神奈さんとアメリちゃん

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第百十五話 ハッピーバースデー、神奈さん!

公開日時: 2021年4月24日(土) 07:01
更新日時: 2023年8月14日(月) 17:42
文字数:2,327

今から数日前のこと、「そういえば、神奈さんのお誕生日っていつなんですか?」という由香里さんの素朴な問いかけから、ことは始まりました。


「十一月二十三日ですねー」


 勤労感謝の日に、私はおぎゃあと生まれたわけです。


「えっ! もうすぐじゃないですか! 誕生パーティーしましょうよ!」


 それを見て、イベント大好きガールの血が騒いだ優輝さんが、バンザイ猫スタンプとともにメッセージを送ってくる。


「いいですね! みんなで神奈さんをお祝いしましょう!」


 まりあさんもサムズアップ猫スタンプでノリノリ。素面しらふでテンション高いまりあさんとか珍しい。


 というわけで、あれよあれよと話は進んでいき、当日誕生パーティーをかくてるハウスで行うことになったのでした。



 ◆ ◆ ◆



「本日は、皆様お集まりいただき、ありがとうございます! では、神奈さんからご挨拶を一言!」


 かくてるハウスのダイニングキッチン。パーティースタイルで出席している皆さんの前、優輝さんが手を広げて私に挨拶を促す。今日は祝日ということで、いつものメンバーに加え白部さんもご出席しています。


 ちなみに、テーブルも十二人掛けのものに買い換えられていました。


「本日は私のためにお集まりいただき、誠にありがとうございます。こんなに多くの方に誕生日を祝っていただけるなんて、本当に嬉しいです。ありがとうございます!」


 深くお辞儀。我ながらちょっと固いかな、とも思うご挨拶も無事終了。皆さんから、ぱちぱちと拍手が飛んでくる。


「じゃあ、ろうそくに火を点けますねー」


 そう言って、ケーキのろうそくにライターで火を灯していく由香里さん。


 計二十八本かー。色々あった人生だけど、今のアメリと暮らすようになり皆さんとも知り合えた今年が、一番充実していた気がする。


 万感の思いを込めて吹き消すと、再度拍手が起こる。


「ハッピーバースデー、神奈さん!」


 皆さんから口々に祝福の言葉が述べられ、少々照れくさい。


「では、切り分けますね」


 由香里さんがケーキにナイフを入れていく。こちら由香里さんの手作りで、大型ピザ焼きオーブンの賜物か非常に大きい。何しろ、十人ぶんだもんね。


「いただきます!」


 めいめいいただきますを言い、口にする。あら、美味しい! さすが由香里さん、女子力五十三万!


「美味しいです、由香里さん」


「ありがとうございます。腕によりをかけて作ったかいがあります」


 嬉しそうに微笑む彼女。


「おお~! ケーキ美味しいね!」


 アメリもキラキラと瞳を輝かせている。良きかな良きかな


 おしゃべりを楽しみながら、和やかにパーティーは進行。みんなケーキを完食!


「じゃあ、そろそろあたしの手料理も楽しんでいただきましょうか。温め直しますね」


 そう言って、冷蔵庫から取り出しエビと思しき料理を、電子レンジに何度かに分けて入れていく優輝さん。


 お出しされたのは、大ぶりなエビを開き、ホワイトソースやチーズなどをかけて焼いたもの。えっとたしか、テルミドールとかいう料理だったかな。それが三尾ずつ、子供には二尾ずつ配られる。


「いやー、ピザにしようかとも思ったんですけど、由香里がケーキ焼きに大型オーブン使っちゃうのと、久美さんから猛反対されまして」


 まりあさんと由香里さんを除く大人たちに白ワインを注ぎながら、苦笑する優輝さん。まりあさんと由香里さん、そして子供たちには好みのソフトドリンクを配っていく。


「では、いただきましょう! いただきます!」


 皆もいただきますを言い、テルミドールをいただく。あら、これまた美味しい!


「こちらも美味しいです、優輝さん!」


「ありがとうございます。喜んでいただけて良かったです」


 笑顔で返す優輝さん。


 こうしてパーティーは楽しく進行していき、リビングでプレゼントお渡しタイムに。


 皆さんからプレゼントをいただいたら、紙袋二つぶんぐらいの量になってしまいました。


「ありがとうございます。家に帰ったら、開けさせていただきますね」


 深くお辞儀し、パーティーはお開きとなりました。



 ◆ ◆ ◆



「楽しかったねー、おねーちゃん」


「だね。来年の九月三日になったら、アメリのお誕生会もしようね」


 九月三日は猫アメリの命日であると同時に、今のアメリの誕生日。


 では、プレゼントを開封していきましょうか。


 ひとつめは、ディープレッドの落ち着いた色合いのスカーフ。メッセージカードは、まりあさんのものだ。まりあさんらしい、柔らかいセンスの贈り物ね。


 次の小箱には折り鶴。クロちゃんから、「こんなのしかおくれなくてすみません」と恐縮のメッセージ。大丈夫よ、クロちゃん。贈り物は心が大事だから。


 こちらは……アメショの置物。優輝さんからだ。ありがとうございます。


 由香里さんからは、金色の花型ブローチ。由香里さんらしい、おしゃれな感じ。


 さつきさんは、猫耳美少女のフィギュア。これまた、さつきさんらしいな。


 久美さんの贈り物は、ダイエット用のお茶セット。「ダイエット頑張ってな!」とのお言葉。


 ミケちゃんからは……CD? 「ミケのうたを、クミにろく音してもらったわ!」とのこと。ミケちゃんらしいというか、なんというか。


 白部さんのプレゼントは一般人向けの医学書。「いつまでもお元気でいてください」とのこと。お薬のことなんかも書いてあって、便利そうね。


「おお~。おねーちゃん色々もらったねー」


「うん。どれもこれも、心がこもっていて素敵」


 ふふ、と微笑む。


「アメリもプレゼントする!」


 するとアメリ、スケッチブックにクレヨンでお絵かき開始。興味深く眺めていると、「できた!」と宣言。


 プレゼントに囲まれた、私の絵を手渡してくれました。


「ありがとう、アメリ」


 ぎゅーっと抱きしめ、頭を撫でると、「うにゅう」と気抜け声を上げる。ああ、今日はとっても素晴らしい日だ!

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