!」とのこと。ミケちゃんらしいというか、なんというか。
白部さんのプレゼントは一般人向けの医学書。「いつまでもお元気でいてください」とのこと。お薬のことなんかも書いてあって、便利そうね。
「おお~。おねーちゃん色々もらったねー」
「うん。どれもこれも、心がこもっていて素敵」
ふふ、と微笑む。
「アメリもプレゼントする!」
するとアメリ、スケッチブックにクレヨンでお絵かき開始。興味深く眺めていると、「できた!」と宣言。
プレゼントに囲まれた、私の絵を手渡してくれました。
「ありがとう、アメリ」
ぎゅーっと抱きしめ、頭を撫でると、「うにゅう」と気抜け声を上げる。ああ、今日はとっても素晴らしい日だ!
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